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 北関東の山に籠って狩猟生活を送る俳優の東出昌大。その姿に長期密着した狩猟ドキュメンタリー映画『WILL』が好評公開中だ。そのメイン被写体である東出と、出演者であり友人関係にあるMOROHAのアフロが緊急対談。週刊誌記者さえ仲間にしてしまう東出の現在の心境、疑心暗鬼や人間不信のフェーズから抜け出した方法を語ると共に、親友だからこそ知る“ブサイク”な東出昌大の姿をアフロがさらす。

【映像】謎の草で巻きタバコ、パンツ一丁で海に飛び込み…東出昌大の衝撃行動

スキャンダルの渦中、アフロが目撃した東出昌大のブサイクな姿「大衆居酒屋で…」

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ーー東出さんは本作について公に「観たくないし観られたくない」とネガティブな発言をされていますね。

東出:いやあ…良いカッコしいなんでしょうね。もうちょっとクールでスマートなカッコいい自分をブランディングしたいのかな(笑)。だって『WILL』の中の僕は全然そうじゃないから(笑)。僕って酒に酔うと人前でこんな感じでクダを巻くんだ、面倒くせえ奴だなと思ったり。神妙に悩んだ顔しているけれどお前それ当分答え出ないかならな!とか、画面の中の自分に対して思ったりして。恥ずかしいです。しかもここは使用しないで欲しいというところもしっかりと使われていますからね(笑)。

アフロ:そういうもんだよ! 

東出:家族の話、子供の話とか、そういうのはカットだよと伝えてはいたけれど…(笑)。けれども僕が出演を決めた時の思いとしては、美しいPVを撮ってほしいというわけでもなかったし、オファーを受けた時も撮影中も自分の中で色々とあって本当に混迷を極めていた時期でもあったわけで、そんな時エリザベス(宮地)さんが傍にいてくれて撮影してくれることによって、客観的に自分というものが何なのかわかったらいいなと思って。でもそんなことありえんのかなって。でもいつまで生きているかわからんし。…そんなやけっぱちな気持ちも大きかったんです。

ーーカメラに記録されている状況下で漏らした本音というのは、東出さんが世間に向けて訴えたい本音でもあったのではないでしょうか?

東出:カメラの前で取り繕ったことばかり言っても仕方がないし、わざわざ密着してくれたエリザベスさんにも失礼です。身から出た錆とは言え、当時は様々な種類のストレスがあったので、エリザベスさんが寄り添って話を聞いてくれることが、自分にとっての精神安定剤になっていたのかもしれません。

アフロ:本来のでっくんはブサイクなところが沢山あるのに、容姿端麗でそれまで好青年的イメージが世間にはあって、人に接する時もそのイメージの鎧を脱げなかったと思います。それは表に出る表現者としての仕事でもあるから仕方のないことではあるとは思いつつも、その姿勢でずっとやっていくのはキツイです。俺自身もステージの自分と素の自分のイメージに悩んだことがあって、これを続けてビジネスで成功したとしても人としては不幸だなと。やっぱり自分のありのままを好きになってくれる人を増やしていかないとね。だから俺は『WILL』を通して、これまで知られなかったでっくんのブサイクさという魅力が世間に浸透していくのを期待してます。まあ、この作品だけじゃ映し足りないけど!

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ーーアフロさんだからこそ知る、ブサイク・東出昌大の姿を教えてください!

アフロ:これは相方(UK)から聞いた話だけれど、飲み屋街をでっくんと一緒に歩いていたら、酔っ払いからでっくんが「お前、松潤にそっくりだな!」って声を掛けられたんだって。普通だったら軽くいなすか無視するかだろうけれど、でっくんは「マジで!?ありがとう!」と言いながら、そのおっさんが持っていたチューハイを奪って全部飲んだらしいです。これはブサイクというか、男としてカッコいいエピソードかも知れないけれど、そういう東出昌大像って世間にはないでしょ?俺はその話を聞いて、でっくんの魅力的な一面だと思ったし、彼ならではの人間性が出たエピソードだなと。

東出:あ~!覚えている(笑)。

アフロ:まだまだあるよ。それこそスキャンダルの渦中にでっくんから飲みに誘われて、嬉しい反面、心配しつつ「どこの個室を押さえたのかな」と思ったら、どこにでもある大衆居酒屋のサラリーマンでごった返す店内にでっくんがいた。お酒を飲みながら「大変だけれど、やっていくしかないよね」みたいな深い話をしつつ、お会計となった時に「俺が誘ったから今日は出しますよ」とでっくんが言ってくれて、店員を呼んでお金を払ったの。代金を受け取った店員が去って行こうとしたら、その背中に向かってでっくんが店内に響き渡るくらいの超デカい声で「すみません!領収書!東出昌大で!」って叫んだの。「マジかこいつ!」と…。でもその姿を見た時に、「あ、きっと大丈夫だ」と思った。このたくましさみたいなものが、今後の彼の道をしっかりと作っていくんだろうなって。

週刊誌カメラマンと対話を続ける東出昌大「撮られた人が悲しい思いをしていると知った時に、彼も寂しい顔を見せたりする」

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ーー『WILL』では、山に突撃して来た週刊誌記者と仲良くなる様子も映されます。それもある種の東出さんの驚異的たくましさを表すエピソードでもあるわけです。しかも今では主要週刊誌の記者全員と知り合いなんですよね?その包容力はどこから生まれるのでしょうか?

東出:まあ、そんな深い理由なんてないですけどね。だって普通に人同士だから。その一言に尽きます。今仲良くしている週刊誌記者やカメラマンの人たちに関しては裏切られるとは思わないし、裏切られたとしたらそれは自分の慧眼がなかっただけの話で。誰だって「話を聞かせください!嘘を書きますよ!」と直撃されたら「おいおいおい、ちょっと待て。逆に話を聞かせろ?」となるはずです(笑)。相手の話を聞いていくうちに「記者さんも大変なんだな…」と思う。これを言うと「懐が大きい」と美談にされがちだけれど、僕は自分の懐が大きいなんて思わない。

ーー相手が敵対的立場であっても対話を重ねるわけですね。

東出:いまだに知り合った週刊誌のカメラマンには面と向かって「そんな仕事辞めなよ」と言います。でも彼が「子供が生まれた」と教えてくれたりすると、「うーん、そうか…」と悩む。でも誰かを隠し撮りして雑誌に掲載されたときに、そのカメラマンに意思がなくても上層部が事実を歪曲させた場合は、あなただって加害者の一人になるよと思う。そのスタンスはいくら仲良くなろうが変わりません。

アフロ:今の話を聞いて、改めてでっくんはリアルな視点で生きているなと思った。こうあるべきだという理想論がある一方で、そのカメラマンに子供が生まれて生活していかなきゃいけないという現実も理解している。その間に立ってどちらの顔色も伺いながら「う~ん」と唸っている様を書くのが俺はラッパーのあるべき一つの姿だと思っていて、そのでっくんの葛藤に俺はシンパシーを感じる。でっくんは「今でも辞めろと言う」としながらも、そのカメラマンを人間として嫌いになることはない。自分と感性や哲学が合わない人とは関わらずとも生きていける現代において、その感覚を持つことは貴重に思う。でっくんの他人を許容する考え方は地に足がついていると思う。

東出:楽しいのかもね。その人の奥深くに踏み込んでいくのが。話を聞いていく中で「稼いで子供にいい服を着させてあげたいから」と言った彼が、あるスクープを撮ったことによって、撮られた人が悲しい思いをしていると知った時に、寂しい顔を見せたりするわけです。そんな表情を見ると、「ミキハウスじゃなくてもいいじゃん!西松屋だって可愛くておしゃれだよ!」って。「なんだって子供は着れるんだからさ!」って。それを伝えると「そうかも」ってなるじゃん人は。

アフロ:最高!今の言葉は歌詞だよ。俺が言ってそうだもん。リリック書きなよ。メッチャいいよ!

東出:そんなこんなですわ(笑)。

アフロ:でっくんは人間を観察しているよね。そこからの学びを自分の哲学にしている。

芝居ではなくCMで稼ぐ俳優たち…しっぺ返しで莫大な違約金を負った東出昌大の新たな生き方

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ーースキャンダル当時は全方向からバッシングがあったわけで、人間不信や疑心暗鬼に陥らざるを得ない心理状況にあったと思います。東出さんはどのようにしてそのフェーズから抜け出したのですか?

東出:それは山の中で自問自答しました。正直に話しすぎてはいけないのか!?と。芸能人がスキャンダルを起こす際に常套句のように「事務所に確認してください」と使うのは、携わる人の数が多いからです。でも事務所を退所して山に放たれたことによって、全部が自分の責任として跳ね返ってくると悟った時に…待てよと。人に噂されようがされまいが、飯は今日食えるし、普通に生きている。でもその噂がクソくだらないウソならば、記者を捕まえて面と向かって「クソくだらないことを書くな!話を聞け!」と言えば良くね?みたいな(笑)。

アフロ:それは事務所にいたら到達できない境地だよ。だから東出昌大という存在は、今の芸能界にとっては脅威。俺も映画で主演させてもらって感じたけれど、役者さんが映画でもらえるギャランティは正直、多くないと思った。ほとんどがCMで賄っている状況で、そのしっぺ返しででっくんは莫大な違約金を負うことになったわけだし。その現実を考えると、なんて脆弱な世界なのだろうかと思う。ライブの場合は自分がやりたいライブをやり、それを観たいと思うお客さんからお金をもらって、それが自分たちの稼ぎになっている健全な循環がある。でも役者さんは演技をしたいのに、演技でお金をもらうのではなくてCMでお金をもらっている。このシステムが改善されない限り、どこかでひずみは生まれる。そんなひずみからでっくんは今脱却して、堂々と映画に出て演技をしてドキュメンタリーまで作られて、作品に関わる人に真っすぐに自分の思いを発信している。このやり方が今後もっと広がっていったら、東出昌大という存在が役者の新しい生き方のモデルケースになり得るかもしれない。

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ーー事務所から独立して飛躍している方も増えていますしね。

アフロ:そうそう。俺はでっくんが独立して山に行くと決めた時は良かったなと思いました。東京にいたって明らかに大変そうだったし。これまでのイメージで沢山のいい思いをしてきた職業なわけだから、それを裏切った時の反動たるや…。夜の代々木公園で「そりゃしっぺ返しがあるよね」と二人で語り合いましたから。それも懐かしい話で、今は飛躍を期待しています!

東出:夜の代々木公園で話したね~!うん、まあ、そりゃそうだよなって。アフロと会えば常に力をもらえる、そんな存在です(笑)。

アフロ:山にも遊びに行ったしね。

東出:アフロは田舎を呪うみたいな歌を書いているのに、「ふあ~!」とか言って幸せそうに深呼吸しているから、「おい!おい!大丈夫か!?」と思ったけど(笑)。

アフロ:がはは!それは言うな!

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取材・文:石井隼人
写真:You Ishii

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