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【映像】『薬が切れたのか』『咳ばかりしている』…トランプ氏の“噛みつき”の数々
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 アメリカのバイデン大統領は日本時間の8日、今後1年の施政方針を示す「一般教書演説」の中で「私の前任者」という表現を13回も使ってトランプ氏を批判。対して、トランプ氏はバイデン大統領の演説中に“実況”で噛みつく異例の展開となった。

【映像】『薬が切れたのか』『咳ばかりしている』…トランプ氏の“噛みつき”の数々

 秋の大統領選に向け、2人のバトルが早くも熱を帯びている。8日の攻防の詳細について、演説直後にANNワシントン支局の梶川幸司支局長に聞いた。

━━そもそも、「一般教書演説」とは?

「一般教書演説は、現職の大統領が議会にやって来て、今年の政治と外交の基本方針を示す格式のある演説であり、『世界で最も重要な演説』と言っても過言ではないものだ。『教書』とは大統領が議会に対して行う報告のこと。アメリカでは大統領に法案を出す権限がないため『教書』という形で、政策や予算の実現を議会に求めるという仕組みを採用している」

【写真・画像】81歳と77歳の“高齢者対決”が盛り上がりすぎて「通信障害」...バイデン大統領の一般教書演説 VS トランプ氏の“実況噛みつき”の軍配は?  2枚目
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━━トランプ氏の“実況”はどのようなものだったのか?

「トランプ氏は『バイデン氏の到着が遅い』『過去最悪の一般教書演説で国の恥さらし』『薬が切れたのか』『咳ばかりしている』など、60回ほど投稿した。自身のSNSで実況すると予告した結果、アクセスが集中して通信障害が生じ、開始から30分で3000回も一時中断したという」

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━━「一般教書演説」のポイントは?

「大統領選で再び対決するトランプ氏を強く意識したもので『民主主義』『経済運営』『ウクライナ支援』の3つだ。まずは『民主主義』について振り返る。バイデン大統領は演説にて『私たちの自由と民主主義が国の内外で攻撃を受けている。2020年大統領選に関する嘘と選挙を盗む陰謀は南北戦争以来、私たち民主主義に重大な脅威をもたらした。党派にこだわらず、民主主義を守るために力を合わせて欲しい』と話した」

━━トランプ氏の反応は?

「『バイデン氏こそ民主主義の脅威だ。(FBIなど)司法機関、政府機関を武器のように使って自分を攻撃している』と非難した」

「バイデン大統領は2020年の大統領選での敗北を認めず、4つの刑事事件で起訴されているトランプ氏を民主主義の『敵』、『脅威』と印象付けることで、トランプ氏が勝利すれば国の分断がさらに深まると国民に危機感を促す狙いがある。演説では人工妊娠中絶の権利を守ると宣言するなど、女性やZ世代、無党派層を意識した発言もなされた」

━━トランプ氏の裁判はアメリカでどのように受け止められているか?

「トランプ氏はこれまで起訴されるたびに『政治的な弾圧』『魔女狩り』だとアピールして、共和党支持層の支持を高めてきた。だが、裁判で有罪となると痛い。トランプ氏が『有罪』になったら激戦州の有権者の53%が投票しないと回答しているのだ」

━━共和党内の候補者選びにおいて優勢が続くトランプ氏の課題は?

「『無党派層』の獲得だ。先週行われた『スーパーチューズデー』で14勝1敗と圧勝したが、バーモント州では敗北。共和党員だけでなく無党派も手続きをすれば投票できるバーモント州で敗れたことは、トランプ氏が無党派層に弱いことを浮き彫りにした」

━━2番目のポイントである「経済運営」において、バンデン大統領はどのような演説をしたのか?

「バイデン大統領は『私は危機に瀕した経済を引き継いだが、今では世界の羨望の的となっている。わずか3年で1500万人の新規雇用を生み、失業率は50年ぶりの低水準となった。アメリカの復活は、アメリカの可能性の未来を築くことだ。ウォール街がアメリカを築いたのではない。中産階級、労働組合がこの国を築いたのだ』と訴えた」

「バイデン氏は所得の低い人や中産層を底上げすることによって経済を立て直して、自分の政治的な支持基盤にしたいという狙いがある。バイデン大統領は過去3年間の政権運営の結果、インフレ・失業率は低下し、雇用は増えたと強調。『ニュースにはならないかもしれないが、全米各地でかつてない復活を遂げている』と強調したのだが、このアピールこそが『焦りの表れ』とも言えるだろう。アメリカ経済は堅調、インフレも緩やかになりつつあるが、庶民の生活実感は厳しいままで、バイデン政権への評価につながっていないという危機感がある。大統領選への支持拡大に向けて、バイデン氏は大企業への法人税の強化や富裕層の増税を図る一方で、巨額の補助金を出して、製造業の復活を実現しようとしている」

━━トランプ氏はどのような“実況”をしたのか?

「『バイデン政権下で起きたインフレがアメリカを殺している』『バイデン政権では50州でガソリン価格が新記録を更新した』『食料や家賃がいかに上がったか』を投稿した。バイデン政権でいかに生活が苦しくなったか、トランプ政権がいかに良かったかを強調したい狙いがある。トランプ氏は政権に返り咲いたら減税するとしている」

━━最後に「ウクライナ支援」に関して、バイデン大統領は何を語ったのか?

「バイデン大統領は『ウクライナが自衛に必要とする武器を送れば、プーチンを止めることができる。対して、前任の共和党の大統領(トランプ氏)は、(NATOの加盟国が国防費を負担しなければ)ロシアに好きなようにけしかけると発言している』と支援の必要性を説き、トランプ氏を批判した」

━━ロシアが侵攻して2年が経過。ウクライナの現状は?

「去年のウクライナによる反転攻勢は失敗に終わり、国力に勝るロシアに押されて戦況は悪化している。何よりも武器・弾薬が足りない。バイデン大統領は緊急予算を速やかに承認するよう野党・共和党の下院議員に訴えた。野党・共和党は『ウクライナよりも国境対策の予算が優先』と主張するが、背景にトランプ氏の影がちらつく」

「メキシコ国境からアメリカに向かう移民は3年連続で過去最多を更新し、大統領選最大の争点となりつつある。トランプ氏としては移民問題を政権批判の材料として最大限に利用したいので、簡単に問題が決着してもらっては困る。国境問題とウクライナ支援は本来別の問題だが、議会において国境問題が合意できなければウクライナへの予算も前に進まないという状況だ。共和党内には、ウクライナ支援の重要性を理解する議員も多いが、トランプ氏は追加予算を審議しないよう、共和党の議員に圧力をかけていると見られる」

━━ウクライナ支援について、トランプ氏はどのような“実況”を行ったのか?

「トランプ氏は『自分が大統領だったらウクライナ侵攻は起きなかった』『プーチンが侵攻したのは、バイデンをリスペクトしていないから』『プーチンにウクライナを与えたのはバイデンだ』などと投稿。トランプ氏は『支援』ではなく、原則『融資』すべきで、欧州がもっと負担すべきだと主張している。さらに『自分が大統領になったら、24時間以内にウクライナの戦争を終了する』と発言。現在の状況で停戦し、ウクライナの領土奪還を諦めることを意味するのか。ウクライナの戦いは大統領選の結果に大きく左右されることになる」

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━━バイデン大統領とトランプ氏、優勢なのはどちらか?

「『大統領選でどちらに投票するか?』を問う世論調査の最新の集計では、トランプ氏=47.5%、バイデン大統領=45.3%という結果に。移民問題もあってトレンドはトランプ氏に上向きなようにも見えるが、まだ分からない。トランプ氏は裁判を抱えながらの選挙戦であり、これは前例のないこと。とはいえ、主要な裁判の初公判の日程が未定で、“裁判引き延ばし戦略”は功を奏している」

━━バイデン大統領の“年齢問題”はどのように受け止められているのか?

「実は2人の年齢差は3歳半とあまり変わらず、トランプ氏もよく言い間違える。しかし、国民はバイデン氏の高齢をより問題視する傾向がある。『ニューヨーク・タイムズ』によると、バイデン氏は大統領をするには高齢すぎると答える人が73%なのに対し、トランプ氏は42%となっている。そういった意味でバイデン大統領の一般教書演説は“高齢批判”を払拭する絶好の機会であり、各メディアも『熱烈なスピーチ』(ワシントン・ポスト)。『ヤジを楽しむ余裕があった』(ロイター)、『議場の空気を制していた、上出来だ』(CBS)などと高評価だった。これから8カ月で、どう反転攻勢できるかが問われる」
(ABEMA/倍速ニュース)

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