福岡県北九州市を拠点とする特定危険指定暴力団「工藤会」総裁の野村悟被告(77)に、控訴審で無期懲役判決が下った。
 
【映像】工藤会トップ 野村被告の自宅前
 
 野村被告には、4つの市民襲撃事件で殺人などの疑いが持たれている。一審で死刑判決が出ていたが、控訴審でそのうち1つの事件について無罪とし、無期懲役となった。
     
 工藤会は、全国で唯一の特定危険指定暴力団だ。北九州市小倉北区に拠点を置き、「みかじめ料」を拒否する地元の飲食店や、組織に歯むかう市民や警察にも危害を加えてきた。元徳島県警警部の秋山博康氏は、「小倉の繁華街の店から、みかじめ料を取ると、毎月かなりの資金源があった。多分ここら辺は毎月何千万円だろう」と推測する。
     
 3年前の一審後、死刑判決を下した裁判官について、野村被告は「公正な判断をお願いしたけど全然公正じゃない。生涯この事を後悔するぞ」と話していた。また、裁判で野村被告は「総裁はやめる。組とは縁を切る」と発言したが、工藤会の捜査を指揮した元福岡県警刑事部長で、現在は福岡県暴力追放運動推進センターの尾上芳信氏は、「あれは紛れもなくただのポーズ」だと指摘する。
 
「真実は1つしかないが、一部無罪になったからと言って、それが真実というわけではない」(元福岡県警刑事部長・尾上芳信氏)
 
 無期懲役判決について、尾上氏は「厳しい判決だった。納得もできない」と語る。一部報道では被害者の親族が「信じられない気持ち。一審から後退したような形となり納得がいかない」とコメントし、「工藤会トップは街に戻らないで」との市民の声もあるという。
     
 今回無罪判決となったのは、1998年に路上で起きた「漁協組合長射殺事件」。尾上氏は「控訴棄却の判決が出るだろう」と見ていたが、野村被告の関与は推認されないと判断された。野村被告はこの事件当時、工藤会ではなく、傘下の「田中組」トップだった。しかしながら、他の3事件も「実行犯は田中組で、指揮系統は変わっていない。1つの事件だけ無罪なのは解せない」と尾上氏は指摘する。
     
 福岡県警では、工藤会の撲滅に向けて、みかじめ料の廃絶と、組員離脱の支援を進めてきた。その結果として、工藤会の勢力はピーク時の1210人(2008年)から、2023年には240人まで減少している。
     
 今後復活する可能性について、尾上氏は「ないと思う。理由は条例や法改正で、『社会 対 暴力団』の構図ができている。組員でいる限り、日常生活できない状態が強まり、衰退の一途をたどっていく」との予測を立てた。現在残っている組員は高齢化が進み、また240人のうち半数以上は収監中だという。「社会にいるのは、さらに少ない状況になっている」と説明した。
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)