発達障害の一つ「自閉症」。対人関係の苦手さや、強いこだわりなどの特性を持つ一方で、一度読んだ本をすべて暗記したり、一度聞いた曲をすぐに演奏できたり、時に突出した才能を発揮する人もいる。メディアでは“自閉症の天才〇〇”などと描かれることも多いが、それはごく一部だと嘆く当事者家族もいる。平山愛鈴(あられ)ちゃん(4)とその家族だ。
母親の愛理さんは「友達や周りの人に、娘に自閉症の診断が出たと言うと、“将来何か才能が見つかるかもね”という話が出る。世間では“自閉症=天才”のイメージがある。愛鈴は違うのにと思いながら、“そうだね”と返す」という。
作り上げられたイメージや、広まらない理解のために、生きづらさを感じている当事者やその家族たち。社会は自閉症とどう向き合えばいいのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■自閉スペクトラム症とは? 当事者家族の苦悩
自閉スペクトラム症(ASD)とは、自閉症・アスペルガー症候群の総称で、100人に2、3人程度が有病だとされる。知的障害やADHD(注意欠如・多動症)などが併存しやすい。
愛鈴ちゃんは2歳10カ月の時に知的障害を伴う自閉症と診断された。愛理さんは「小さい頃から人見知りや癇癪がひどく、違和感はあった。1歳半までは発語があったが、だんだんと喋れる言葉がなくなっていき、2歳の頃には“うん”しか言わなくなった」と話す。
精神科医で「よこはま発達クリニック」副院長の宇野洋太氏は「愛鈴ちゃんも特徴が多くあらわれている。言葉の遅れやこだわり、癇癪、関わった時の反応が乏しいなどだ。また、幼稚園や保育園に入ってから集団行動が難しいとご相談に至るケースもある」との見方を示す。
自閉症を持つ人との関わり方については「一人ひとり、情報処理の仕方が違う。耳で聞くより目で見る方が理解しやすい、あるいはたくさん情報があると分からないなどの特徴がある。それに合わせて、教えてあげること。視覚的に伝える、整理整頓して伝えることが求められる」と述べた。
■“自閉症=天才”のイメージが作る生きづらさ
愛鈴ちゃんの自閉症がわかったとき、父親の甚也さんは「あまりショックは受けなかった。命に関わる障害でもなく、1人の個性として受け入れた」と説明。
自閉症=天才というイメージはよく言われるという。「普通の子の中でも天才はひと握りのように、自閉症の子も天才はひと握りだと思う」。また、「娘は発語がなく、違和感にもなると思うので、自閉症であることはこちらから先に伝えている」と明かす。
両親の思いは、愛鈴ちゃんが問題なく生活を送れることだ。愛理さんは「才能は期待していない。楽しいことをして、普通の日常を送ってもらうことが一番の望み」、甚也さんは「自閉症の子どもが大人になったとき、社会で受け入れられないのが現状だと思う。認知度がもっと高まって、周りが協力してくれるような社会を期待している」と語った。
宇野氏は「排除的になるのは、その行動の理由が分からないから。なぜ物を投げたのかが分かれば、周りの子どもたちも共感が生まれてくると思う。そこの通訳をすることが、園や学校の先生、友達の親御さんなど周りの大人たちの役割ではないか」との見方を示す。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「メディアではあまりにも感情を揺さぶることに注力されてしまっている。その先への理解が進まないまま、寄付して満足したり、忘れてしまったりする人が多いことが危険だ。自閉症とASDは何が違うのか、なぜスペクトラムという言葉が入っているのか。そういうところまで学ぶべきで、感情よりも信頼、理解を進めるほうが大事なのではないか」と警鐘を鳴らした。
(『ABEMA Prime』より)
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