アニメ『ささやくように恋を歌う』水口亜季役・小松未可子オフィシャルインタビューが公開された。
アニメ『ささやくように恋を唄う』は、高校に入学した木野ひまり(CV:嶋野花)が、バンドでギターボーカルを務めていた朝凪依(CV:瀬戸麻沙美)に“ひとめぼれ”したことから始まるガールズバンドラブストーリー。原作は「コミック百合姫」(一迅社刊)連載の竹嶋えく氏による同名マンガで、2020年度「百合漫画大賞」第1位に輝いている。
――原作をご覧になったときの感想はいかがでしたか?
小松未可子(以下、小松):どの登場人物に焦点を当てても、“尊い”しかなかったです(笑)。私にはこういう経験はなかったんですが、どこかで経験したかのような、自分の青春の1ページにあったような感覚になりましたし、きっとどんな方にも刺さる作品なんだろうなと思いました。
――かなりキュンとした感じですか?
小松:キュンキュンしっぱなしでした! だからこそ、誰にも傷ついてほしくないという思いが芽生えましたし、どの登場人物にも幸せな結末を迎えてほしいと願いながら読んでいました。本当に心がきれいに洗われる作品です。
――亜季については、どんな人物だととらえましたか?
小松:最初は、依とひまりという主人公ペアの視点で読んでいたので、亜季は頼れる友人のポジションなのかなと思ったんです。依のことをいつも気づかっていて、空気も読める。ひまりとの関係を応援するし、背中を押してあげることもある。その一方で、気を使いすぎて自分の本心を閉じ込めがちにも見えました。しかも、その気持ちをまわりに悟られないようにしているのに、結構溢れ出てしまうというのがいじらくして。亜季には亜季の物語があるんだなと感じて、そんな亜季を支えてあげたいなって思うようになりました。依にとっての亜季のポジションになりたい!という感じですね。
――確かに、当初はSSGIRLSのムードメーカー的な印象が強かったですが、第2話、第3話と、亜季は亜季で何かを抱えているのかなと思わせるシーンがありました。
小松:そうなんです。きっと「あれ?」と思った方も多いと思います。知らない間に別方向から矢印が飛んできたような展開にドキドキしました。
――役作りとしては、どのようなことを考えましたか?
小松:キャラクター紹介にもあるように、亜季もまた“ひとめぼれ”の経験がある子です。話数を重ねるごとにその思いが少しずつ見えてきて、ついつい感情が漏れ出てしまうこともあるんですが、亜季自身はその感情をひた隠しにしているので、その部分はあまり意識しないようにしました。
――あくまでも亜季はムードメーカーであり、依のよき理解者であるほうを大事にされたと。
小松:そうですね。音響監督さんからも表に出しすぎないようにとディレクションがあったので、アニメーションと演出に委ねられる部分は委ねようと思って演じました。
――依からひまりとデートをすると報告されたときや、依が告白したことを聞いたときの反応がそうだと思いますが、亜季はどういう感情なのかいろいろと想像をかき立てられました。
小松:ひまりに告白したことを聞いたときのリアクションは、何度かリテイクがあったんです。亜季の表情が見えにくくなっているんですが、この表情がない部分を出しすぎないでほしい、と。確かに、依とは友達なのだから感情がなさすぎるのも変なんですよね。かといって、そこで感情をあらわにしてしまうような子ではない。そのさじ加減が難しかったです。
――しかも、そのあとは何事もなかったかのように普通の会話をしていますからね。
小松:そうなんです。あまり考えすぎないようにはしていましたが、このシーンに関してはどれぐらい感情を見せるか、40%なのか50%なのか、あるいは30%くらいなのかと、かなり慎重になりました。
――明るく依を励ます一方で、その内面はとても繊細そうです。
小松:のちのち、モノローグなどで亜季の気持ちが見えてくるところがあるんです。彼女のシリアスさもどんどん増していって、彼女のギャップも目に見えて出てくるので、ぜひ亜季のドラマにも注目していただきたいです。
――依とひまりの関係をご覧になった感想はいかがですか?
小松:ひまりは恋愛的な「好き」がわからないと言っていますが、「好きの度合いの違い」ってリアルでも起こりうることだと思うんです。同じ恋愛の「好き」だとしても、その熱量みたいなものは人によって違うと思いますし、自分の気持ちと相手の気持ちでバランスが違うように感じることもあるので、そういう意味ではありうる関係性なのかなと思いました。きっと、その溝をお互いに埋めていこうとするのが恋愛で、今まさにそれをやろうとしている依とひまりが尊いし、羨ましいなと感じます。
――羨ましい、ですか。
小松:中高生ぐらいの頃って、告白をゴールだと考える節がありますよね? 私も当時はそこから先に考えが及ばなかったというか、「付き合うって、何するの?」みたいなところがあったので、告白から先の恋愛をしていく二人が羨ましいなと思ったんです。「こうしてあげたい」とか「こうすればいいのに」とか、大人の視点でお節介をかけたくなるところもありますが(笑)、いい青春だなと思いながら見守っています。
――恋愛の喜びも苦しみも生き生きと描かれているのがいいですよね。
小松:そうなんですよ! 好きな相手のちょっとした行動に喜んだり、ちょっとしたすれ違いを人生最大の問題に感じたり。やっぱり十代のときって、生活の中で恋している時間が一番長いんじゃないかというときがありますからね。その感覚を丁寧に描きつつ、さらに音楽というものにその心情を乗せているところもこの作品の魅力だなと思います。
――そして第3話では、ひまりが恋愛的な「好き」はわからないけれど、それでも依と一緒にいたいと本心を告げました。
小松:ここからひまりの気持ちがどうなっていくのかが気になります。「好き」の種類がたくさんあることを知り、依の「好き」と自分の「好き」の意味合いが違うことに気づいた。そこから依と過ごすことで彼女の「好き」と自分の「好き」が重なっていくのか、そうではないのか。これは“ひとめぼれ”から始まった物語ならではの面白さだなと思っています。その危うさも含めたドキドキ感がたまらないですね。
――依についてはいかがですか?
小松:依は……いいですよね~。
――どんなところがいいですか?
小松:普段クールな依がひまりに入れ込んで、かき乱される姿がかわいくて。最初にみんなに幸せになってほしいとお話ししましたが、もっと闇を感じさせてほしいと思う気持ちと、ピュアな恋心のままでいてという二つの気持ちが芽生えそうになっています(笑)
――(笑)。SSGIRLS内の関係性もまたいいですよね。
小松:学生時代はバンドに憧れたこともあったので、この関係性も羨ましいですし、いい青春を送っているなと思いました。お互いに何が得意で何が苦手かをズバズバ言い合えちゃう関係性もすて きですね。仲間も、音楽も大好きというのが伝わってきて、信頼し合っているんだなと感じます。
――掛け合いも楽しそうな感じが伝わってきました。
小松:意外とこの作品はアドリブも多くて、付き合いの長いSSGIRLSのみんな(依役の瀬戸麻沙美さん、筒井真理役の小原好美さん、橘香織役の加隈亜衣さん)がどんなアドリブを入れてくるのかも楽しみの一つでした。しかも、みんなキャラクターにフィットしていて、それぞれの持ち味を存分に出してくるんです。安心してわちゃわちゃできました。信頼関係があるからこその掛け合いができるというのは、SSGIRLSの関係性に近いのかもしれません。
――勝手なイメージですが、女子校みたいな感覚もあったり?
小松:私は女子校も共学も経験していますが、このアフレコ現場はまさに女子校みたいでした。100円ショップで売っているフルーツと野菜モチーフのペンケースがなぜかアフレコ現場で流行っていたんですよ(笑)。それだけでひと盛り上がりできちゃうのがまた女子校っぽくて、毎回現場に行くのが楽しみでした。
――では、「高校時代によく聴いていた音楽」やその思い出について教えていただけますか?
小松:中学から高校に入るくらいの頃って、みんな洋楽を聴き出すんですよ。「ちょっとおしゃれな曲知ってるんだけど」なんて語り出して、カラオケで洋楽を歌い出す、みたいな(笑)。私もまさにそのタイプで、マルーン5やアヴリル・ラヴィーン、ステイシー・オリコをよく聴いていました。あとはバンドを組む子も増えてきて、「バンドやろう」とか「楽器できる人いる?」みたいな話題も出てくるんです。私はマリンバしかできなかったのでバンドには参加できなかったんですが、私にとってもまわりにとっても音楽は青春の大事な要素でした。
――洋楽をはじめ、それまであまり聴かなかったジャンルに手を伸ばすという、少し背伸びしてしまう感覚はよくわかります。
小松:自分が大人の仲間入りしたような感覚になるんですよね。みんなよりも一歩進んでいますって。青春あるある、ですね。
――では、最近“ひとめぼれ”したものについても教えていただけますか?
小松:1歳になる子どものために買った、『うごきません。』という絵本ですね。何が起こっても動かないハシビロコウのお話で、たまたまネットで見かけた表紙がすごくかわいかったんです。ハシビロコウが大好きなこともあり、絶対に面白いだろうなと思って中身を確認する前にポチりました。絵本のジャケ買いですね。内容もすごく面白くて、シュールなところが私には刺さったんですが、子どもにはまだわからないみたいでした。大人がハマる絵本だと、漫☆画太郎先生が「ガタロー☆マン」名義で描かれた絵本のシリーズも好きです。大人が読んでも面白いのでオススメです!
――ありがとうございます。最後に『ささ恋』の今後の展開で期待してほしいことを教えていただけますか。
小松:依とひまりの関係性とそれぞれの思いがどう変化していくのかに注目していただきつつ、周囲の人間関係も複雑になっていくので、ぜひいろいろな視点で物語を楽しんでいただきたいです。この作品は音楽も重要なキーワードになっているので、バンドのシーンも楽しみにしていてください。アフレコのときは私たちも見られていなかったので、一緒に楽しみましょう!
(C)竹嶋えく・一迅社/ささやくように恋を唄う製作委員会