夢を追うチャンスは一度きりだろうか、それとも上限はないのだろうか。絶え間なく新たな番組が放送され、次世代スターの発掘の土壌となっているサバイバルオーディション番組。その中で近年、目を引く傾向がある。一度サバイバル番組で脱落した経験を持つ練習生が再度別の番組に出演して、夢を叶えるケースが増えているのだ。
【映像】デビュー有力視されるも最終で落選…再挑戦を決めた美しすぎる練習生
4月にME:Iの一員としてデビューを果たしたMIU(櫻井美羽)はその筆頭だ。彼女は2023年10月から12月まで放送された「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(以下「日プガールズ」)にて、念願のデビューを決めた。それまでMIUは、2020年にNiziUを生んだ「Nizi Project」、2021年にKep1erを生んだ「Girls Planet 999:少女祭典」(以下「ガルプラ」)に参加しており、“三度目の正直”で夢を叶えたのだ。「Nizi Project」「ガルプラ」ではクールな印象が強かったが、「日プガールズ」では彼女の不器用で人間らしい一面や、精神的にも成長していく姿が丁寧にフォーカスされ、多くの視聴者を虜にした。
また同じく「ガルプラ」に出演した池間琉杏(RUAN)は、今年2月から4月まで放送された「CHUANG ASIA(創造営2024)」に参加し、最終順位2位に。Gen1esのメンバーとしてデビューを決めた。「ガルプラ」の頃は歌もダンスも未経験だったRUAN。夢へ向かってひたむきに努力を重ね、「CHUANG ASIA 2024」では堂々としたパフォーマンスを見せて「絶対に1位を獲りたい」と何度も野心を見せていた姿が印象的だった。
▲「CHUANG ASIA 2024(創造営2024)」に出演した池間琉杏(RUAN)
ちなみにMIUは「日プガールズ」のシグナルソング「LEAP HIGH!〜明日へ、めいっぱい〜」でセンター、RUANも「CHUANG ASIA 2024」のシグナルソング「Summer Dream」でセンターを務めている。過酷なサバイバル番組に繰り返し出演することは、本人にとっては並大抵ではない覚悟が要求され、視聴者が既視感がある練習生よりもフレッシュで魅力的な練習生に心を奪われるリスクもある。しかし成長を見せ、再起を誓うほど夢に本気であることが伝われば、一気に注目される存在に躍り出て、夢を掴む可能性も低くはないだろう。
ほかにもサバイバル番組やオーディションに再チャレンジし夢を叶えたメンバーは、実は挙げればキリがない。イ・チェヨンはTWICEを輩出したオーディション「SIXTEEN」では脱落したが、「PRODUCE 48」でIZ*ONEの一員としてデビュー。またKep1erのダヨンもかつて「PRODUCE 48」で脱落を経験している。「BOYS PLANET」を経てZEROBASEONEの一員としてデビューしたパク・ゴヌクは「極限デビュー野生ドル」に出演していたし、&TEAMのKは「I-LAND」での脱落を経験したのち、「&AUDITION-The Howling-」でデビューを決めた。
中国では何度もサバイバル番組に出演する練習生のことを、一度鍋から肉を出してからまた戻す調理法にちなんで“回鍋肉”と呼んだりするらしい。数度挑戦してもデビューメンバー入りを果たせない練習生も中には残念ながらいるが、事務所から声がかかり、デビューを果たす例も少なくない。井汲大翔は「PRODUCE 101 JAPAN」(2019年)、「創造営2021」(2021年)、「BOYS PLANET」(2023年)と日中韓のサバイバル番組に出演し、番組ではデビューを逃したが、RBWよりボーイズグループ・NXDのメンバーとしてデビューを控えている。
「年齢的に、練習生を続けられる期間はもう残り少ないと思います」練習生たちの切実な思い
現在放送中のサバイバル番組を見てみよう。ENHYPENを生んだ「I-LAND」の続編「I-LAND2 : N/a」では、24人の参加者中4人が、サバイバル番組へ再チャレンジをしている。バン・ジミンはILLITを生んだ「R U Next?」、フコは「ガルプラ」、ナム・ユジュは「CAP-TEEN」「青春スター」、ナナは「日プガールズ」にそれぞれ参加していた。第4話では4人の思いにスポットが当てられ、それぞれに切実な思いを吐露している。
▲「I-LAND2 : N/a」に出演したフコ
19歳の日本人練習生フコは「ガルプラ」では存在感を示すことができなかったが、練習生として数年間努力を積み重ね、「I-LAND2 : N/a」ではリーダーシップ、歌唱力、パフォーマンス力、表現力のすべてで練習生や審査員から絶大な信頼を寄せられ、目を引く存在となっている。それまでは気丈に振る舞っていたフコだが、4話ではゲストで登場したアーティストのチョン・ソミに正直な思いを明かした。
フコは「年齢的に、練習生を続けられる期間はもう残り少ないと思います」と冷静に語りつつ、Ke1p1erの活躍を目の当たりにしながら過ごしてきた日々を、「同じ番組に出たメンバーは同じ事務所で活動しているけど、私はずっと練習生として留まっている。自分自身を見失った気がするし、練習以外の生活はすべて捨てていた気がします」と切なげに述懐。14歳の頃に「SIXTEEN」に参加して脱落を経験したのち、「PRODUCE 101」を経て見事センターとしてデビューした経歴を持つソミは、フコの思いが痛いほどにわかるといい、「これからずっと自分に打ち勝って、前に進まなきゃいけない。自分のことを応援して。できると思う」とエールを送った。
▲「I-LAND2 : N/a」に出演したバン・ジミン
また19歳のバン・ジミンは、「R U Next?」ではファイナルまで進み、デビューが有力視されていたがまさかの脱落となった練習生。実に6年も練習生活を続けている。「I-LAND2 : N/a」でもその美貌とステージで見せるカリスマ性で高い評価を受けているが、「前のサバイバル番組でデビューできなかったので、過去を引きずっていても…。ここでデビューしなければいけないという強い気持ちを持って参加しました」と、焦るような思いを明かしている。第6話で彼女は、パート2への進出権がかかった1対1のポジションバトルで、まさかの敗北。自由にパートを選べる立場であったにもかかわらず、上手くこなせない不安から目立たないパートを選ぶという姿勢も、審査員にはマイナスに映ったようだ。窮地に立たされているジミンは果たして今回、悲願のデビューを叶えることができるのか。
そして16歳のナム・ユジュは、なんとサバイバル番組出演が3回目。努力を重ね、誠実に練習に向き合う姿が視聴者の心を動かしている彼女も「本当にデビューしたい」と切実に語っている。18歳の日本人練習生ナナは「日プガールズ」終了から立て続けのサバイバル番組挑戦が注目を浴びていたが、あえなく第5話で脱落となった。
▲「I-LAND2 : N/a」で脱落したナナ
また5月15日に放送がスタートしたばかりの「MAKEMATE1」は、各国から参加した事務所に所属していない35名の少年たちが、アイドルの夢を目指して成長していくプロジェクト。こちらにも「Nizi Project Season 2」のファイナルまで進出したミラクや、「青春スター」参加者のタクマが参加している。ミラクは「Nizi Project Season 2」では14歳ながら実力の高さでJ.Y. Parkを驚かせた練習生。「MAKEMATE1」でも高いダンススキルと表情豊かな表現力で、第1話から存在感を示している。「MAKEMATE1」では悲願を叶えることができるか、注目したい。
▲「MAKEMATE1」に参加したミラク
ME:IのMIUは、デビュー曲「Click」で「どんな夢も叶うよ」という歌詞のパートを担当することを心から喜び、夢を追う人を自分の存在で勇気づけたいと語っていた。彼女がデビュー後、かつてオーディションで苦楽を共にしたNiziUやKep1erなどのメンバーと再会を果たすたび、SNSには感動の声が躍っている。少し前までは、脱落イコール夢に敗れるというイメージが強かっただろう。しかし再チャレンジが当たり前の光景となった昨今、「絶対に叶えたい夢ならば、努力し続ければ叶えられる」ということを多くのアイドルたちが示す姿に、勇気づけられる人は多いはずだ。