【写真・画像】靖国神社“落書き男”が出国 軽犯罪なら逃げ得? 警備への批判の声も…元埼玉県警・佐々木成三氏「公安部が動いている事にビックリした。警視庁も本気だ」 1枚目
【映像】靖国神社“落書き男” 実際の様子
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 中国のSNSで拡散された映像が物議を醸している。「俺は大きな子どもだ」と語る人物が靖国神社の石柱へのぼり、放尿するしぐさを見せて、赤いスプレーで「Toilet(トイレット)」と落書きした。通行人がこの落書きを見つけて大騒動になり、警視庁公安部によりこの人物が中国籍の男だと判明。しかし、犯行の数時間後には航空機に搭乗しており、すでに中国へ帰国したと明らかにした。

【映像】靖国神社“落書き男” 実際の様子

 同じ人物とみられる男性は別の動画で、「日本政府が核汚染水の海洋放出を許可したことに対し、我々は何もできないのか? 奴らにひどい目に合わせてやる」と語っている。中国外務省は「日本は侵略歴史を正視し、反省するという態度表明と承諾を確実に守り、実際の行動でアジア隣国と国際社会の信頼を取らなければならない」と表明する一方、「外国にいる中国人に現地の法律と規定を守り、要求を理性的に伝えるよう望み、改めて注意を促す」とした。

 「いたずらでは済まされない」と日本では怒りの声が広がる靖国神社への落書き事件について、『ABEMA Prime』で考えた。

■“落書き男”の罪は?外国人観光客の軽犯罪は実質逃げ得?

 元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏は「落書きは“器物損壊罪”にあたる」「立ち小便の有無は確認が取れないが、過去には、放尿する格好をしていただけでも“礼拝所不敬罪”が成立した判例がある」と、2つの罪が考えられると語る。

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 礼拝所不敬罪とは、刑法188条で「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は6カ月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処す」と定められている。過去の逮捕事例としては、「広島の原爆慰霊碑に文字が書かれた紙を貼付」「墓石に土足であがり卒塔婆を振り回す動画」「墓石に女性立たせヌード撮影」などがある。

 “立ち小便”は罪になるのか。深澤諭史弁護士によると、もし立ち小便をかけていたとしたら、「軽犯罪法違反」もしくは「礼拝場不敬罪」のいずれかに該当する可能性があるとした上で、今回のケースでは、証拠が明確にある「器物損壊事件」として捜査したのではないかとみている。

 佐々木氏は「犯罪の証拠がSNSに上がっている以上、警察は必ず捜査する」と語る。「『証拠があるのに立件しないのか』と言われるのが、治安維持としては一番マイナスになる。政治思想に関係なく、器物損壊にあたれば検挙する。国際捜査課や組織犯罪対策課が担当しそうな事件だが、公安部が動いているのにビックリした。警視庁も本気になっている」。


 ジャーナリストの堀潤氏は「公安が動くということは、認知戦を仕掛けられている可能性が高い。日本の警備力の程度を測るにはちょうどいい仕掛けで、『日本政府は無能』と思わせることができる。警察にはしっかり秩序維持のために動いてほしい」と呼びかける。

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 一方、現実問題として「外国人の捜査はかなり難しい」と佐々木氏。「立件するには、身元を特定して、逮捕状を請求する。指名手配すれば、出入国手配もでき、その人物が入国すればすぐ情報が入ってくる。ただ、国際手配書を器物損壊罪で請求できるのかは疑問。犯罪人引渡し条約は、アメリカと韓国としか結んでいない。過去の殺人事件で、中国に逃亡した中国人被疑者を中国の法律で裁いてもらった“代理処罰”の判例はある。ただ、これも軽犯罪で動くかだ」とした。

 外国人の軽犯罪は、実質“逃げ得”となってしまうのか。深澤弁護士によると、強盗・窃盗などわざわざ外国に来て利益を得ようとする犯罪であれば、盗品の換金や通関の突破で発覚することもあるという。一方、今回のような損得でしたものではなく、比較的軽い「おさわがせ」的な犯罪の場合は、明確な証拠が出てこないため、現行犯であればともかく追跡が難しいのが現状だとした。

■靖国の警備ゆるい? 岩田温氏「一宗教法人にどこまで警察が動けるか」

 SNS上では、「靖国の警備がゆるすぎる」といった批判の声が相次いでいる。Xでは「監視カメラとか警備員って置いてないの?」「警備が甘いからこうなったのでは?」「警備強化できないの?」「24時間体制で警備すべき」「夜は誰も入れないようにしてもいいんじゃない?」とのポストが見られる。

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 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は、「靖国神社の一番目立つ柱に、こうも簡単に落書きできてしまう環境に目を向けるべきだ」と指摘する。「千鳥ヶ淵の戦没者墓園もほとんど警備がいない。アメリカのアーリントン国立墓地と比較するのは難しいが、まったく警備の状況が違う。『このままでいいか』の議論はしてもいいのではないか」。

 一方で、政治学者の岩田温氏は「靖国神社は戦後、一宗教法人になった。国が靖国神社に対して重点的に何かをやれば、『なぜ1つの宗教だけを守るのか』という議論が成立する。うまいところを狙ってきているやり方だと感じる」と語る。

 佐々木氏も「一法人の歴史的建造物を警察が警備するのは難しく、民間警備会社にお願いするしかない」とした上で、「警備がしっかりすれば、手薄な別の場所で問題が起こるようにも思う。警察は粛々と、今できる捜査でベストな選択肢をとってもらいたい」と促した。

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 いわゆる「迷惑系YouTuber」とも言える相手にどう対処するべきか。大空氏は「これまでは『思想犯が靖国に落書きするのでは』という前提があったが、動画サイトがどんどんできて、収益目的で来る時代になった。その幅が多様化する中では、現実的な警備強化を議論すべき。敷地内は難しくても、靖国通り沿いなどで、警備体制は取れるのではないか」と提案する。

 堀氏は「海外から来たアクシデントで、自国を変える議論を始めるところには、一定の抑止をかけたい」とし、「自分たちの“民主主義の価値”を知るべき。権威主義国から逃れてきた香港の人々は、日本でならデモができる。その価値を最大限に大事にした上で、寛容さと毅然とした態度が必要だ」との考えを示した。(『ABEMA Prime』より)

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