飛車先の歩を突いたのに、次には飛車がスッと横移動。まさかの展開だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Bリーグ第2試合、チーム永瀬 対 チーム斎藤の模様が6月15日に放送された。第8局では、この試合2連敗と調子が出ていなかったチーム斎藤・高見泰地七段(30)が、後手番から振り飛車を採用。周囲からは驚きの声が飛んだ。
高見七段は居飛車党の本格派で、相掛かりか角換わりを好んで指すタイプ。2017年度には叡王で自身初タイトルを獲得すると、第83期の順位戦からはB級1組に参戦するなど、着実に経験と実績を積み重ねている。人柄もよく、将棋界の“愛されキャラ”でイベント出演なども多数ある。
この試合では自ら犯した大きなミスもあり2連敗と苦しい星勘定になっていたところ、自身3局目ではファンもびっくりの戦法を選んだ。第8局、レジェンド森内俊之九段(53)との対戦は後手番。初手から▲7六歩、△8四歩、▲6八銀、△3四歩、▲7七銀と森内九段が得意の矢倉に向かったところ、突然高見七段の指は8筋の飛車に伸びた。そのままスライドさせるように飛車は3二の地点に移動。驚きの三間飛車だった。
事前の作戦会議でも、振り飛車を指すと宣言していただけに、チームメイトの斎藤慎太郎八段(31)は「来たっ!3二飛車戦法、来たっ!」と反応。ファンからは「ほんとに振ったw」「高見いけるか?」「きた~」と驚く中、同門の先輩で解説を務めていた勝又清和七段(55)は「高見さんの裏芸です。陽動振り飛車。矢倉に▲7七銀と上がった瞬間に振り飛車にする、昔からある戦法です」と明かした。
“裏芸”と呼ばれるだけに、ファンからも見慣れない高見七段の振り飛車だったが、指し慣れた様子で対局を終始リード。完勝を収め、笑顔で仲間の元に戻っていった。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)