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【映像】心臓移植のためドイツ渡航も“脳死”、一転ドナーに…康輝くん(11)の姿
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 病院に運ばれたケース、そこから取り出されたのは心臓。脳の機能が失われ意識の回復が見込めない、いわゆる「脳死」の人から摘出されたものだ。治療を待つ患者へ移植され、ドナーから命のバトンが渡される。

【映像】心臓移植のためドイツ渡航も“脳死”、一転ドナーに…康輝くん(11)の姿

 世界の大半の国は脳死を「死」と定義しているが、日本では心停止によるものだけを死と受け止める人も少なくなく、臓器提供への理解が進みづらいのが現状だ。脳死は死なのかをテーマに、『ABEMA Prime』で当事者と考えた。

■脳死判定受けた11歳息子の臓器を提供「最後の希望を何としても叶えないといけない」

 森本隆さん(62)、陽子さん(57)夫妻の一人息子・康輝くん。水泳が大好きで、弁護士になる夢を持っていた。小学2年生の時に診断されたのが、「拡張性心筋症」。心室が広がって全身に血液を送り出せなくなり、心不全を引き起こす病気だ。医師から言われたのは、「治療法がなく、心臓移植しか助かる道がない」。当時の日本では、康輝くんの心臓移植に適合する15歳未満の子どもからの臓器提供は認められておらず、海外での移植しかなかった。

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 そこで11歳の時、ドイツに渡って手術を受けることを決断。「本人はかなりしんどかったが、待っていたら行けないので」(陽子さん)。点滴や人工呼吸器を付け、命がけの渡航。無事到着したものの、翌日に康輝くんの容体が急変した。隆さんは「私たちは医療施設近くのアパートに住むため、生活面で必要なものを買いに行った。日本から同行してくれた医師2人に診てもらっていたが、戻ってきたら意識がない状態だった」と話す。それから4日後、脳死が宣告された。

 「死」を告げられながらも、心臓が動き、体温が感じられる姿に、頭の中は真っ白に。「切り替えなんてできない。取り乱した」という中、生前の康輝くんとの会話を思い出した。「小学3、4年生の時、食事の際に何気なく『臓器提供する立場になったらどうしたい?』と聞いた。『不吉なことを言わないで』と返ってくるかと思ったら、『僕は心臓をもらわないと生きていけないのだから、反対の立場になったら、使えるものは全部使って欲しい』と、はっきり言われた」(隆さん)。

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 隆さんは「親として、息子の最後の希望を何としても叶えないといけない」、陽子さんも「息子の臓器で助かる命があるのであれば」と承諾。ドナーとなった康輝くんの臓器は、現地の子どもたちに提供された。

 一転して提供側になったことについて、隆さんは「とんでもない悲しみが訪れたが、親として負けちゃいかんと。年月が経った今なら、あの時に提供してよかったと思える」と語った。

■臓器提供を「表明」している人は低い割合 決断は家族の大きな負担にも 課題は

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 康輝くんが亡くなって6年後の2009年、日本でも法律が改正され、15歳未満からの臓器提供が可能になった。しかしドナーの数は伸び悩み、移植希望者のうち、実際に受けられる人は年間わずか4%に過ぎない。

 そもそも「脳死」とは、脳の全ての働きがなくなった状態を指し、どんな治療をしても回復することはない。人工呼吸器等の助けで、しばらくは心臓を動かし続けることができるが、多くは数日以内に心停止に至る(心停止までに長時間を要する場合もある)。回復する可能性がある「植物状態」とは全く違うものだ。

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 30年間で1500件の心臓移植に携わった経験を持ち、ドイツで康輝くんも担当した医師の南和友氏は「脳死になると、全ての臓器の機能がどんどん落ちていく」と説明する。「数分後には心臓が止まるという状況で、強心剤や人工心肺で時間を稼ぐが、ある程度の時間しかもたない。時間がたつほど臓器に血液や栄養がいかなくなり、使える臓器は少なくなっていく」。

 脳死をめぐっては、日本と世界で判定基準が異なる現状がある。「世界では脳死以外に死はないが、日本では心臓死が一般的だ。冷たくなり、硬直して、瞳孔が開く“三大兆候”があって初めて死を認識している。脳死がどういう状態か、あまり説明してこなかったのが問題だ」。

 国内初の心臓移植手術から臓器移植法の成立までは、約30年の歳月を要した。「失われた30年間で、世界はどんどん進んだ。各国が試行錯誤でノウハウを積み重ねてきた中、日本は取り残された」。その上で、「世界各国が死の定義を『脳死した時点』と言っているのに、日本は『心臓が止まった時点』と言う。ナンセンスだ。手術は心臓を止めてやっているではないか」と指摘した。

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 脳死とされうる患者の家族に臓器提供に関する説明を行う専門職として、全国に97人の「移植コーディネーター」が存在している。兵庫県臓器移植コーディネーター・杉江英理子氏によると、人数不足により、同時に複数件あると休みなく働く人もいるとして、育成や人員増が急務だという。また、「悲しむ家族に中々切り出せない」と話す医師もおり、脳死や臓器提供についての国民への周知、理解促進が必要だとしている。

 内閣府が2021年に行った移植医療に関する世論調査によると、「臓器を提供したい人」が39.5%、「どちらともいえない」が35.8%、「提供したくない」が24.3%、無回答が0.4%との結果が出たが、「臓器提供の意思表示をしている人」の割合は10.2%にとどまった。

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 南氏は現場の実感として、意思表示の有無に加えて、「本人がサインしても、その意思が家族と共有されていない」ことも課題だと語る。「脳死判定された時に、臓器提供の選択肢があるかと家族に聞いても、『わからない』『今は回答できない』と返ってくる。日頃から考えてほしい。ドイツ時代は“生と死”について、よく小学校で教えていた。脳死と向き合わないと、いざという時にどうしようとなる」。

 隆さんは「学校や地域社会で話題が出た時に、家族が帰ってから『臓器移植の話があった。みんなはどう思う?』と話し合うのはどうか。『提供したい』『提供したくない』どちらも正解だと思う。ざっくばらんに話して、家庭内で気持ちを共有することが大事なのだろう」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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