外国人観光客だけ、入場料が4倍に――。兵庫県姫路市の清元秀泰市長が、姫路城の入場料1000円(18歳以上)について値上げを検討しているが、賛否の声があがっている。
清元氏は「7ドルで入れる世界遺産は姫路城だけ。外国人は30ドル払っていただき、市民は5ドル程度にしたい」と話している。
別名「白鷺城」と呼ばれる姫路城は、昨年度の訪問者148万人のうち、外国人観光客は3割にのぼり、城の維持管理費用のために値上げを決めた。清元市長は「議論を始めた段階で、料金改定は来年度以降」としているが、現地の反応はどうだろうか。
アメリカ人家族は「私はいいと思う。この美しい建物の復元は、日本にとって大切なこと。30ドルは1回目に行くとしたら払うが…」「複数回は行けなくなる。10~15ドルくらいかな」と語る。マレーシア人女性も「入場料が4倍になるなら、外国人観光客も高く感じてしまう。たぶん行かない、テーマパークの方がいい」とコメントするなかで、「とても美しいから行く。世界遺産を見るには価値のある金額だ。80ドルや100ドルでも払う」との意見もある。
一方で、姫路市民からは「4倍にしようかと聞いてびっくり。『外国人に失礼だ』と思っている」「世界的には日本人と外国人観光客の差を付けるのは当たり前と思われているが、いきなり4倍はやりすぎ」といった、慎重論は根強い。ネットでも「4倍はさすがにぼったくりでは?」「おもてなしの精神的には外国人だけ4倍も高いのは反則」との声は珍しくない。
立教大学観光学部の東徹教授は「円安の影響で、我々は物価高に苦しんでいるが、外国人は『日本はなんでも安い』と言っている」と指摘する。「そのタイミングで二重価格を設定するのは、取れるところから取ってしまうとの議論にも聞こえる。そこまで日本が貧しい国になったのかと、寂しさも感じる」。
しかし一方で、東氏は「いろいろなことが、ごちゃ混ぜになっている」と警鐘を鳴らす。日本人も海外に行けば、現地人より高い料金を取られるケースがある。ペルーのマチュピチュは、観光客が約1万円に対して、現地在住者らは約5000円。エジプトのピラミッドは、約1800円に対して約200円。インドのタージ・マハルは、約2100円に対して約90円なといった、二重価格がかかっている。
「貴重な文化財を次世代に伝えていくためにはコストがかかる。ましてや使いながら保存していくと、当然、応分の維持コストもかかる。それを外国人からぼったくるのか、という議論になると本末転倒だ。『今は円安でしょ』と言われて、以前のような1ドル120円台程度に落ち着いても、外国人料金を取るのか。環境や文化財を守るという議論は、円安・円高に関係ない」(立教大学観光学部・東徹教授)
スイス在住の元キャビンアテンダント、ライジンガー真樹氏は「単純に7ドルと聞くと安い」としつつ、「日本ほど価格設定がクリアな国は珍しい。日本人には発展途上国でぼったくりにあうなど、苦い経験を持っている人もいる。いざ自国が二重価格を導入しようとすると、拒否反応を示す人もいる」と分析する。
自身にも忘れがたい経験がある。「京都の料亭の予約を取りたくて電話したが、最初の質問が『海外からの電話ですよね?』で、海外在住者の予約はネットでしか受け付けていないと言われた」。予約サイトを見ると予約金8000円がかかる上に、日本語と英語、中国語で“三重価格”が示されていることがわかったという。
東氏は「我々が負荷をかけて利用する受益者だから、払ってくださいとお願いすればいい」と語る。「相場観まで持ち出す必要はない。メンテナンスにこれだけかかるので、世界がなんと言おうとこれだけ取るのだと言えばいい。高い料金を設定し、(住民税を払う地元市民には)割り引くのは納得感がある。これまでは観光客に甘すぎた」。京都では観光客が1日乗車券で市バスに乗れるため、「どうして納税者の方が高いんだ」との議論もあったとして、「過剰な利用を呼ばないために、将来のオーバーツーリズムの予防策として、『高すぎて行けない』という人が出ないといけない」と自身の考えを述べた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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