高知東生と青木さやか
【映像】初めての薬物使用を振り返る高知東生
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 依存症から回復した人たちが作る文化「リカバリーカルチャー」。海外では根付いている文化で、エルトン・ジョン、エリック・クラプトン、エミネム、ロバート・ダウニーJrなど、依存症から回復した後も、ミュージシャンや俳優として活躍している。

【映像】初めての薬物使用を振り返る高知東生

 2016年、薬物所持で逮捕され、回復プログラムを受けた俳優の高知東生さんを主演に迎えた、全国順次公開中の映画『アディクトを待ちながら』は、主演のみならず、他の出演者、監督、プロデューサー、スタッフなどが依存症の当事者、および家族が務め、日本のリカバリーカルチャーの先駆けとなる作品だ。番組では、主演の高知東生さん、共演者でギャンブルにはまった経験のある青木さやかさんを迎え、自身の経験を語ってもらった。

■なぜハマる?薬物、ギャンブル沼に落ちるワケ

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— 高知さんは、2016年に大麻・覚醒剤の所持の疑いで逮捕された出来事を思い返すと、いかがですか?

高知東生(以下、高知):人生最大のしくじりです。全てを失いましたから。

— どういう経緯で使用したのですか?

高知:20歳の時、成り上がって金を稼ぐ、という漠然とした目標で、東京に出てきたものの、何をすればいいか分からなかった。 そんな時に東京で一番流行っているディスコに足を運んだら、一般席の奥にVIPルームがあり、そこには僕と変わらない年の人間たちが豪快に遊んでいた。 バリバリ仕事して、稼いで、いい車乗って、いい服着て、いいもん食って、横には理想の女性を連れて。まさしく理想の成り上がりの人間たちだと思った。彼らに近づいて、金を稼ぐ情報を得たいと思い、何度も足を運んだら「一緒にVIP来いよ」ってなった。その何回目かに、グループの仲間たちがおしゃれに覚醒剤をあぶって吸っていた。周りを見ながら「こうやってやるのか…」と思っていたら、僕のところにも回ってきて使ったのがきっかけですね。

青木さやか(以下、青木):そこから抜けられなくなったってわけではないんですね?

高知:全然ないです。けれど、逮捕1年前からまたやり始めてしまい、その頻度は多くなってきた。自分の中のストレスを、ゴルフや仲間と食事をするなどで解消しようとしたが、(解消)されない。そうなると、頭に薬物が残っていて、そっちに走ってしまった。 「やばいやばい」と思いながら、今までコントロールしていたものが、できない頻度になっている。僕は薬物を相手と一緒に使っていて、その相手に「やめないか?」って言っても、「今まで捕まってないんだから大丈夫だ」って。 そうしたら今度は相手も何かを考えて「やっぱやめよう」って言ってきたが、僕はその時ストレス解消したいから「大丈夫だよ」って言った。考えがすれ違いになって、気がつくと、2016年の6月24日に逮捕されてしまった。

— 具体的なストレスはなんだったのでしょうか?

高知:健康産業を真剣にやりたかったから、芸能界をお休みさせてもらった。芸能人だから最初は興味を持ってお客さんは来てくれたが、商売をやり続けることを甘く考えていた。あとはスタッフとの距離感や付き合い方に悩んでいた。僕は根性論や精神論で生きてきた人間なんで、「なんでこれができないんだ」っていうことに囚われ、勝手にストレスが溜まって苦しくなってしまった。今思うのは、全て自分の問題だと分かるんです。

— 青木さんは4年前にギャンブルにハマっていたと公表されましたが、具体的にどんなギャンブルにのめり込んでしまったのですか?

青木:パチンコです。依存状態だとは全く思っていなかったが、メリットよりもデメリットの方が大きかったのは確かです。お金もなかったから借金をして行く。やめた方がいいって言われてるのに、嘘をつきながら行ってました。

— お金もないと分かっていながら、なんで行ってしまったのですか?

青木:単純に楽しいからですね。あとは、日常生活がうまくいってなかった。仕事もお金もないし、バイトも続かない。パチンコに行っている時は、日常の不安を忘れられるっていう感覚があった。あとは、お金はなかったけれども、もしかしたらバイトしているより稼げるかもしれない。そんな日もあったので、続ければ借金も返せるって思っていました。

■依存症から回復するまでのプロセス

— 高知さんは具体的にどうやって、やめ続けることができていますか?

高知:逮捕されてから2年。自分の根性論、精神論で耐えて生き直そうとしたけど、限界だったんです。自業自得ですが、1年経ってもマスコミがないことばかり作り上げて報道する。日本中の人に嫌われたと思っているから、引きこもるし、人に会うのも怖いし。もう死んだ方がいいかなって思った時、偶然、社会の手助けをしている元依存症の人たちに出会いました。そこから自助グループやプログラムをやって、同じ問題を抱えて、回復したいと努力して行動している仲間たちに囲まれながら過ごして。そうすると考え方も変わってくるし、年月が経つと今苦しんでいる人の役に立ちたいと思って動いている。結果的には自分のためなんですよね。

— 青木さんは、ギャンブルに戻らずに済んでいるのは、どんな要因がありますか?

青木:努力です。常に誘惑があるから行きたいと思ってしまう。うまく付き合いたいけれど、ハマりすぎる弱さが自分にはある。そうすると生活を脅かすことになるから、子どもとの生活やお金、仕事にもあまり行かなくなるかもしれない。その危うさがあるから、距離をとって努力している。あと私にとって、ギャンブルの話をしないコミュニティに参加したのは大きかったと思っている。動物愛護の活動をしているんですけど、めちゃめちゃ忙しくて。24時間やろうと思えばやれてしまう。そこでギャンブルの話をする人はいない。違う話題で盛り上がるコミュニティなので、そこに身を置いているのは、ある種自助グループというか、自分を整えているところはあると思います。

 でも、高知さんの話を聞いていると、私の方がやばいんじゃないかって思うことがある。なぜならば「私は依存症じゃないけど」みたいなところがあるんです。辛い思いをしていない。捕まったり、 破産したり、家族がいなくなったり。だから、そこに戻ってしまいやすいのは、私の方かなと。

高知:回復し続けている理由は、自分の生きづらさがすごく問題だったってことに気付けたから。いろんな人に支えてもらいながら、 凝り固まった考え方や癖を一つ一つバラしていくんですよ。それで「どれほど違う方向で物事を考えていたんだろう」「どれだけ視野が狭かったんだろう」と。 周りの影響じゃなく、全部この歪んだ認知、自分自身の問題だったんだっていうことに気づけた。

— なるほど。高知さんは、今まさに回復への道のりを進んでいる人たちにアドバイスを送るとしたら、何かありますか。

高知:理解してくれる味方や、苦しさを共感しながら分かち合える仲間たちは、レールを持っている。回復に向けての参考書を持っているから、勇気を持って手を上げて、孤立しちゃダメ。自分で一人で考えていたら、結果的にはもう死んじゃった方がいいのかなって考えてしまう。 自分を責めるし、 自尊心はマイナス100ぐらいですよ。そんな中で、相談窓口や自助グループは調べればあるんで、一歩踏み出せ、行動しろ、一人になるなって伝えてあげたい。

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