【写真・画像】「お前くさいねん」クリーニング店で知的障害のある男性を洗濯機に入れて回し全身打撲 職場における“障害者の虐待” 発達障害告白で不利益も…専門家と対策を考える 1枚目
【映像】職場の発達障害いじめ、実際の事例
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 京都市のクリーニング店に勤める男2人が、同僚の男性を負傷させたとして逮捕された。男2人は50代の同僚男性に「お前くさいねん。洗濯機入れや」と言い、大型洗濯機に入れてふたを閉めて回し、全身打撲で全治2週間のけがを負わせた疑いがある。けがをした男性には知的障害があり、事件をきっかけに退職した。

【映像】職場の発達障害いじめ、実際の事例

 職場における障害者いじめが、近年問題視されている。一定規模以上の事業主には障害者を雇用する義務があり、例えば従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならない。そんな中、怒鳴る・暴力を振るう・不当な労働を強いるなど、さまざまな事例が報告されている。「甘えていると言われるけど、私も好きで障害者になったんじゃない」という声がある一方で、「あれもできない、これもできないで、同じ給料なんてやってられない」「フォローが大変だ」といら立ちを感じる健常者も。

 障害のある人にどこまで配慮し、職場でどう折り合えばいいのか、『ABEMA Prime』で考えた。

■発達障害を告白し不利益を被る当事者も 

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 障害がある人からの相談も受ける労働組合「総合サポートユニオン」執行委員の坂倉昇平氏は、今回のケースを「嫌がらせの象徴的な事件だ」と語る。被害男性を診察した医師の通報で事件が発覚した経緯から、「経営者や同僚は本当に知らなかったのか。障害者に対する虐待やハラスメントが問題化されづらい実態があることも表している」と指摘する。

 厚生労働省「使用者による障害者虐待の状況等」によると、虐待が認められた障害者数は2022年度に656人。2017年度の1308人よりは少ないが、前年度比では30.7%増となっている。坂倉氏は「2010年代はブラック企業対策や働き方改革で、労働条件が良くなったと言われがちだ。一方で、人が集まりにくい職場では、労働条件を良くする代わりに一人ひとりの仕事量が増え、負荷が高まっているところも増えている。そうした中で、障害者に対する『生産性が低い』という差別的な視点が強まってきたのでは」と説明。

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 厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で働く障害者は64万2000人で、20年連続で過去最高を記録した。内訳は、身体障害者が約36万人(前年比0.7%増)、知的障害者が約15万2000人(同3.6%増)、精神障害者が約13万人(同18.7%増)。企業規模によって障害者法定雇用率が定められているが、達成できない企業は不足1人につき5万円/月の納付が求められ、改善が見られない場合は企業名も公表される。

 NPO「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は、「身体障害者の平均賃金は約23万円で、一般労働者の30万円より低い。知的障害者になると、これが約13万円に下がる。経営者は障害者を雇わなきゃいけないとわかっていても、今できる仕事がないと結論づけた結果、“月5万円を支払えばいい”“そのほうが安い”と着地している企業もあるのでは」との見方を示す。

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 障害者雇用率を上げたい企業に対して、「障害者雇用代行事業」も存在する。A社に対して、代行業者(B社)が運営する施設(農園など)と、そこで働く障害者を紹介・契約。A社の従業員として雇用しながら、B社の施設で就業することで、雇用率アップや障害者雇用の促進などのメリットが得られる。2023年4月時点で、23法人125カ所でサービスが提供され、のべ1000社以上が利用。ただ、厚生労働省は「直ちに違法とは言えないが、法律の趣旨にあうか疑問の残る事例も」としている。

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 坂倉氏は「障害者雇用率を満たすため、“厄介払い”の手法として使われるケースもある」と苦言を呈する。「親会社でメインの仕事をやっていた人が、ノルマの達成率が低いなどの理由で“お前、発達障害だろう”と、子会社やグループ会社に飛ばされる。本人は診断を受けておらず、『その仕事を続けたいのに…』ということで相談を受けるわけだ。賃金は下がり、いつ切られるかわからないような、職場から排除するために使われている部分もある」。

■「合理的配慮」にも限界?スキームに矛盾? 大空幸星氏「企業側も相談を。第三者が常に敵対関係にあるわけではない」

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 障害者差別解消法が改正され、雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供が義務化された。坂倉氏は「厚労省のガイドラインで、指示やスケジュールは具体的にわかりやすく伝えること、理由を説明すること、残業は1日おきにしましょうなどとしている。それはつまり、誰にとってもいい職場だ」と指摘。一方で、「合理的配慮が過重な負担になり、会社の利益と衝突する場合はやらなくてもいいことになっている。“うちは儲かってないから”“人件費に余裕がない”という時、それ以上何ができるのか、となってしまうわけだ」とも述べる。

 また、差別やハラスメントを受ける側としても、「“私は能力も生産性も低い人間だ”“だから文句は言っちゃダメなんだ”と、うつになったり、仕事を辞めたりしてしまう。明らかに相談者は悪くないと感じる事例もあるが、自分が正しいのか確証を持てないような価値観が広がっている」とした。

 大空氏は「特権がある人とない人みたいな対立が可視化されると、いつまでも“かわいそうな存在”から抜け出せない。そのレッテルを貼られてしまうと、SOSを出しにくくなってしまう。ただ、法定雇用率がこれだけ明確化されているのは、それだけ問題があったからで、“かわいそう”と思われないと社会のリソースも投入されなかったりする。この矛盾にどう向き合うかは、提示しないといけない」との考えを述べる。

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 これに坂倉氏は課題を指摘。「障害者雇用率が達成できないと企業名が公表されるが、差別をしたからといって公表されるわけではない。行政に相談すると労働局が取り持ってくれるが、強制力はなく、経営者が応じなければ終わりだ。ある種の善意に頼る仕組みになっていて、実効性が弱い現状がある」。

 大空氏は「ユニオンは会社の敵ではないことを経営者も知ったほうがいい」と投げかけ、「『ユニオンに駆け込まれた』となるが、会社側の相談にも応じてくれる。常に敵対関係にあるわけではない。合理的配慮を進めすぎて業績が悪化したら元も子もなく、できる範囲のすり合わせはプロの第三者が入ったほうがいい。ユニオンを含め、あらゆる外部組織や地域に頼ることが重要だ」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)

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