結婚式の準備を進める彼女を前に、彼氏は空返事を返す。乗り気でない様子を見て、彼女は「私が挙げたがってるから、しょうがなく付き合ってんの?」「もう式やめる」と怒りだす——。こんな男女を描いた動画が話題に。ネットでは理解を示す声の一方で、結婚式不要論も出ている。
【映像】こんなにある!結婚式「やらなきゃいけないこと」リスト
新郎新婦だけでなく、出席者からも結婚式への疑問が挙がる。式場探しサイト「トキハナ」の調査では、20代の64%が「ご祝儀3万円は高い」と感じていて、女性の75%が「着る服に困る」と回答した。
いまや結婚しても、結婚式を挙げない人は半数以上にのぼる。マイナビウエディング「2023年 結婚・結婚式の実態調査」によると、結婚して結婚式をする人は45.3%で、挙式・披露宴両方は35.4%、挙式のみは6.9%、披露宴のみは3.0%となった。一方で、ブライダル総研「結婚総合意識調査2023」によると、何らかのイベントを行った割合は78.6%(去年比+2.9%)だった。これらの結果から、お祝いはしたいが「結婚式」は嫌な人が多いとも考えられるが…結婚式はアップデートすべきなのか『ABEMA Prime』で考えた。
■妻はしたい!夫はしたくない…一度は式場申し込みもキャンセルした夫婦
門野妹(まい)さんは5年前、夫のタケシさんと結婚式を挙げるかで大バトルとなった。妻の妹さんは「当たり前に結婚したらやるもんだと思っていた。ドレスも着たかったし、友達をたくさん呼ぶのも好き」と語るが、タケシさんは「主人公になるのが嫌。ザ・結婚式の要素は基本的に嫌」と真っ向から対立。後にタケシさんが、周囲から「ここで抵抗したら一生言われるぞ」と忠告され、夫婦は結婚式を行うことに合意し式場と契約を結んだ。しかし妹さんは「申し込みから帰る電車でモヤモヤし始めた」と言い、式自体をキャンセルすることに。
キャンセルした理由として、「費用面が大きかった」と妹さんは振り返る。「夫の意見を聞いて、『世の中に結婚式をやりたくない人がいる』と理解した。一度申し込んだが、私もなぜ結婚式をしたいのかわからなくなり、式以外に費用を使ってもいいのではと思った」。式に向けた準備もハードルとなった。「割と早めにキャンセルできたので、大事にはならなかった。新婚旅行に費用を振って、プーケットで豪遊した。ただ、ドレスはいつか着てみたい」と花嫁姿には今でも夢があるようだ。
■人的・金銭的コストが大きすぎ! 謎ルールもいろいろ
門野さん夫婦が結婚式をキャンセルしたのは、「コストが高すぎる」と「労力がかかりすぎる」の両面からだった。20代半ばで数百万円はかなりの大金で、親の支援は貰わずウェディングローンを組んだが、新婚旅行や、もっと別の事に使った方が有意義だと感じた。また、誰を呼ぶかをはじめ、ドレス・二次会・親の宿泊場所など、仕事の忙しい時期で時間をかける余裕も無かった。
式場探しサイト「トキハナ」代表の安藤正樹氏は、「結婚式のあり方は昔から変わっていないが、世間の家族観や結婚観は大きく変わってきた。そのミスマッチが金銭面を含めて出てきている」と指摘する。「いざ結婚式の準備を始めると、わからなくなることが多い」。参加者側の負担もあるが、「ウェディング業者の本音としては、ルールは全部なくした方がいい。ご祝儀は、誰に聞いても高いと感じている」。一方で意義を見いだす人もいる。「『初めての2人のプロジェクト』とも言われるが、実際に結婚式のようなことをする機会は、それまでない。1つのゴールに向けて、2人で組み立てていくのに価値があったとの声が、経験者からは結構出てくる」と結婚式の良さを伝えた。
結婚式ならではのルールとして、「白は新婦と被るから×」などのドレスコードや服装ルール、「短い」「再び」「切れる」など使ってはいけない言葉の存在、数年会っていない友人や社長のスピーチなどがある。また、余興は長くてつまらなく頼まれても迷惑という声や、「ファーストバイト」も「バージンロード」も時代錯誤、重いだけの「引き出物」や、なれそめ披露、「両親への手紙」などの典型的なスタイルへの反発もある。
トキハナのアンケートによると、参加者として嫌だった事・困った事は、上から「3万円のご祝儀が高い」56人、「謎のドレスコード」55人、「長時間の拘束」20人、「知らない人ばかりで気まずい」16人、「新郎新婦と話す時間がほとんどない」13人の順だった。
ご祝儀のルールも複雑だ。2人が末永く離れることがないように、金額は割り切れない奇数として、ピン札(新札)を用意する。お札の肖像画を上に(逆にすると弔事の意)しつつ、毛筆や筆ペンを使い、濃いめの墨色・楷書体で書かれたご祝儀袋で包む。ご祝儀袋の種類も、包む金額とバランスの取れたものを選ぶのが一般的だ。
■ハードルいろいろ…でもやったら楽しい?
ハヤカワ五味氏は、「会費制は最近よく聞くが、対価に見合わないと感じさせるのがよくない」と指摘する。「年1回も会わない友達に呼ばれて、式場に誰も知り合いがいないと、『何で呼んだの』となる。時間もお金も使って、その後、仲良くするわけでもない」と実体験を口にした。
またバンド「OKAMOTO’S」のボーカル、オカモトショウは「結婚式をやりたいと思って生きてこなかった」と語る。「結婚はしたが、コロナ禍で式はやっていない。お互いのルーツも日本と西洋、南アジアにあり、家族が一斉に集まるのも難しい。キリスト教徒じゃないのに、日本の教会で式を挙げるのもどうか。かといって神道も…。好きな形でやれればと思いつつ、機会を逃した」。しかし、中学校の同級生でもあるバンドメンバーの式に出席すると、「幸せな気持ち」になった。「やりたい人の気持ちも、嫌な人の気持ちも、どちらも結構わかる」と述べた。
なんもり法律事務所の南和行弁護士は、「自分はゲイだから、余計に『結婚なんて』と言っていた」と振り返る。「弁護士になって、パートナーから『やっぱり結婚式しない?』と提案された」。準備の最中には「帰宅する都度、『招待状出した?』と聞かれた」など苦労もあったが、「やったら楽しくて、そこから人の結婚式に行くのも楽しくなった」と心変わりした。
■一緒に楽しむ披露宴じゃない“パーティ”も多種多様に「新しいご縁を生む合コンを」「花火大会」
妹さんは「2人のオリジナリティーが発揮できれば、式ではなく飲み会でもいいのでは」と提案する。「参加者が2人を思い出して、すてきな夫婦だと分かるような会がいい。友達同士で合コンして、私たちのご縁から、新しいご縁を生む飲み会ができたらいいと考えたことがある」と、夫婦だけが主役にならない会をイメージした。
新しいスタイルとして、ハヤカワ五味氏が選んだのが「花火大会」だ。「結婚式は数百万円かかるが、花火大会は100万円でできる。YouTubeで配信すれば、子育て中の同世代も祝える。夫婦がメインでないので、目立たなくていい」。参加者は知人や友人50〜100人程度を予定している。「遠方で行うが、交通費も入れて予算は3万円以内。旅行して食事して、友達同士が知り合って3万円なら、自分的には満足だ」。現地には知人のみが集まるが、YouTubeを通してであれば、面識のない人でも参加できる。「花火自体は100万円で10分程度だが、駅からの往復バス送迎や、現地食材でのバーベキューで、あわせて4〜5時間の予定だ」と紹介していた。
(『ABEMA Prime』より)
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