2024年7月から放送中のTVアニメ『この世界は不完全すぎる』（このふか）は、デバッグ業務を担当していた主人公の羽賀マコト（ハガ）が、ゲームからログアウトできなくなってしまった中で、デバッグを続けながら解決の糸口を見つけ出そうとする物語が描かれる。
第1話では、辺境の村で暮らす少女・ニコラと王の探求者（キングス・シーカー）の一員を名乗るハガが出会うところから物語が始まり、村人たちと協力してドラゴンを打ち倒すも、ニコラたち村人は命を落とすことがゲームのイベントとして決まっていたという衝撃の展開が描かれた。その後、復活したNPCのニコラは、ハガとともに旅路を歩むこととなる。
デバッグとはゲーム開発の重要な工程であり、開発中のゲームにおいて不具合がないかどうか隅々までチェックをしてバグを解消していく地道な作業をこなしていく。デバッグを行うデバッガーが主人公ということと、ゲーム用語や業界用語も巧みに物語に盛り込まれていることが『このふか』の特徴だ。
本作でハガを演じる石川界人と、ハガとパーティを組むこととなる同じデバッガーの天野イソラ（アマノ）を演じる川島零士のインタビュー中、本作に登場するゲーム・業界用語の話題に。川島は「漫画やアニメを好きな方はゲーム好きの方も多いと思いますので、聞いたことがある単語が物語の中でそういう風に使われるのかという感想を抱かれると思います」と述べていたが、本作ではデバッグモードやNPCといった用語が重要な要素として描かれる。
バグとしてTポーズ（両腕を横にまっすぐ伸ばして直立した3Dモデルの基本姿勢）といった用語も描かれるが、物語を楽しみつつこうした専門用語を知ることができるのも魅力の1つだろう。Tポーズに関しては、意味が視聴者に伝わるか伝わらないかで石川と川島の間でも意見が割れたのだが、声優業界で使われている用語にもアニメファンに意味が通じるかどうか曖昧なものがあるのか尋ねてみた。
石川は「別録りと抜き録りですかね。業界内でも人によって使い方が変わってくるのですが、別録りは声優さんたちが一緒に収録をしていく中でセリフが重なってしまう場合やあとで機械音声に加工する必要がある場合など、本線（メインとして収録される本番のこと）のあとに1人だけそのセリフを収録するやり方のことなんです」と解説する。
続けて「そのことを抜き録りと呼ぶ方もいらっしゃいますが、明確な違いは現場ではなかったりするんですよね。抜き録りは抜き録りで、別スケジュールで1人収録するという意味もあるので、そこは統一してほしいですね！」と語り、インタビュー現場には笑いが起こった。
川島からは「バラシってさすがに通じますかね？」と一例が挙げられると、石川は「さすがに通じるんじゃない？ でも社会に出ないとわからないかもしれないね」と合いの手が。もともと予定されていた収録や仮の予定が何らかの都合によってなくなってしまう意味だが、言葉のイメージからも意味を想像しやすいかもしれない。
インタビューの話題はデバッグと声優という2つの仕事の共通性に移る。川島からは「声優として生きていくための武器を少しの可能性から探し出していくということは、バグを探し出していくデバッガーと共通するのかなと思います」という意見が挙がる。
石川も「1つ1つの経験が次の行動に活きてくることが近いと思いますね。アニメの1話、ワンシーンワンカットごとでも違ってくるニュアンスを自分の中で蓄えて次のパフォーマンスにつなげていくということは、1回1回戦い方を試してみてバグが発生するか検証してデバッグに臨むハガの姿と、重なるところがあるのかもしれません」と重ねる。
そして「だからハガがやっているデバッグと僕らがやっている仕事の一番の共通点は、続けるのが一番難しいということだと思います。どんな仕事もそうですけど、続けるのが一番難しい」と締めてくれた。1つ1つの地道な積み重ねを継続することの難しさと大切さを改めて感じることができたインタビューとなった。
取材・写真・テキスト／kato
『この世界は不完全すぎる』
2024年7月5日(金)より毎週金曜26:53～ABEMAにて見逃し無料放送・独占見放題配信中
https://abema.tv/video/title/420-67
アニメ公式HP：https://konofuka.com/
アニメ公式SNS：https://x.com/konofuka_QA
(C)左藤真通・講談社／『この世界は不完全すぎる』製作委員会
