自民党総裁選が9月12日に公示、27日に投開票が行われる。岸田文雄総理が出馬を見送り「ポスト岸田」を争うことになるが、6つあった派閥のうち5つが解散を表明。麻生派だけが残る中で“脱派閥”の総裁選に、候補が乱立する模様だ。真っ先に立候補した小林鷹之前経済安保担当大臣は「私は脱派閥選挙をこの総裁選で徹底します。旧派閥に対する支援は一切求めません」と宣言。小泉進次郎元環境大臣、石破茂元幹事長、上川陽子外務大臣、河野太郎デジタル大臣、茂木敏充幹事長など10人以上が出ると見られる中、本当に派閥から抜け出した総裁選は実現できるのか。『ABEMA Prime』では、自民党・広報本部長代理で衆議院議員の平将明氏、政治ジャーナリストの青山和弘氏とともに、混乱状態になっている自民党の現状を考えた。
■脱派閥の総裁選「これだけ名乗りを上げることはいまだかつてない」
今回の総裁選に立候補すると見られるのは、10人以上。過去の総裁選を見ても異例の事態で、国会議員20人の推薦が必要になった現在の仕組みになってからは5人が最多で、2ケタになったことがない。元石破派である平氏は「まず、これだけ名乗りを上げることはいまだかつてなかった。候補者を絞り込んだり『お前降りろ』とか『こっちを応援しろ』がなくなったから、これだけ名乗りを上げている」と、候補の乱立そのものが脱派閥の象徴だと語った。「(推薦人の)20人を集めるのも自由競争。昔はいろいろな世話とか、資金的な援助もあったかもしれないが、今は配る原資すらない。議員個人一人一人が考えて、誰を応援するのか、誰を推薦にするのか。大事なのは誰かが勝った時に、あいつは誰々の推薦人だったから外すとか、そういうことがなく本当にフェアな人事が行われること」と述べた。
派閥による政治資金規正法違反事件を受けて、党内の派閥は麻生派を残すのみ。今回の総裁選は旧派閥の色が見えない選挙になるかという点も注目されている。「麻生派以外全部解散をしているので、それがまた派閥単位で動いたら『何やってんだ』という話になる。(立候補した)小林鷹之さんの推薦人を見ても、旧派閥の括りで見てもどこかに偏っているわけではない。彼は旧二階派だが二階派ベースには見えない。だからそれをみんなが徹底することが大事。昔は大物が流れを作ると、みんながその流れに乗っていたが、やはり見苦しいしそういう総裁選をしていると自民党は終わる。今回の自民党出直しで脱派閥だと言った以上は、例えば候補者が派閥にいながら総裁選に出て、無派閥の人間に党改革を訴えるなんて、私はありえないと思う」とした。
■自民党内に温度差「統一感がないのが一番の混乱の原因」
“脱派閥”と言いつつ、いまだ麻生派が残り、党内のグループ自体が否定されたものでもない。過去12回、総裁選に関する取材をしてきた青山氏も、混乱の原因だと指摘する。「平さんみたいな人は派閥がなくなって当然と言っているが、自民党内でこのコンセプトが全くできていない。岸田さんは派閥を解散したけど、まず麻生派が残っていること自体がおかしいし、岸田さんも派閥を解散したって人と人との付き合いが残ると言っている。その付き合いを残したい人はいっぱいいる。だから岸田派のまとまりを残す理由で林さんが出ようとしていて『どっちなの』となっている。ただ一応、派閥はなくなっている前提に立っているから、上川さんが岸田派から出ようとしても止めることはできない」と、かつての岸田派の動きを例に挙げた。さらには「人と人との付き合いを起こしたい人たちが派閥的な動きをして、その中には麻生さんという、まだ残った親分がいろいろと裏番長的な動きをしている状況。非常に自民党の中の温度差があって、全然統一感がないのが一番の混乱の原因。岸田さんが自分の岸田派を解散する時に、麻生派も含めて、うちの党からは全部の派閥をなくすんだとちゃんと整地しなかった。このツケが回ってきている」とした。
■戸惑う若手議員「どうしたらいいんだ」
この状態で特に混乱するのが、当選回数の少ない若手議員たちだ。これまで派閥の意向に沿って総裁選に参加していた議員たちも、これからは自らの判断をもとに票を投じることになる。若手議員からの相談も受ける平氏は「みんな迷子になっている」という表現をした。「私より当選回数の若い人たちが『どうしたらいいんだ』と。昔だったら『俺は誰々応援している。お前は俺に世話になっているから(一緒に)応援しろ』と言われてきたからだ。私は若手になんて言い返しているかといえば『自分の頭で考えて』と。国会議員なのだから、ちゃんと独立して自分の頭で考えろよと思うが、派閥どっぷりだった人間はすぐには変わらない。だからこれから今変わっていく過程にある。今大事なのは派閥を拠点にした総裁候補はありえない。この総裁選を通じてさらに自民党は変わる」と語った。
また青山氏も、キングメーカーと呼ばれる重鎮たちの力については弱まっているとした。「例えば茂木派から2人出たり、岸田派から2人出たりしている。たくさんの人が手を挙げて混乱状態になっていること自体が、党改革の結果だし産みの苦しみ」と指摘。ただし、ポイントとして挙げたのは決選投票になった際の票の動きだ。「決選投票なる時に、実はやっぱり麻生派だとか菅さんとかの力が、この合従連衡のところで出てくるんじゃないかと今から言われている」と、10人以上からではなく、2人から1人を選ぶ時に、派閥的な動きが再び大きな力を発揮する可能性を説いた。
■若手の立候補「新しい時代の総裁選に臨もうとしている」
乱立する候補の中でも若手に数えられるのが小泉氏と小林氏。重鎮、ベテラン議員の意向を強く受けて、実質的に「操られる」ように出馬しているかという問いに対して、青山氏は否定した。「若い人だけじゃなくて、長老というかベテラン議員もいる。ただ『操られている』はかなり言い過ぎ。小泉さんなら菅さんの支持はとても大きいと思うが、それだけで勝ちたいとは思っていないはず。若手やいろいろなところから支持を得て総裁にならないと、自分が傀儡だと言われてしまうのは絶対に面白くないはず」としたうえで、「例えば林官房長官であれば、推薦人名簿を見たらみんな岸田派とかいうのはあまりにかっこ悪い。そういうところはみんな気にしながら、この新しい時代の総裁選に臨もうとしている」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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