総裁選・出馬表明の小泉進次郎氏「私が総裁になれば古い自民党と決別する覚悟」「人事は、実力主義。いかなるグループからの推薦も受け付けない」
【映像】小泉進次郎氏、総裁選への意気込み(生中継)

 自民党・小泉進次郎元環境大臣が6日、都内で記者会見し、自民党総裁選(12日に告示、27日に投開票)への立候補を正式に表明した。会見では「決着 新時代の扉をあける」というフレーズのもと、「政治改革」「聖域なき規制改革」「人生の選択肢の拡大」「憲法改正」の4つの政策について、それぞれ説明した。

【映像】小泉進次郎氏、総裁選への意気込み

■日本の現状認識

 「はっきり言って日本は衰退している。このままではGDPはドイツに抜かれて世界4位に転落し、早晩インドにも抜かれる。厳しい国際情勢の中で経済の低迷は、日本の国際社会における影響力が低下することを意味する。なぜ日本の衰退が止まらないのか、立ち止まって考えるときが来ている。

 日本の衰退の理由は社会全体に漂う閉塞感であり、ダイナミズムの不足だ。世界のトップ企業50社の中に、日本企業は1社しかいない。戦後の高度成長はホンダやソニーなど町工場から出発し、世界を制覇した企業が牽引した。しかしこの30年、そうした企業が出てこない。個人で見れば世界で活躍する日本人は増えている。

 優秀で勤勉な日本人がたくさんいるのに、世界を相手に勝負できる企業が出てこない。その最大の理由は、日本全体が自信を失う中で、出る杭を打つ風潮が強まり、できるだけ目立たず、周りと同じように生きた方が叩かれない、失敗しない、そんな窮屈な生き方をさせてしまう社会にあるのではないか。

 私は出る杭を伸ばす、失敗を許容する、誰もが再チャレンジできる。そんな寛容の精神とダイナミズムを日本社会に取り戻したい。そうすれば個人の幸せも日本の成長も両立できる。私は覚悟を持ってやるべきことに、やるべきことを断行し、私たち日本人1人1人が未来に明るい展望を持てる国にしたい。誰もが委縮せず、誰かの評価より自分の気持ちに正直に生きられる国にしたい。そして、そのために何よりも優先されるべきは政治に対する国民の信頼の回復だ」

■政治改革について

 「日本が危機的な状況にある中で、今回の政治資金問題が起き、自民党は信頼を失った。今回の政治資金問題こそ古い自民党の象徴だ。この古い自民党を終わらせるために、私が総理になって最初に着手するのは、みなさんからの共感を取り戻すための政治改革。まず、政治資金の透明化を徹底する。先の通常国会で政治資金規正法の改正法が成立し、政治資金問題の再発防止のための措置が導入された。しかし、これだけでは不十分。まず、使途が公開されていない政策活動費は廃止する。

 また、同じく使途が公開されていない旧文通費についても、使途の開示と残金の返納を義務付ける。いずれの改革も与野党を問わず、全ての政治家に影響が及ぶ。しかし、国民の当たり前を実現できなければ、国民の政治に対する信頼を回復することはできない。政治資金の透明化に向けて不退転の覚悟で取り組む。次に、自民党を変える。私が総裁になれば、古い自民党と決別する覚悟だ。まず、政治資金問題の当事者となった議員は、国民への説明責任を果たし、選挙で信任を得るまで要職に起用しない。

 また、総理・総裁になれば、衆議院を解散し、国民の信を問うと申し上げた。不記載議員については、選挙で公認するかどうかは、説明責任を果たしてきたか、再発防止に向けた取り組みを進めているかに基づき、どんな時でも歯を食いしばって、我が党を支えていただいている地方組織や地元有権者の意見などを踏まえて、新執行部において厳正に判断する。人事は、実力主義で行う。いかなるグループからの推薦も受け付けない。能力ある議員が当選回数と関係なく、責任あるポジションに就くことが当たり前の仕組みにする。

 最後に、国会改革も進める。総理や閣僚の国会張り付きをやめる、デジタル化も徹底的に進める。国家公務員の働き方改革も待ったなしだ。志のある優秀な人材が集まる仕組みを整備する。与野党問わず、質問通告の時間遵守を徹底し、国家公務員の深夜残業を減らす。このように政治資金の透明化、自民党改革、国会改革を三位一体で進める。これにより、国民の政治に対する信頼を取り戻し、改革を断行できる政治に転換する。政治改革を実現した上で、日本の経済社会にダイナミズムを取り戻すための改革を進める。日本から新しい産業が次々と生まれ、賃金が上がり、生活が豊かになる。

 また、人生の選択肢が増え、自分らしい生き方ができるようになる。そんな未来を作るため、聖域なき規制改革の断行と、1人1人の人生の選択肢の拡大の2つをスピードを上げて取り組む。まず、聖域なき規制改革だ。今、日本全国で深刻な人手不足が起きている。その一つの原因は、大企業にヒト・モノ・カネが集中し、スタートアップや中小・小規模事業者に流れなくなっていること。大企業に眠る豊富な資金・人材・技術を解放し、スタートアップや中小企業に流れ、スタートアップが既存企業と公平に競争できる環境を整備しなければならない。

 この30年間、日本から世界で勝負する企業が出ないのも、既存企業が既得権益を守るため、新規参入を阻もうとしているからで、この現状を打破するには、聖域なき規制改革が不可欠だ。その象徴がライドシェア。誰もがいつでもどこでも安全に利便性の高い移動サービスを享受できるよう、ライドシェアを完全解禁する。もう一つは労働市場改革だ。テクノロジーの進化の加速で、これだけ変化が激しい時代に、新卒で入社した企業で定年まで働く昭和の終身雇用モデルは通用しなくなっている。働く人の賃金が上がらない根本的な理由も、優秀な人材が成長分野に流れていかないことにある。出番さえあれば、能力や個性を発揮できる人をベンチで座らせておく、試合に使わない、今の日本に1人の人材もおろそかにする余裕はない。社会全体で新しい分野のスタートアップや中小企業に人材が流れていく仕組みを作ることこそ、究極の成長戦略。

 岸田政権でもリスキリング支援、ジョブ型人事の導入、労働移動の円滑化など、労働市場改革に取り組んで来た。しかし、現在の改革は本丸部分が抜け落ちている。それが解雇規制の見直しだ。解雇規制は今まで何年、何十年も議論されてきた。現在の解雇規制は、昭和の高度成長期に確立された裁判所の判例を労働法に明記したもので、大企業については解雇を容易に許さず、企業の中での配置転換を促進してきた。一方、今では働く人のマインドも大きく変わり、転職も当たり前になってきている。社会の変化も踏まえて、働く人が、業績が悪くなった企業や居心地の悪い職場に縛り付けられる今の制度から、新しい成長分野や、より自分に合った職場で活躍することを応援する制度に変える。

 こうした観点から、日本経済のダイナミズムを取り戻すために不可欠な労働市場改革の本丸である解雇規制の見直しに挑みたいと思う。まず、大企業で働く人には、いつでもリスキリングや学び直しの機会が与えられるよう、職業訓練制度を見直す。働く人は誰でも新しい成長分野に移動できるよう、リスキリングや学び直し、これが受けられる環境を整備する。その上で、企業が解雇を検討せざるを得ない状況になった場合、働く人が自分らしく働くことのできない職場にとどまり続けるより、企業にリスキリング・学び直しと再就職支援を義務付けることで、前向きに成長分野へ移ることのできる制度を構想したい。こうした労働市場改革を進めれば、大企業に眠る人材が動き出し、スタートアップや中小企業に人が流れやすくなる。これを機に、スタートアップが劇的に拡大する仕組みも整備する。そして、日本経済のダイナミズムを復活させる」

■人生の選択肢の拡大

 「結婚後も働くことが当たり前になる中、主に女性から結婚後の改姓に伴う負担やリスクが大きく、選択的夫婦別姓を認めてほしいという声が多く出ています。経済界も早急な対応を求めている。最近の世論調査をみれば、選択制であれば別姓という選択肢を認めてよいのではないかという意見が増えている。選択的夫婦別姓を導入するためには、国民のみなさんの支持と、理解が必要であることはいうまでもない。また、家族のあり方は時代によって変化するということも忘れてはならない。

 江戸時代には一般には氏の使用は許されていなかった。明治9年から31年までは夫婦別姓制度が導入されていた。そして、現在の夫婦同姓制度は明治31年、1898年の民法改正で導入され、120年余り続いてきた。この120年間の家族のあり方も、3世代同居から核家族、単身世帯の増加、このように大きく変化してきた。生まれた時に、親から付けてもらった名前を守りたい、選びたい。そんな1人1人の願いを聞かず、議論を続けて30年。もう議論ではなく、決着をつけるときではないか。私が総理になったら、選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的な議論を進めます。国会で議論を尽くし、30年以上議論を続けてきたこの問題に決着をつけ、1人1人の人生の選択肢を拡大する。

 次に、誰もがいつでも自分の希望に応じて働くことができるようにする。働いている方の中には、フルタイムで働くのは難しくても、柔軟な働き方ができるなら、もっと働きたいと思っている方がたくさんいる。また、フルタイムで働いている方の中にも、もっと自分に合った働き方をしたいと思っている方も多くいる。中小企業の経営者からは、年末になると年収の壁があることで、パートの人が休んでしまう、そんな悲鳴が上がっている。パートで働いている方も、できればもっと働きたいと思っている方もいる。そこで、働いても手取りが下がる年収の壁を撤廃する。

 そのための第1弾として、まずは働いている方には、原則厚生年金が適用されるように制度を見直す。労働時間規制の緩和も検討する。労働者の働き過ぎを防ぎ、健康を守ることは当然のことだが、現在の残業時間の規制は、原則として月45時間が上限になっていて、企業からも働く人からも、もっと柔軟に働けるようにしてほしいという切実な声が上がっている。1人1人の人生の選択肢を拡大する観点から、残業時間規制を柔軟化することを検討する。私は国民のみなさんの生き方や働き方の変化に合わせて、1人1人の多様な人生、多様な選択肢を支える仕組みを構築したい。

 昭和モデルを前提に構築された様々な制度は成功モデルだったかも知れませんが、令和の今の世の中や家族や働き方の多様化に追いついていないのは明らかだ。1人1人の人生の選択肢を増やすことで、誰もがより自分らしく生き、モチベーション高く働ける社会を作る。そうすれば、人口減少が進む中でも、労働力人口を維持し、生産性も上がっていく。新しい成長モデルの構築を私にやらせてほしい。

■次の80年への挑戦

 「政治改革、規制改革、選択肢の拡大の3つの改革を断行し、日本は変わることができる。3つの改革の先に待っているのは、次の80年を見据えた中長期的な構造改革への挑戦だ。その際、日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しく複雑であることを自覚しなければならない。中国の経済規模は日本の4倍以上となり、軍事予算も公表されているだけで日本の4倍を超える。その中国は南シナ海や東シナ海で危険な挑発を繰り返し、あたかもインド太平洋を中国の海へと変えんばかりの状況だ。その中国に加え、北朝鮮、ロシアという権威主義体制と、3正面で向き合う地政学的ポジション、これが日本の置かれた現実だ。

 日本は戦後、アメリカによる安全保障に依存することで、経済発展を遂げてきた。しかし、アメリカ自身がアメリカファーストの政策を打ち出す傾向を強める中で、我が国には自らの存立、平和と安定は、自分たちの手で守り抜く、そうした気概がますます求められている。世界が米中の新しい冷戦時代に入り、群雄割拠と向かう中で、日本に必要なことは、強い経済を取り戻すこと。そのためには、新しいことにチャレンジすることを社会全体で応援する仕組みを強化しなければならない。

 スタートアップ支援強化、イノベーションを加速するための大学等の見直し、教育制度の抜本改革、こうした構造改革に取り組む。特に教育の抜本改革は不可欠だ。教育は国家の礎であり、1年で改革ができるとは当然思っていないが、AI革命が加速する中で、今の単線的な教育制度では、新しい時代に対応した人材が育成できるとは思えない。私が総理になったら、教育のレールの複線化に向けた教育抜本改革の議論に着手する。私は、インフレと金利がある環境でも持続的に経済が成長できるよう、日本経済の体質強化に力を入れる。

 その上で、まずは物価高の影響を受けている低所得者や中小企業への支援にも取り組む。総理になれば、直ちに経済対策の検討を指示する。強い経済を基盤として、厳しい国際情勢を乗り切るための強い外交、戦略的外交を進める。この厳しい国際情勢を乗り切り、中国・ロシア・北朝鮮といった権威主義体制に毅然と向き合っていくためには、当然のことながら、日本自身の防衛力の強化も加速する。防衛費対GDP比2%を速やかに実現しなければならない。その上で、日本外交の基軸である日米同盟をさらに強化し、レベルアップを図っていく必要がある。同時に、オーストラリアなどの同志国との間でも、安全保障や防衛生産基盤の協力に加えて、通商や経済安全保障面での連携を拡大・深化していく。これらの取り組みを通じて、自由で開かれたインド太平洋、平和と繁栄のインド太平洋のためのネットワークを強化していきたいと思う。

 そして、自由で開かれた国際秩序を守り抜かねばならない。日本自身の防衛力強化、同盟国・同志国との協力拡大、そして強い経済を基盤として、厳しい国際情勢を乗り切るための強い外交、首脳レベルの戦略的外交を進めていく。とりわけ、中国や北朝鮮とは首脳レベルで向き合い、率直な対話をしない限り、現下の諸課題を解決することはできない。私が総理になれば、直接対話にもオープンな姿勢で臨みたいと思う。特に拉致問題の解決は、これ以上先送りできない。これまでと同じアプローチでは何も変わらない。同年代のトップ同士、胸襟を開いて直接向き合う適切な機会を模索していきたいと思う。新しい日本をつくる上で、憲法改正は最優先で取り組む課題だ。

 来年2025年は戦後80年。この間、日本を取り巻く環境は激変した。時代の変化に合わせて、憲法も変わらなければならない。言うまでもなく、現在の憲法は、日本がアメリカに占領されていた1946年にGHQが原案を起草し、日本政府に受け入れを迫ったもの。戦後80年、日本は平和国家として世界の平和と繁栄に貢献してきた。この誇るべき伝統は今後も受け継いでいくべきだ。しかし、同時に憲法の中に、時代にそぐわないものがあれば、自分たちの手で憲法を改正することは当然のことではないか。

 自民党は70年前に憲法改正を実現するために立党された。議論だけを続けて、何も変わらない状態をこれ以上放置することはできない。少なくとも、自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実の4項目は、時代の要請であり、改正しなければならない。私が総理総裁になれば、国会において、憲法論議の推進に全身全霊で臨み、憲法改正発議の環境が整えば、直ちに発議の後、国民投票に移る」

ABEMA NEWS)

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