台風、最近“多発”のワケ 今村予報士に聞く 危険な渦「モンスーンジャイア」が関係
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 台風13号が発生しました。一体なぜ、夏以降に台風がハイペースで発生し続けているのでしょうか?気象予報士・今村涼子さんに聞きました。

【画像】「モンスーンジャイア」が活発だった…2016年と、今年を比較 共通点は?

■“台風発生装置”「モンスーンジャイア」とは?

2024年の台風の発生状況
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 まずは、今年の台風の発生状況です。

 上半期に発生したのは2個だけでしたが、下半期では7月に2個、8月に6個、9月は中旬になったばかりですが、すでに3個の台風が発生しています。

 8月から、ギアが急に上がったように見えます。一体、なぜなのでしょうか?

「モンスーンジャイア」は、直訳すると「季節風の渦」
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今村さん
「8月の台風の連続発生の大きな原因は、台風を発生させやすい危険な渦ができていたからです。それが『モンスーンジャイア』という渦で、日本の南海上にできていました」

 この「モンスーンジャイア」は、直訳すると「季節風の渦」です。この渦が、台風を発生させやすくしているのでしょうか。

今村さん
「そうなんです。ちょっと、いやな渦なんですよね。では、どう渦になるのかを見ていきます。夏になると、日本付近の東側に太平洋高気圧が張り出してきます。太平洋高気圧の縁には、風が吹いています。

さらに、日本の南海上には南西の東南アジア方面から季節風が吹いていて、この季節風と太平洋高気圧の風が相まって、反時計回りの大きな渦ができます。その渦のことをモンスーンジャイアと言います。

大きな反時計回りの渦があると、その中に小さな風の渦ができやすい特徴があります。その中で積乱雲がまとまって渦巻いていく。それで、“台風のタマゴ”がポコポコできてしまう。こうして台風が連続発生しました」

 大きな渦が小さな渦を発生させている“台風発生装置”のような役割を果たしているというわけです。

■毎年発生? 上陸しやすい? またできる?

 では、このモンスーンジャイアは、毎年発生するのでしょうか?

今村さん
「毎年発生するわけではありません。数年に一度活発になる傾向があります。近年ですと、2016年にモンスーンジャイアが活発になりました」

2016年の台風発生状況
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 前回、モンスーンジャイアが発生した2016年の台風発生状況をみてみます。上半期は0個でしたが、下半期だけで計26個の台風が発生しました。

 この台風発生のペースも、モンスーンジャイアの影響なのでしょうか?

今村さん
「そうですよね。2016年は本当に厄介で、いきなり台風が連続発生しました。発生数も多かったのですが上陸数も多く、8月と9月で6個ほど上陸しました。統計開始以降で2番目に多い上陸数でした」

 そうすると、モンスーンジャイアによってできた台風は、他の台風と比べて上陸しやすいのでしょうか?

今村さん
「そういうことはありません。上陸するかしないかは、その時の気圧配置などによります。ですので、上陸しやすいかどうかはあまり関係がありません」

 モンスーンジャイアが発生する条件などは、あるのでしょうか?

今村さん
「それは、まだよく分かっていません。熱帯の海は謎が多く、そこはまだ解明されていません」

 9月11日時点で、モンスーンジャイアはできているのでしょうか?

今村さん
「現在は、弱まって消滅しかけている状況のようです」

 では今年は、モンスーンジャイアはもうできないのでしょうか?

今村さん
「モンスーンジャイアができた年は、その後もしばらく発生しやすい状況が続く傾向があります」

 今年は、またすぐできるかもしれないし、できないかもしれないのですか?

今村さん
「できると思っていたほうがいいかと思います」

■今後は、ハイペースになる?

2016年と2024年の台風発生状況を比較
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 2016年と2024年の台風発生状況を比べると、かなり似ているところがあります。

 上半期のペースが遅く、下半期の夏以降に発生ペースが上っています。2016年を参考にすると、2024年も今後ハイペースになるのでしょうか。

今村さん
「今、台風13号までできています。平年で25個できるとなると、さらに12個程できてもおかしくありません。しかも今年は海水温も高い状態が続いています。発生してそれが発達して近付いてくることは十分に考えられます」

 まだまだ警戒が必要です。

(スーパーJチャンネル「なるほど!ハテナ」2024年9月11日放送)

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