演技派俳優の小野花梨が、暴走気味のSJW誕生の背景を現実味たっぷりに表現。松本優作×藤井道人によるオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』で、ストレスと満たされぬ承認欲求が生んだ“SNS時代の母”を演じている。
【映像】高額な幼児教室をめぐり口論に…リアルな夫婦喧嘩の様子
本ドラマは、過去と現在のそれぞれの事件が繋がり、衝撃的“真実”が明らかになっていく群像サスペンス。2024年の渋谷で起きた凶悪事件を引き金に、週刊誌ライターの主人公・中川碧(福原遥)は、事件の犯人が高校の同級生ではないかと疑う。疎遠になっていたかつての仲間たちと再会し、高校時代のある事件を回想しながら真相へと近づいていく。
第1話で、芸能人による不倫ゴシップ記事に「ありえない!」と匿名でネットに書き込む姿を見せた齋藤風花(小野花梨)。その不穏な後姿は、いびつな形で正義を振りかざすソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(SJW)そのものだった。第2話では、そんな自らのうっぷんをネット上で解消するようになってしまった風花の焦燥が描かれる。
高校時代の仲良しグループの中で、唯一地元に残って結婚した風花。しかし夫の家業である伝統工芸は不景気で、愛娘の教育方針でも夫・光一(和田正人)と衝突してしまう。3歳までの教育で子どもの将来は決まると信じて譲らない風花は、幼稚園受験を目指す高額な幼児教室に入れたいと望む。だが光一は高額な月謝に難色を示し「子どもはのびのび育てるべき」と取り合ってくれない。追い打ちをかける様に、義母からも「子どもはのびのびと育てたほうがいい」とやんわりと否定されてしまう。
夫や義母から頭ごなしに否定され、孤立無援状態の風花。そんな彼女の唯一の心の支えは愛娘の望だ。寝顔をスマホで撮影して「今日も天使」とSNSに投稿する。
しかし風花は本当に愛娘・望の将来の事だけを思って高額な幼児教室に通わせようとしているのか?夫・光一に説明する際に風花の口から出た「こんな田舎でちゃんとできん」「東京の子たちは…」という言葉は都会コンプレックスの塊だ。東京で生活する友人たちと比べて、田舎で暮らす自らを卑下しているだけのように聞こえる。
SNSへの娘の寝顔投稿も、風花は顔出しリスクという危険性を全く理解していない。もしくは危険性を度外視してまでも自らの存在を外の世界に周知したいという欲望の表れか。どちらにしても、これでは娘が母親としての承認欲求を満たす単なる道具になってしまっている。
風花が望に時折見せる、育児に疲弊したかのような困惑の表情。焦燥に似たコンプレックスとストレスが、風花の感情を四角い画面の中に向かわせてしまうのか。“SNS時代が生んだ母”を他人事とは言い切れない怖さとリアリティの詰まった回だ。