先月、総務省は日本の完全失業者数が約188万人と、4カ月連続で増加したと発表した。働きたくても働けない人が増える一方、YouTubeなどでは「無職生活」を発信する人も増えているという。新卒で入った銀行を5年半で辞め、現在はYouTubeやXで発信を続けるアカウント名・無職さんも、その一人。山奥に家賃ゼロの古民家を見つけて生活、自由で開放的な生活を過ごす「選択的無職」を続けている。
【映像】山奥で1人のんびり 無職さんの“働かない生活”の実態
そんな無職さんには否定的な声もある中、一時的に離職して生活を立て直したり、人生を見つめ直したりする「キャリアブレイク」という考え方も浸透し始めているという。『ABEMA Prime』では、あえて働くことから距離を取ることの意義、その必要性について当事者を交えて考えた。
■銀行を辞めた無職さん「お金は欲しいし、贅沢をしたいし、でも働きたくない」
元銀行員の無職さんは、パワハラや重たいノルマなど、よくイメージされるものを理由に退職したわけではない。「割と単調な仕事というか、提供できるものがずっと固定化されていて、何か自分の中に学びとなるものが少なくなってきた。お金のことはなんとかなる気がしていたので、若いうちに思い切って辞めてみた」と、選択的無職の道を選んだ。退職直後は梅田で一人暮らしをしていたが、収入がないまま家賃を払い続けていては、いずれ生活が続かないとし、山奥に家賃ゼロの古民家を見つけて移住、今に至る。
家賃ゼロとはいえ、質素で倹約した生活を送りたいわけではない。1カ月の生活費は約10万円。配信などで得た収益と蓄えで生活しているため、完全に“無職”というわけでもないが、「この暮らしを永続的にできる方法を模索している段階。お金は欲しいし、贅沢をしたいし、でも働きたくないという状態。この生き方が楽しいというより、つらいことをいかに少なくできるか。結構ディフェンシブな生き方だ。配信は時間の割に入ってくるものがないので、すごくしんどいし正直、採算が合わない」と自己分析した。
■一時的に働くことから離脱「キャリアブレイク」
働かない期間があること後ろ向きに捉える風潮もある日本だが、欧米などでは一時的に離職・休職し、働くことから離れる「キャリアブレイク」は一般的な概念だ。その過ごし方は旅、留学、自主的な挑戦、勉強・トレーニング、休養・療養、出産・子育て、家族のケアなど様々だ。キャリアブレイク研究所の代表理事を務める北野貴大氏は「キャリアブレイクの最初は休憩で、ゆっくりする時間もありながら、時間があると何かやりたくなってくる。そこから活力を取り戻して、もう1回いい転機にしていく事例がすごく表に出てきて、肯定的に捉えられるようになった」と、現状を伝えた。
いざ働き始めたら、なかなか長期の休みも取りにくいという雰囲気も根強い中、お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実も個人的な都合で、過去に4カ月ほど無職状態になったことがある。「(給料は)歩合制なので、全くの無収入だった。多くの日本人は普通に高校・大学を卒業したら誰もが何かしらの仕事に就く。日本人は真面目だから当たり前のようにやってきているが、僕の休んだ4カ月は一旦、人生の体制を整えるというか、何かついてきた癖みたいなものを落とす意味でも、割といい時間だったと思うし、転職するプロセスとしてはすごくいい気がした」と実体験を語った。これには北野氏も「体制を整え直すというフレーズはすごくいい。活動休止というかキャリアブレイクは最初に不安が多いと思うが、少しずつその意味を作ったりその過程で体制を立て直すタイプの人は確かにたくさんいる」と加えた。
■キャリアブレイクから再就職、採用担当者の声
「キャリアブレイク」という言葉が浸透しつつあるものの、やはり働かない期間を空白「ブランク」と取られてしまう不安はつきまとう。実際、一度働かなくなった人が再就職するハードルはどれほどのものか。「ミライのお仕事」が採用者へ実施したアンケートによれば、無職期間が6カ月以上あっても「気にしない」と答えた人が47.1%と約半数だった。逆に「気にする」と答えた人は「1日」で5.9%、「3カ月以上」で8.8%、「6カ月以上」で38.2%だった。
北野氏は、キャリアブレイクとした期間の過ごし方によって、その後の再就職にも影響が出るという。「実際にキャリアのブランクがあって、メンタルが全然回復してないのにもう1回就職した人がうまく働けなかったところを会社側が見ると、ブランクがあった人はまた失敗する、また同じことを繰り返すと思ってしまう人が一定数いるのはわかる。ただ、いい状態でキャリアブレイクを過ごすと、ブランクがあっても自信を持って転職の採用面接に行ける。どこかで後ろめたさや申し訳ない気持ちを持って期間を過ごすのとでは、面接の時に大きく影響する気がする」と語った。
(『ABEMA Prime』より)
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