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【映像】リリース寸前で断念したマッチングアプリ「シンダー」
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 昨年10月、ある大学生が作りかけたマッチングアプリが、SNS上で話題になった。大学内の友だちが彼氏、彼女が欲しいと言っている、さらには自分の出会いも増やしたいと、大学内限定で使えるアプリを開発したshoheiさんは、学園祭に合わせてリリースを目指していたが、開催1週間前にして断念した。「出会い系サイト規制法」に抵触する恐れがあったからだ。shoheiさんは、周囲の大人から指摘され調べ直したところ、作ったアプリが法律に準じていないと判断。逮捕されては一大事と、リリースを諦めた。

【映像】リリース寸前で断念したマッチングアプリ「シンダー」

 この出会い系サイト規制法は児童買春などを防止するため2003年に施行されたもので、マッチングアプリの事業者には、都道府県の警察署への届け出、利用者の年齢確認などの義務が生じる。ただこの法ができてから20年以上が経過した今でも、不適切な出会いを防げていないものはいくつもある。『ABEMA Prime』ではshoheiさん、さらに出会い系サイト・アプリに詳しい弁護士とともに、出会い系サイト規制法について考えた。

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■大学内限定の出会いアプリも「ドンピシャな法律があった」と断念

 shoheiさんは、何か商売としてアプリを展開するつもりもなく、大学に通う人々の出会いを増やしたい思いから、開発を目指していた。「他のマッチングアプリはちょっと怖いという印象を持つ人がいるかなと思った。大学内でやれば学籍番号とかでも認証ができるし、同じ大学ならそんなに変なこともしないだろうと思った」と、学園祭のタイミングに合わせてアプリ「シンダー」を作り上げ、協賛金を払ってパンフレットに広告まで出していたが「法律をもう一回、見ておいた方がいいのではと言われて調べたら、出会い系サイト規制法というドンピシャなものが出てきた」という。アプリの目的としては、男女の出会いを意図したものではなく、サークルのメンバー募集や趣味の合う友だちなど、何でも募集できるものを目指していたが、やはり男女間の出会いに関する部分が引っかかり、リリースを諦めた。

 出会い系サイト・アプリに詳しい弁護士の中川浩英氏は、この出会い系サイト規制法について「ネットを使って男女が出会う時に一定の規制を施している。目的としては児童を守るためがメイン。いわゆる性的な犯罪や売春に巻き込まれるのを防止するもので、届け出や年齢確認の義務があり、それを破った時の罰則などがある」と説明。また、今回shoheiさんが作った「シンダー」については、法に抵触する可能性があるとした。

 重視されるのは、サービス内の実態だ。サイト・アプリの中には、入り口で必ずしも男女の出会いを謳っていないものもある。シンダーを例にすれば「大学の友だちが出会うものとして提供すると言っても、実際にどう使われているか、99%男女の出会いで異性を紹介しているとなれば、法の対象になる可能性は十分にある」。また児童を守る法であれば、成人である大学生限定であれば問題なさそうにも思えるが「未成年というのをどう判断するか。いずれにせよ男女の出会いを促進していれば、規制対象になってくる」と加えた。

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■法に抜け道…同性なら出会い系サイトに規制なし?

 ところが出会い系サイト規制法には、いくつもの“抜け道”があると中川氏は指摘する。法では対象を「異性交際」に限定していることで、同性は対象外。LGBTQのケースは対象ではなく、届け出も不要になっている。また18歳以上なら利用可能なサービスにおいても、未成年者が紛れる可能性は払拭できていない。また、出会いを目的としないSNSにおいては、青少年インターネット環境整備法という別の法律がある。これは携帯電話の事業者に対して青少年に販売する場合には原則フィルタリングサービスを提供することを義務付けているが、LINEであれば12歳以上推奨(18歳未満は一部接続制限あり)、XやFacebook、Instagram、TikTokは13歳以上とされ、未成年の利用は防げていない。

 中川氏は、出会い系サイト規制法によってプラットフォームを使った児童買春が行われる可能性は減っているというものの、男女の出会いを目的としていないSNSで同様の行為が起きている実態もあると指摘する。大学生のshoheiさんも「InstagramのDMで、とかは結構聞くような話」と、日常的に起きているようだ。プラットフォーム側の規制について中川氏は「結局、今は自主規制。プラットフォームが自分たちでやるしかないが、ビジネス的にはマイナス。登録者数が見てもらえる人が減る。そこが法律が必要な理由」と述べた。

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■性被害に遭っていても自覚がない児童

 法によって児童を性被害から守るべく、法の制定や自主規制が模索される中、実際に売春が起きる理由は、一般的なイメージと異なるものも多いという。中川氏は「児童の方が何か性被害に遭いました、という時に通常イメージするのは無理やり襲われた、嫌がっているのにされたとかだと思うが、意外にそうではない。売春は最たるもので『お金を払ってくれたらいいよ』と自分の意思で落ちている。この子の今後の健全な発展・育成にはよくないと第三者が規制している。気軽にお小遣いが欲しいから、ここに登録して、求めに応じてお金をもらってしちゃいました、みたいなことが結構多い」と語った。さらには「お金をもらうなりの関係を持った時、本人ではなくて親が気づいて通報するパターンが多い。本人は被害者という認識がないというケースが多く、これをどういう形で可視化するのか、という議論がある」と、本人が性被害に遭っているという自覚がない問題を指摘していた。
(『ABEMA Prime』より)
 

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