現地11月5日に投開票される米大統領選の世論調査で、トランプ前大統領がハリス副大統領を僅差で追い抜いた。トランプ氏はいかにして盛り返しているのか、最新情勢を専門家に聞いた。
トランプ氏はハリス氏に関する明らかなフェイク画像を投稿しているが、トランプ支持者の一定数は信じている可能性があるという。
一方で、トランプ氏の発言が「政治家らしく」なっているとの指摘もある。中絶問題では、全米一律の禁止から、「各州が規制を決めるべきだ」と姿勢を弱めた。ハリケーンの被災地に駆けつけ、「ホワイトハウスよりも良いスタッフを集め、いい仕事をしなければならない」とも発言した。
アメリカ政治が専門の上智大学・前嶋和弘教授は、「本来ならば現地に行く必要はないが、バイデン大統領よりも早く現地に入って、『俺が来たから大丈夫だ』と、ハリケーンを使いながら選挙戦をしている」と指摘する。
勝敗を決する激戦区と言われる7州で、いま一軒一軒家を回る「戸別訪問」が行われている。前嶋氏は「アメリカの戸別訪問は、やみくもに行くわけではない。無党派層の共和党寄りと民主党寄りはどこかと、データで分析している。年収がどれくらいあるか。最近何を買ったか。誰に投票したかを見せてくれる州もある」と語る。
テレビ朝日外報部の中丸徹デスクは、「銃撃事件やテレビ討論会は影響していない」との見方を示す。トランプ氏は「歌手のテイラー・スウィフト氏がトランプ氏への投票を望んでいる」というフェイク画像を、自身のSNSで拡散した。スウィフト氏は後に、ハリス氏支持を表明している。
一方で近ごろのトランプ氏には、「トランプ2.0」と呼ばれる変化が起きているという。「8年前は、政治経験のないビジネスマンが、ワシントンに新たな風を吹き込んだ。しかし4年前にバイデン氏に負け、2年前には中間選挙でトランプ派がかなり落選した。そこから支持者向けの政策だけを打っていても、過半数を取るのは無理と陣営が気づいて、マイルドな方に寄せた」。
とは言っても「支持者を裏切るのもよくない」現状があるため、「よく発言を聞くと、うまいこと選んでいる」そうだ。例として中絶問題がある。「『各州が規制を決めるべきだ』と発言した。自分はイエスかノーか言わないが、州ごとに決めれば、支持者も満足する。福音派も裏切らない範囲で、微妙なバランスをうまく取っている」と解説する。
ハリケーン対応について、中丸氏は過去の事例を振り返る。2005年の「カトリーナ」直撃ではブッシュ大統領の対応が遅く、批判が集中した。反対に2012年の「サンディ」直撃では、オバマ大統領が選挙戦を中断して、現地入りしたことで、再選の一因になったという。「トランプ氏は真っ先に入り、『バイデンやハリスよりも早く入った』と伝えた」。
選挙戦の最終盤には「戸別訪問による地上戦」が行われる。実際に同行したことがある中丸氏は、「運動員がiPadを持ち、そこに全てのデータが出ている。データ上、行っても無駄なところには行かない。反応をiPadに入力すると、それを受けてテレビCMが変わる。ネガティブかポジティブか考えながらCMを打つ」とした。
では、現状どちらに軍配が上がると予想されるのか。「難しいが、データからすればトランプ氏が勝つ可能性が高い。激戦7州の世論調査は、全部トランプ氏が有利。過去2回の選挙では“隠れトランプ”という、世論調査の数字よりトランプ氏に有利に出ていた。今回はデータ自体がトランプ氏有利で、さらに広がると考えるのが自然だ」と説明した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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