20年前と比べて半分に減っている街の本屋。現状を変えるためチェーン店ではない個性的な小売書店、いわゆる「独立系書店」が独自のスタイルを展開している。
■赤字になった月も それでも続ける理由は
愛知県安城市に去年12月にオープンした書店。築80年のわずか7坪の店舗で400冊の本を販売する、その名も「七坪書店」だ。
限られたスペースのため雑誌などは扱わず、独自性のある品ぞろえにし、それが逆に店の強みになっているという。
七坪書店 店主 松崎通彦さん(29)
「ジャンルでいうと、小説、詩、エッセー。短歌、文芸と言われるものに絞って、僕の好みと、よく来てくださるお客さんの好みを意識して、その2つが刺さるような本を選んでいる」
日本出版インフラセンターによると、2023年の全国の書店数は1万918店で、20年前に比べ半分になった。
チェーン店や大型の店舗が姿を消すなか、七坪書店のような個人経営で規模の小さい「独立系書店」と呼ばれる本屋が全国で増加傾向にある。
松崎さん
「(Q.お客さんの好みも把握している?)そうですね。コーヒーや紅茶を出しているので、カウンターでお話するうちに」
売り場の奥に併設したカフェスペースで常連客の好みを聞き、品ぞろえすることで書店自体のファンが増えていったという。
松崎さん
「(Q.経営状況は?)あの手この手でなんとか赤(字)を回避して、そろそろ1年だなという感じです」
開店当初は赤字になった月もあったという。それでも、書店を続ける理由は…。
松崎さん
「本当に(本が)好きだからですね。それしかないですね。どんな時代でもひねくれ者がいるじゃないですか。そういう人が来ていいなと思ってくれれば僕は満足です」
■「住んでいる人主導の面白さ」を書店から
神奈川県小田原市の書店「南十字」では、あるこだわりにより客足を伸ばしている。
南十字 運営メンバー 成川勇也さん(39)
「みんなの生活の中に、もう少し本屋さんが存在できるようにしたいというのが強いです」
小田原出身の成川さんは、高校の同窓生らと3人で書店を始めた。開業資金はクラウドファンディングを活用しおよそ160万円を集めたが、利益がすぐに出ないことを見越し、3人はそれぞれ本業を持ちながら副業として書店経営に乗り出した。
街に文化を発信する施設が少なくなったことから、自らがその担い手になろうと思ったという。店には小田原在住の作家の本をそろえ、地域色を売りにしている。
成川さん
「小田原の人たちは置いてくださいというのも多いので、これはうちにしかない」
これは、市内に住む陶芸家が自主制作した写真集だ。
客
「他の本屋さんにはないような、いい本がラインアップされていて、本の出会いがすごく面白い場所なんです」
開業して2年。イベントなどを通して徐々に地域の本好きが集まる場となり、赤字経営からも脱却したという。
成川さん
「生活に根差した文化みたいな、住んでいる人主導の面白さが町全体で出てきた感じがあります。そこの一端が担えていたらいいです」
■市民の有志が活動、復活も
近年、このような独立系書店が増えているが、実は書店がない「無書店自治体」が多くあるという。
一般財団法人出版文化産業振興財団の調査によると、書店がない自治体は沖縄県、奈良県、長野県で50%を超えていて日本全体でも27.9%に上っている。
こうした状況を受けて、今年3月に経済産業省に設置された「書店振興プロジェクトチーム」は先月、次のような公表をした。
書店振興プロジェクトチーム
「次世代を担う子どもたちは書店を知らず新たな本に遭遇することがない、多様な思考に触れず成長していくことを強く懸念する。ひいては我が国の存立基盤や競争力を大きく左右する。書店は文化の発信拠点であり、国力にも影響を与え得るとし、書店減少の趨勢(すうせい)を変えていかなければならない」
また、東京・狛江市では去年、書店が市からなくなってしまった。ただ、市民の有志が「本屋のある暮らしを取り戻したい」と活動し、それが実を結び、今年の6月に狛江駅直結の商業施設に書店が再び入ることになった。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年11月4日放送分より)