第2次石破政権発足の日である11日、キャスティングボートを握るとみられた国民民主党の玉木代表にスキャンダルが発覚。謝罪に追い込まれる事態となりました。街頭では厳しい声も聞かれましたが、与党との関係にどう影響してくるのでしょうか。
【画像】今後の政策実現どうなる?国民 玉木代表“不倫報道”の影響は 記者解説
国民民主党と自民党との関係性や距離感を見ていきます。
2020年に玉木代表の体制がスタートした国民民主党。「対決より解決」の姿勢を掲げてきました。
2023年度の補正予算案の審議では、国民民主党が求めるガソリン減税の実現に向けて与党との協議が設けられることを受け、政府の予算案に『賛成』に回りました。これは当時、支持率の低下に苦しんでいた岸田政権に結果的に“助け舟”を出す形となりました。
原発政策に関しては、以前は「原発に依存しない社会」を訴えていましたが、ウクライナ侵攻によるエネルギー危機をきっかけに“転換”しました。現在は、停止中の原発の再稼働・建て替え・新規増設など、“原発推進”を鮮明にしており、自民党に近い立場です。国民民主党を電力会社などの労働組合が支援していることも影響していると指摘されています。
今回の衆院選では、「手取りを増やす」として、このような重点政策を掲げていました。
●所得税減税(基礎控除など103万円→178万円に)
●消費税減税 (実質賃金プラスになるまで5%に)
●ガソリン減税 (トリガー条項の凍結解除)
●電気代値下げ (再エネ賦課金の停止)
●社会保険料軽減(3割負担の対象拡大など)
なかでも強く訴えているのが、所得税の支払い義務が生じる年収の最低ラインを103万円から178万円へ引き上げることです。
玉木代表は11日、公明党・斉藤代表と会談。“103万円の壁”を見直すことで一致したとしています。ただ、財源をどうするかについては足並みが揃っていません。斉藤代表は「責任をもって一緒に考えて欲しい」としましたが、これに対し、玉木代表は「そこは与党でしっかり考えて欲しい」としています。
“103万円”のラインをどこまで引き上げるか、財源をどう考えるかなどが今後の焦点になっています。
◆政治部野党キャップ・村上祐子記者に聞きます。
(Q.玉木代表の今回のスキャンダル、国民民主党の党内では、どのように受け止められているのでしょうか)
村上祐子記者
「議員たちの内心は、それぞれ思うところがあるようです。『政策の話とプライベートの話は別だ』といった声が上がる一方で、『こんな時に何をやってくれるんだ』という本音も聞こえてきます。ただ、国民民主党は、“玉木党”とも言われるほどで、玉木さんの顔で引っ張ってきた政党ですし、今回の衆院選大躍進の立役者でもあります。所属議員たちは、怒りを抱きつつも、代わりがいない現状に、ある議員は『いわぬが花だ』と言葉少なです」
(Q.数々の重点政策を掲げるなかで、今後、政策実現への影響は出てきそうでしょうか)
村上祐子記者
「玉木さんの武器は、選挙での民意を背景に得た“発信力”と、他党との“交渉力”でした。ただ、今回の報道で、この2つに陰りが出る可能性を指摘する声もあります。さらに、立憲民主党と国民民主両党の支持母体である『連合』も、かなりナーバスになっています。ある幹部は「絶対に許されない行動だ」としていて、玉木さんにとって、今回の衆院選での勝利に続いて、来年の夏の参院選での連勝は至上命題ですが、連合との関係性も今後のカギになります」
◆政治部官邸キャップ・千々岩森生記者に聞きます。
(Q.衆院選で躍進し、勢いのあった玉木代表に出てきたスキャンダル。石破政権はどう受け止めていますか)
千々岩森生記者
「石破総理からすると、仮に玉木代表の政治力が弱まっても、石破政権が置かれた状況、つまり過半数に届いていない状況、“玉木さんが頼り”という大きな構図は、何ひとつ変わっていません。国民民主党の28議席の価値が低下するわけでは全くない、引き続き、重要だということです。“103万円の壁”については、今回の件で玉木代表の発言力が下がると、自民側が主導権を握りやすくなる可能性はもちろんあります。一方で、自民党幹部からは『玉木さんは、むしろ成果を上げる必要に迫られる。かえって178万円という数字を譲れなくなってくるのではないか』という見方も出てきています」
(Q.第2次石破内閣、少数与党として厳しい船出となりましたが、立憲民主党・日本維新の会と相次ぎ党首会談を行うなど、異例の国会運営が続いています。今後、石破総理はどう乗り切っていくのでしょうか)
千々岩森生記者
「石破総理が、国民民主だけでなく、立憲や維新とも党首会談したことがまさにポイントです。『国民民主党だけに頼る政権運営は危うい』との見方が自民党執行部内で、じわり広がっているという背景があります。一方で、先を見ると、自民党議員の話を聞くと、石破総理のまま、来年7月の参院選に臨むと考えている人の方が少数です。早ければ、来年春にも石破降ろしが本格化するかもしれない。石破総理としては、まさに“内憂外患”の政権運営が始まるということになると思います」