南米チリで「悪魔の神殿」と呼ばれる宗教団体に入信する“悪魔主義者”が増加しているという。一体、どういうことなのだろうか?
【画像】ろうそくがともる祭壇前で祈りをささげる「悪魔の神殿」の信者たち
■堕落・邪悪の象徴「悪魔」信仰
五芒星が逆さに描かれたタペストリーに、頭蓋骨が飾られた祭壇。南米チリの首都サンティアゴで祈りをささげているのは「悪魔の神殿」という宗教団体だ。
司祭
「サタン、サマエル」
信者
「サタン、サマエル」
司祭
「ルシファー」
信者
「ルシファー」
信者らは、キリスト教で悪魔を表す「サタン」や堕天使「ルシファー」の名を唱えている。
カトリック教徒が多いチリだが、カトリックで堕落・邪悪の象徴である「悪魔」を信仰しているのはなぜなのか?
■数週間で400人入会「TikTokで見つけた」
宗教団体「悪魔の神殿」司祭
「私たちの規約に国の法律に反するものは全くありません。そして人間や猫や動物を生贄(いけにえ)にしようとする宗派でもありません」
彼らは自らを「悪魔崇拝者」と呼んでいるが、実は本来の意味の「悪魔」を崇拝しているわけではない。
キリスト教では悪魔的なものである「快楽」や「自由な生活」を愛することで、「人間らしく生きる」、「人間性を肯定する」宗教なのだという。
この「悪魔の神殿」がチリで設立されたのは2021年。そして今年7月末、チリ法務省に正式に宗教団体の承認を申請した。これをメディアが取り上げると、信者は100人ほどだった「悪魔の神殿」に数週間で400人が入会を申し込んだという。
宗教団体「悪魔の神殿」助祭
「TikTokで『悪魔の神殿』を見つけました。司祭が哲学を話すのを聞いて自分自身の真実を探すことにひかれました」
■カトリック教会への信頼低下から…
「悪魔の神殿」の信者が増加する背景を見ていく。AP通信によると、チリは人口およそ1800万人のうち、およそ半数がカトリック教徒だという。
しかし、カトリック教会への信頼は1996年には77%だったものが2020年には31%にまで激減したという。
この原因として挙げられているのが、聖職者による子どもへの性的虐待だ。AFP通信によると、「2018年、チリで長年にわたり行われていた聖職者による子どもへの性的虐待を隠蔽(いんぺい)していたとして、カトリック教会の司教34人全員が辞意を表明する事態になっていた」という。
また、AP通信は「性的虐待を行った聖職者のほとんどが聖職を剥奪されたものの、有罪判決を受けなかったことも教会への不信を高めた」と伝えている。
■「悪魔の神殿」信者は70万人以上
こうしたカトリックへの不信から神を信じない「悪魔の神殿」に入信する人が増えているという。
ただ、「悪魔の神殿」は実際に悪魔を崇拝しているわけではなく、伝統的な宗教への懐疑や個人主義の象徴を「悪魔」としているにすぎないということだ。
こうした流れはチリに限ったものではなく、BBCによると、2019年にはアメリカで「悪魔の神殿」が宗教団体として認定された。人工中絶を肯定していることから、中絶禁止に反対する人や性的少数者などを中心に、信者は70万人以上になっているということだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年11月12日放送分より)