詐欺電話を掛けてきた偽警察官を「本物の警察官」が撃退。始まりは保険証悪用を語るうその電話でした。
【画像】「録音は全部とらせてもらったから」偽物と本物警察官の緊迫のやりとり 保険証悪用を語る嘘の電話
■「厚労省職員」かたる一本の電話
60代男性
「じゃあ、この電話を切ったら、もう終わりってこと?保険証が利用停止になったうえに、犯罪に使われるような薬を私が入手したことを認めたことになって訴訟が起こされるっていうこと?」
電話を受けたのは、茨城県に住む60代の男性。掛けてきたのは、「厚生労働省保健医療局の重森(しげもり)」と名乗る男です。男性の保険証が悪用されていると伝えてきます。
偽厚労省職員
「場合によっては奥様の健康保険証、ご家族の方の健康保険証も止まってしまう可能性ももちろんあります」
そして厚労省職員をかたる男は、仙台市の警察署に被害届を出す必要があると伝えます。
60代男性
「この電話を今、切っちゃったら…」
偽厚労省職員
「仙台に来ていただきます」
「緊急通報ダイヤルはご用意できますが、無理してかける必要もないですし、強制ではないので」
ただし、男が出してきたのは、「緊急通報ダイヤル」という言葉。それを通じて、被害届を出すように誘導します。
60代男性
「直接、中央警察署に私が電話をして話をするっていうやり方でも結局同じですよね。それを何でわざわざ通報ダイヤルを通して…」
偽厚労省職員
「先ほどもお伝えしたと思うんですが、お電話では被害届を出せないようになっているのはご理解できますか」
やり取りから見えてくるのは、厚労省職員をかたる男が男性に電話を切らせないようにしているということです。
60代男性
「今この電話を切って、その緊急通報ダイヤルにかけて…」
偽厚労省職員
「いや、緊急通報ダイヤルは行政機関のみしか使えないようになっています」
「緊急通報ダイヤル」に電話が転送された後、事態は急転します。
偽警察官
「捜査2課です」
電話口に出たのは警察官を名乗る男。そして男性に代わって話を聞いたのは、通報で駆け付けた「本物の警察官」です。
本物の警察官
「捜査2課で専門は何をやっている?」
偽警察官
「専門というのは?」
本物の警察官
「だますのを専門にしているの?」
偽警察官
「どういうことですか」
■偽物と本物警察官“緊迫のやりとり”
厚労省職員を名乗る男がかたる「緊急通報ダイヤル」。
緊急通報ダイヤル
「ただいま緊急通報ダイヤルを通じて所轄の警察署にお電話を転送しています」
電話が転送されて出てきたのは、「仙台中央警察署捜査2課のクドウ」と名乗る男。もちろん偽物です。
偽警察官
「もしもし~仙台中央警察署です」
「この事情聴取は署で行うものと同じ効力があります。なのでないと思いますが、虚偽の発言や隠蔽(いんぺい)は偽証罪という罪になってしまいますので本当のことだけ話してください。事情聴取っていうのは本来、一対一でしなければならないので、他の人の声が入ってしまうと無効になってしまうんですね。今どなたか他にご在宅ですか」
60代男性
「今は妻だけですね」
偽警察官
「あっ、奥様がいると」
60代男性
「妻もいないほうがいいですか」
ニセ警察官
「そしたら奥様と2人で話伺いたいと思うので」
偽警察官は、電話による事情聴取と称して個人情報を聞き出そうとします。
ただ、その間に男性の妻が機転を利かせ、警察に通報。
駆け付けた本物の警察官が男性と電話をかわります。
本物の警察官
「もう一度お名前、聞いていいですか」
偽警察官
「私、クドウと申します」
本物の警察官
「クドウさん、下の名前は」
偽警察官
「ハジメです」
本物の警察官
「おいくつくらいですか」
偽警察官
「私ですか」
本物の警察官
「うん。教えてください」
偽警察官
「30後半です」
偽の警察官は話している相手が本物の警察官だとは知りません。
本物の警察官
「捜査2課で専門は何をやっている?」
偽警察官
「専門というのは?」
本物の警察官
「だますのを専門にしているの?」
偽警察官
「どういうことですか」
本物の警察官
「仙台中央警察署に確認すれば、録音の記録が残っているってことでいい」
偽警察官
「うん、うん、そうです。どうされました?何なんですか?これ、いたずら電話ですか?」
本物の警察官
「我々からかけてないでしょ。そっちからかかってきて、緊急通報ダイヤルだなんて勝手に言って」
「ひたちなか署の刑事だよ。じゃあね、もうあなたたちの録音は全部とらせてもらったから。ありがとう」
警察庁によると、個人情報を探る予兆電話は去年1年間で13万件以上に上ります。