東京・築地で77年。午前6時30分から行列ができるホルモン丼が名物のお店があります。数々の困難乗り越え、先代から続くこだわりの味を守り続ける夫婦の絆を取材しました。
【画像】70年以上継ぎ足し続ける 八丁みそベースのタレで煮込んだ築地名物牛ホルモン
■創業77年 築地のホルモン丼
400以上もの店舗が軒を連ねる、築地場外市場。外国人観光客も多く訪れ、にぎわいを見せています。
中でも通りで一番の人だかりができていたのが、1947年創業の「きつねや」。目を引くのが、カウンターの目の前で煮えたぎる大鍋です。
70年以上継ぎ足し続ける、八丁味噌ベースのタレでじっくりと煮込まれた牛ホルモン。ご飯の上にたっぷり盛り付ければ、看板メニューの「ホルモン丼」が完成です。
増田紗織アナウンサー
「いただきます。最高においしいです!お味噌とホルモンの甘さがいいバランスで合わさっていて。ホルモンってこんなにやわらかいんだって思いました」
築地の朝の始まりとともに開店の準備を始めたのは、「きつねや」の3代目社長、宇治毅さん(64)と妻の直美さん(63)です。
毅さん
「もうここまで来ると」
直美さん
「40年近くやってる」
毅さん
「しょっちゅうケンカ。ハッハッハ!」
直美さん
「そんな仲良くなんかやってられないです」
通りに味噌の香りが漂い始めると、午前6時半の開店を前に早くもお客さんが列を作っていきます。先頭にいたのは、10年近く通い詰める常連客の佐藤さん。通な頼み方があるようで…。
10年近く通う 佐藤真男さん(69)
「もつ煮込み丼が有名だけど俺は肉豆腐。それとビールをいただく」
午前6時半。明かりが灯り、開店です。カウンターの左端が佐藤さんの特等席。大鍋から立ち上る湯気の香りを浴びながら、肉豆腐をぱくり。そしてビールを流し込む…至福の瞬間です。
その後も絶えない行列。お昼時になると客があふれかえっています。
1日の注文数は400杯ほどに上ります。驚くべきはその提供の速さです。注文を終えてから提供まで、わずか3秒。息ぴったりのコンビネーションで、できる限り客を待たせません。
価格についても、昨今の物価高の中「安く味わってほしい」と値上げを極力控えてきました。
一方で味を守るためのお金は惜しみません。最も大切な大鍋は、100万円以上かけました。
毅さん
「これを探すのだって10年かかりました。いっぱいここにたどり着くまで苦労しましたよね。その都度怒られてばっかり。『また鍋買うの?』『また鍋買うの?』」
直美さん
「何でもいいじゃないと思うけど全然違うんですね、やっぱりね」
毅さん
「そこの意見が食い違うんです」
直美さん
「借金しながら設備投資ばっかりしてきましたから」
時にはぶつかりながら夫婦で店を守ってきましたが、この数年間は逆境の連続でした。
毅さん
「コロナでしょ、コロナの前は火事があったんですよ」
2017年に場外市場を襲った火災。およそ15時間燃え続け7棟が全焼。火元は、店のすぐ近くでした。
■逆境乗り越え 秘伝の味守る
幸いにも、店への延焼は免れましたが…。
毅さん
「火の勢いがこっちに来るなっていうのは、やっぱり恐怖でしたよね」
火災の後も、築地市場の豊洲移転や新型コロナなど多くの苦労に直面しましたが、秘伝の味を夫婦で守り続けてきました。
毅さん
「やっぱり乗り切っていくことはひとつのキーワードかなと思ったんです。娘の婿さんもやってくれているのでね。受け継がなきゃいけないなと思ってるので、そこはもう自分の最後の使命だと思う」
苦難を乗り越える原動力となったのは、夫婦がお互いを思う気持ちでした。
直美さん
「やっぱりどっちかがどっちかになっちゃうと大変なことになっちゃうので、とりあえず協力し合ってやるしかないなぁ」
毅さん
「(Q.奥様はどんな存在ですか?)もうかけがえのない存在ですよ。彼女がいなかったらできなかったし。ね?」
直美さん
「ありがとうございます」
毅さん
「ハッハッハッ!」
(「グッド!モーニング」2024年11月17日放送分より)