今月3日、26年ぶりに日本シリーズを制した横浜DeNAベイスターズ。この時、印象的だったのが、大きく手を振ってファンの声援に応えていた、南場智子オーナーです。日本一の背景にあったのは「ことに向かう」という考えです。

【画像】DeNAが貫く2つの特徴と「やり抜く覚悟」

週1で球場に通い、応援歌も全員分歌え、ファンに愛される球団オーナーとはどのような方なのでしょうか。今回、話を聞くことができました。

まず聞きたかったのは“ビールかけ”についてです。

安藤萌々アナウンサー
「びっくりしました。オーナーの方がビールまみれになっている姿はあまり記憶になくて、えっ南場さん?って」

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「とにかくうれしくて、はしゃぎすぎました。意外とビールって遠くに飛ばす技術が結構大変。すぐ飛ばなくなっちゃうし、もうかけるしかないとか。選手の頭からかけてるうちに瓶が頭に当たっちゃったりして、あっすみませんみたいな。なかなかテクが必要ね」

南場さん自身は外資系のコンサルタント会社を経て、30代の時にDeNAを創業した起業家になります。経団連の副会長も務める経営のプロです。しかし野球に関しては…。

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「野球のこと見てるだけですから。やったことないからね。18.44メートル届かないからね」

「金は出す」「球場に顔も出す」「ただ口は出さない」と言われている南場さん。今年は少しだけ心の持ちようを変化させていました。

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「何を変わったらいいのかなと思った時に、とにかくまずはチームの状況。うまくいってる時は何でうまくいっていて、うまくいってない時はなんでうまくいってないのかっていうのが、まずしっかり今年は理解する年にさせてほしいということで、それをやらせてもらったんですよね。月に1回、監督から詳しく聞いているんですよ。聞いて何か言うわけではないんですよね。ただ状況を聞いて応援するだけ」

安藤萌々アナウンサー
「ファンにならなくても経営だけやることはできるんじゃないか」

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「スポーツは魅力がすさまじくて、それは難しいね」

安藤萌々アナウンサー
「私もスポーツ大好きなので」

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「ちょっと距離をもって冷静にっていうのが、なかなか難しい事業。私あまりに負けず嫌いだし勝ちたいし、負けるとあまりに自分の生活に大きな影響を及ぼすので」

安藤萌々アナウンサー
「チームの負けがってことですか?」

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「そうですそうです。チームの負けが。実は“心の保険”をかける癖がありまして。きょうは相手はこのピッチャーが出てくるのが強いからダメかもね、みたいなことを自分に言い聞かせて心の保険をかけないと、もう生活がグジョグジョになっちゃうんですよ。きょうは(相手の先発)誰誰だからあまり多くは期待しないでみたいな。そうしたら話があると呼び出されて『心に保険をかけるのをやめてくれ。勝てるかもしれないじゃないですか』『勝てますよ!そういう気持ちでオーナーがいなかったらどうするんですか』って言われて。本当に海より深く反省して、きょうから心の保険をかけるのをやめると。それを6月ぐらいかな、宣言をして。最後までどんなにダメそうでも勝てると信じるという約束をして、目をそらさないという約束をして。そこは自分自身が大きく変わって」

ベイスターズと言えば2000年代初頭、とにかく勝てなくて、観客動員数も12球団で最下位だった時がありました。それをDeNAが取得したのが2011年のこと。そこから日本シリーズ出場2回、今年は観客動員数が過去最多の235万を超える、いまや球界を代表する人気球団の一つです。どうやったのでしょうか。

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「私は技術とかプログラミングの達人でも全然ないわけで。それが得意な人に任せますし。それと全く同じで、DeNAの中だと『大胆に任せる』っていうことなんですけど。人材はすごく多様な人材でバラバラな個性を集めた方がいいと思うんですけど。我が社の場合は『こと』に向かうという考え方を全員が一番大事にしていて」

「こと」に向かう。個人や組織のためではなく、目の前の事に集中し取り組めば成果は出るという南場さんの理念です。

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「仕事のやりやすさとか、誰かの機嫌とか、評価とか、ヒエラルキーとかですね。そうではなくて『こと』に向かおうよっていう約束事をすごく大事にして。それが徹底されている環境っていうのと“ストレッチアサイン”と呼んでいるんですけど、ギリギリできるかできないかぐらいの難易度の仕事を任せちゃうっていう。この2つは特徴的なんですよね」

また、このような哲学も。

安藤萌々アナウンサー
「『選んだ選択肢を正しいことにする』っていう経営者としての言葉。仕事ずっとしてたいって思うんですけど、合ってるのかなとか」

横浜DeNAベイスターズ 南場智子オーナー
「会社経営してると、こっちの戦略もこっちの戦略もどっちを選択してもそんなに選択自体の差ってないっていう。迷うくらいだったら、同じくらいいい選択肢なんですよ。みんな同じようなことやって勝つ人と負ける人がいるのは、どれだけそれをしっかりやり抜いたかってことなんだよね。やり抜くには、これが間違ってるかもって思うと、なかなかやり抜けない。もしかしたら、あっちが良かったんじゃないかなとか。じゃなくて、正しい意思決定をしたんだから、信じてできることを全部やろうってやったほうが絶対成功する。いかにしっかり見事に堂々とやるかっていうことによって、そこから出てくる幸せが違ってくると思うけど…なんか悩んでるんですか今?悩んでるならもう私が決めちゃう!」

外部リンク
羽生九段はなぜ「勝率94%」で投了したのか 将棋AIのジレンマ