税金の3原則は「公平・中立・簡素」と言われています。しかし、これらの原則が「年収103万円の壁」の見直しを巡り、迷走の度合いを強めています。与党内で浮上している「分離案」とはどのようなものでしょうか。
【画像】与党内で浮上した103万円の壁「分離案」とは? 専門家「さすがに想定外」
■「分離案」浮上 専門家「さすがに想定外」
茨城県 大井川和彦知事
「財源問題についてきちっと対応するのが、政府の役割ではないか」
先週、知事たちが訴えたのは、減税によって地方の財源が失われるという懸念の声です。
番組による県への取材や知事の発言をまとめたところ、少なくとも35の道府県が財源の課題を心配しています。
壁の引き上げを主張してきた国民民主党は…。
国民民主党 榛葉賀津也幹事長
「財源示されないって、うちは野党なんだから。与党になれっていうのかな、じゃあ」
そんななか、新たな動きがありました。
元国税調査官 松嶋洋税理士
「さすがに想定外ですね」
税理士を驚かせたのは、与党内で浮上した分離案です。
103万円の壁を見直す狙いは、基礎控除を引き上げることで減税し、手取りを増やすこと。この場合、年に7兆円から8兆円の税収が減りますが、このうち4兆円は地方の税収です。
今回出てきた分離案は、所得税の基礎控除のみを引き上げて、住民税は据え置きにするというもの。年収178万円の働き手は、国民民主党の案よりも住民税で年間4万円から5万円を負担し、元々の社会保険料を支払うことになります。
松嶋税理士
「全部認めると税収がまた問題になるから、今度は地方だけは別にしようと」
■「公平・中立・簡素」どこへ…町長も疑問
総額4兆円の減収が見込まれる地方に配慮した分離案。しかし、疑問を呈する町長がいます。
長野・御代田町 小園拓志町長
「税金はできるだけ簡素なシステムであるべきだと、租税の3原則(公平・中立・簡素)の1つの中に入っているんですけど、それがちょっと揺らぐかなと」
長野県御代田町です。住みやすいまちづくりに力を入れ、人口はここ5年で1000人ほど増加しました。壁の引き上げについて町長はこう話します。
小園町長
「国がカバーするんだってことを度外視して、これだけ減るとあのサービスもなくなる、このサービスはできないみたいな議論や発信をしてしまっているのが、アンフェアなんじゃないかなと」
行政サービスに格差が生じないよう、財政格差を小さくするために国が支給する「地方交付税交付金」。この制度が活用できるとしたうえで、こう釘を刺します。
小園町長
「今回だけ急に渋るとすれば、これまでのやり方を完全に覆す話になりますので、大問題になると思います」
■不交付団体には「減収分は補填されない」
一方で、異なる事情がある自治体もあります。
神奈川・海老名市 内野優市長
「海老名市は不交付団体で、その恩恵はありません。減収分については補填されない」
32億円の減収が見込まれる海老名市です。不交付団体は十分な税収があると判断され、地方交付税交付金が交付されない自治体で、今年度は東京都と海老名市など82の市区町村が不交付となっています。
海老名市では、教材費の無償化や修学旅行の補助制度に影響する可能性があるということです。
内野市長
「結果が地方自治体に影響がないようにしてほしい」
(「グッド!モーニング」2024年11月25日放送分より)