岡山県にある町の浄水場から有害性が疑われる物質が検出された問題。25日、住民の血液検査が行われました。なぜ水が汚染されたのか、専門家に聞きました。
【画像】汚染源だと見ている黒いフレコンバッグ 中身は吸着剤として使われる活性炭
■浄水場から“有害物質” 住民に血液検査
住民およそ800人を対象とした血液検査です。費用は公費です。
住民
「もし影響があれば心配なので、家族でみんな来ました」
「検査の結果で今後もし問題があった場合の対処が何かあればいい」
岡山県吉備中央町が公費による血液検査を行うワケ。原因は町内の水です。一つの浄水場から有害性が指摘される物質が検出されたのです。
その物質とはPFAS=有機フッ素化合物。PFASの血液検査が公費で行われるのは全国で初めてです。
■住民不安「何十倍の濃度の水を何年も」
検出された濃度は国が定めた暫定目標値の20倍以上。原因と考えられるのは、近くの資材置き場に置かれていたこの黒いものです。
その正体は?専門家に聞きました。
岡山県吉備中央町の浄水場から、有害性の指摘される有機フッ素化合物=PFASの一種が検出されたと明らかになったのは、去年の10月です。
岡山・吉備中央町 山本雅則町長
「対応が遅れたことは、まずもっておわびを申し上げます」
その濃度は、1リットルあたり1400ナノグラム。国が定めた暫定目標値、50ナノグラムの実に28倍です。
実は2021年の調査、2020年の調査でも暫定目標値を大幅に超える数値が出ていましたが、町は特に対応を取っていませんでした。
しかし今回は、保健所から緊急対応の必要性を指摘されたのです。
浄水場で検出されたPFASの一種は、摂取した場合、発がんやコレステロール値の上昇といった健康被害が出る可能性も指摘されています。
岡山大学大学院 頼藤貴志教授
「出生体重、免疫とかに影響があるのではないかという人間のデータがある。これは疫学的な研究で出ている」
住民
「通常の何十倍の濃度の水を何年間も飲まされて、我々は安心ができない」
「説明は丁寧にしていただいたんですけれども、まったく不安は解消されず」
PFASは人工的に作られた物質で、水や油を弾くため、フライパンや炊飯器、防水スプレーなどに使われてきました。
ただ、今回浄水場から検出されたものは…。
おおさか環農水研 環境研究部
矢吹芳教主幹研究員
「化学物質の規制も進んでいるので、(浄水場で採取されたPFASの一種が)現在使用されているかというと、ほとんど現状としては使用されていない」
■浄水場から“有害物質”原因は?
矢吹研究員ら有識者で作る第三者委員会が汚染源だと見ているのは取水源だったダム近くにある資材置き場。そこにはいくつもの黒いフレコンバッグが置かれていました。
中身は吸着剤として使われる活性炭です。資材置き場を借りていた地元企業が、再利用するため、使用済みの活性炭を全国の企業などから引き取ったものだといいます。
矢吹主幹研究員
「化学物質を使用した場合に、活性炭等で吸着をして除去をする。環境中に排出されないように除去をするということをしているので、そういう用途で使われた可能性はあると思います。活性炭に吸着されていたPFASが雨水によって溶出されて、それが地下に浸透していったと考察はしている」
袋は野ざらしにされていて破損もしています。
矢吹主幹研究員
「適切な保管方法ではなかった。フレコンバッグ自体も寿命があるし、通常なら長期にわたって置かれていることは考えにくい。普通に考えればまれなケース。同じような事例は存じ上げない」