27日夜、東京・文京区の猪口邦子参院議員の自宅で起きた火災。28日朝から消防隊員や捜査員らが入り、実況見分が行われました。
【画像】「風が一番のネックに…」なぜ消火活動難航…猪口議員宅で火災 2人死亡
一夜明けた現場では、猛烈な炎の爪痕が、あらわになっていました。
6階建てマンションの最上階。家族4人が暮らしていた部屋の外壁は黒く焦げ、窓は割れ、窓枠も歪んでいます。
2人が死亡した今回の火災。近所の住民は、助けを求める人の姿を目撃していました。
近隣住民
「実は人影が見えたんです。バルコニーの角に人が手を振って、助けを求めていたのですが、見ていられなくて、そのあとは見ていなかった。2人が逃げまどっている状態でした」
現場のマンションに住んでいた猪口議員。当時、事務所で仕事をしていて不在でした。マンションの防犯カメラには、27日午後5時ごろ、夫と長女が、それぞれ帰宅する姿が映っていました。
国際政治学者を経て、2005年の郵政選挙で政界入りした猪口議員。初当選のあいさつを後ろで見守っていたのが、同じく国際政治学者の夫・孝さん(80)です。東京大学の名誉教授で、故郷、新潟で県立大学の初代学長を務めるなど、足跡を残してきました。
付き合いのあった文京区議会の議長。
文京区議会・白石英行議長
「猪口(邦子)先生と相談する場面もあったが、いつもそこには(孝さんも)同席していた。仕事だけじゃなくて、ご家族も大事にしている」
亡くなった2人は、孝さんと長女とみられ、身元の特定が進められています。
27日午後7時10分ごろ、「焦げ臭いにおいがする」と通報がありました。
通報者
「警察の方とかが来た瞬間に、ぼわっと炎と一緒に出てきた。(Q.警察が到着したのはどのくらいの時間)大体10分くらいなので、午後7時20分くらい。最初は、火は見えなかった」
消防隊が現地に到着し、消火活動が地上からも、屋上からも行われるものの、炎の勢いが収まる様子はありません。
午後9時半すぎ、一旦、炎が収まったかのように見えますが、再び炎が大きく広がりました。
火が消し止められたのは、通報から9時間近く経った、午前4時前のことでした。
なぜ、これほど燃え広がり、消火活動が難航したのか。
近所の人たちからは、こんな声が漏れました。
近隣住民
「消防車が入りにくい場所で火事が起きてしまったので、燃えているところより、だいぶに手前でとまっている」
近隣住民
「こっち側からの放水で、一番奥の窓なんか届かない。もどかしかった」
消防大学校の元教授、冨岡豊彦さん。この地域の防災に携わってきました。地域の抱えていた課題が、迅速な消火活動を阻んだ要因の1つだとみています。
元消防大学校教授・冨岡豊彦氏
「(Q.周辺の道路を見てどうか)道幅は、はしご車が走るのであれば問題ないかもしれないが、いざ、はしご車を使おうとすると“ジャッキ”を出さないといけない。そうなると6メートル50センチぐらいの道幅が必要になる。いま見ているところは、ちょっと厳しい気がする」
マンションの構造的にも消火活動が難しかったようです。
元消防大学校教授・冨岡豊彦氏
「最上階に1世帯で住んでいたので、手すりから建物まで距離がある。消防活動的には、ちょっと難しい判断になる」
さらに、こう指摘します。
元消防大学校教授・冨岡豊彦氏
「この火災の消火の一番の困難性は、風ではないかと思う。消防隊が進入するのに、非常に困難だったと考えられる」
27日は、夜になって強めの風が吹きました。それもマンションのバルコニー側へと吹き込む南西からの風でした。
元消防大学校教授・冨岡豊彦氏
「窓から吹き込んで建物に入る風が、一番、ネックになっていたのでは。玄関側が、どうしても風下になるので。(Q.消火活動では、まず、どこから部屋に入るか)最初は、当然、救助最優先だから、玄関を狙っていく。風によって、すごい熱い熱気がくる。室内が高温になるので、消火活動が難しかったと思う」
現場近くに住む人のなかには、「窓ガラスの割れる音で、火災に気づいた」という人もいます。
元消防大学校教授・冨岡豊彦氏
「フラッシュオーバー(火災が一気に拡大する現象)が起きていると思う。大体、温度にして、800~1000度といわれている。その熱でガラスが割れたのではと推測できる。玄関から入り、どんどん水をかければ、もっと早く消せたと思うが、マンションの火事は本当に熱い。それを消すのは至難の業」
◆鎮火まで9時間近くかかった今回の火災。なぜ、これほどの時間を要したのでしょうか。
冨岡さんは、消火活動に時間を要した要因の一つとして、風を挙げています。
27日夜は、南西から強めの風が吹いていました。部屋の間取り図でみると、玄関がちょうど風下になります。
冨岡さんは「避難者は、まず玄関を目指すため、消防は、玄関付近から救助・消火活動を始める。しかし、今回は、風の影響で玄関近くに熱気がたまり、活動が難航した可能性がある」といいます。
広範囲に焼失している現場から、どのように出火原因を特定していくのか。
冨岡さんは「最も燃えた場所を特定し、そこに出火原因がある場合が多い。例えば、近くに“油性成分(灯油・ガソリン)”の有無などで、火災につながった原因を絞り込んでいく」といいます。