50年以上にわたり、シリアを支配してきたアサド政権の崩壊。今後、世界にどのような影響が出るのでしょうか。外報部長が解説します。
【画像】主の居ない大統領官邸、市民が自由に歩き回り…自撮りも
■喜びと不安の市民 世界への影響は?
親子2代にわたって半世紀余りに及んだアサド政権が崩壊し、多くの市民が喜びを爆発させました。
市民
「本当にすごくうれしいです。アサド政権は私たちを弾圧し、傷つけてきたんです」
アサド大統領はロシアに亡命、主の居ない大統領官邸を市民が自由に歩き回っています。
先月下旬に一気に攻勢をかけた反体制派は、わずか10日あまりで首都ダマスカスを制圧しました。
反体制派「シャーム解放機構」指導者 ジャウラニ氏
「解放された地域では復興にともない、人々はすぐに家に帰れるだろう」
シリア国外に避難している人々からも喜びの声が上がっています。ノルウェー・オスロ中心部の広場には、シリアからの避難民たちが大勢集まっています。
ダマスカス出身
「本当に本当にうれしい。 シリアに戻れるかもしれない」
■アサド政権“崩壊” 世界への影響は?外報部長が解説
また、およそ62万人のシリア難民がいるとされる隣国ヨルダンでは、複雑な心境も聞かれました。
シリアからヨルダンに避難
「確かに帰りたい、安全であればだけど」
まだまだ安全だとは言えない状況だというのです。今後の中東情勢への影響が懸念されます。
テレビ朝日外報部 元カイロ支局長
大平一郎部長
「シリアの混乱は中東のパワーバランスだけでなく、世界情勢にも影響を及ぼす可能性があります」
それにしても、内戦が10年以上も続く中、なぜ電撃的にアサド政権が崩壊したのでしょうか?
大平部長
「シリアの後ろ盾となっているイランやロシアが最後は見限ったのが大きな要因。ロシアは現在、ウクライナとの戦闘激化で手一杯になっている。イランはレバノンの武装組織ヒズボラを支えるので、余裕がない。こういった間隙(かんげき)を縫って反体制派が進撃したということになる」
では、今後の中東情勢はどうなるのか。これまでアサド政権を支援してきたロシア、イランは今後、どう動くのでしょうか?
大平部長
「シリアが戦国時代のような群雄割拠になることが国際社会にとっては最悪のシナリオ。アサド政権と対立してきたのは、今回、首都を制圧した反政府勢力だけではありません。アメリカが支援するクルド人の武装勢力もあり、虎視眈々(こしたんたん)と“アサド後”を狙って勢力拡大を続けている。ロシアは(欧州に影響を与える)海軍基地をシリア国内に持っており、簡単に手放すとは考えづらい。イランもこの劣勢の状況であえて核開発を進めるという、そういった状況になる可能性もあります。こういった中東全体の混乱は、原油価格、そして海上輸送など貿易にも影響が出る可能性も指摘されている」