自殺とみられた事案が一転、殺人事件に。背景には、職場いじめがあったとみられています。
【画像】会社のホームページに「社員同士仲が良い、アットホームな雰囲気」の文言
■“職場いじめ”で殺害か…男らの素顔
去年12月、東京都・板橋区の東武東上線の踏切で起きた死亡事故。一年の時を経て、殺人事件へと急展開しました。
周辺住民
「車は通らない、めったに。びっくりした。自殺か何かだと思っていた」
当時の防犯カメラの映像です。警報機が点滅しています。そして、一台の車が、踏切近くに停車します。その後、遮断機の周辺で、踏切に入るような人影が見えます。
しばらくすると、慌ただしく救急隊や警察が線路内に入る様子も。この時、電車にはねられ死亡したのは、高野修さん(当時56)です。
当初、自殺の可能性が高いとされていた事故。8日、殺人事件となりました。
高野さんが亡くなって1年が過ぎた8日。警視庁は、自殺に見せかけて高野さんを殺害したなどとして、高野さんの元勤務先の代表・佐々木学容疑者(39)ら4人を殺人と監禁容疑で逮捕しました。
亡くなった高野さんと逮捕された4人が働いていたのは、建築塗装工事などを行う会社です。ホームページには、こうあります。
高野さんと逮捕された4人が勤務していた会社のホームページより
「社員同士仲が良い、アットホームな雰囲気」
「協力し合いながら働くことでチームワークの良さが仕事の質に反映されています」
会社の近隣住民
「(逮捕前日の)土曜日の夕方6時ぐらい、4~5人。仕事から帰ってきたみたいな感じで、普通に話しをしてました。普通に楽しく会話している感じだった」
なぜ4人が逮捕されたのか。ホームページの言葉とは真逆の“職場いじめ”の実態が浮かび上がってきました。
佐々木容疑者を知る人
「見た目はこわもてだから怖いのかなと思っていたけど、あいさつするとフランク。家の前でキャッチボールしている。お父さんと子どもだけでも」
「(Q.子どもは4人?)うん」
■殺人容疑で4人逮捕…自殺を強要か
事件直前の5人の動きが分かってきました。
逮捕された4人は、高野さんの住むアパートに午後10時ごろ集まります。
一時間半ほど過ぎた午後11時40分ごろ、被害者を車に乗せ4キロほど離れた橋に向かいます。捜査関係者への取材で、野崎容疑者らが高野さんを橋から川に飛び込ませようとして、断られていたことが分かりました。
野崎容疑者のスマートフォンには、自らこうつぶやく動画が残されていました。
押収された野崎容疑者のスマホから
「川が嫌みたいだから、踏切に行きたいんだって」
野崎容疑者宅の近隣で働く人
「見た目はちょっといかつい感じ。イヌ好きでした。毎朝(外に)出してトイレさせて、家に持って帰って。自分はそれから仕事に行くから。イヌにはまめでした」
その後、亡くなった高野さんと容疑者らは、2台の車で4キロほど離れた踏切に向かいます。
その踏切で、高野さんを自殺に見せかけて踏切内に入らせ、電車と衝突させて殺害した疑いなどがもたれています。
高野さんの遺書は見つかっていません。
なぜ高野さんは、そこまで追い込まれたでしょうか。4人が暴力や脅迫で、支配する状況が分かってきました。
■少なくとも3年前から…高野さんを標的とした“いじめ”
東京都・板橋区の踏切で起きた自殺強要殺人事件。逮捕された4人が働く会社は、2013年に開業。亡くなった高野さんがこの会社に入社したのは2014年ごろ。6年後に一旦、会社を辞めますが、その半年後に再び入社。そして、事件の起きる1カ月ほど前、再び会社を辞め、生活保護を受給したり、警備員として働いたりしていました。会社が借りたアパートに住んでいたそうです。
被害者の自宅アパートの関係者
「パッと見てもふとんがあるくらいで、家具も何もないような感じ。寝ているだけだったような感じ」
高野さんの仕事が遅いことを理由に、少なくとも3年前から、高野さんを標的としたいじめが始まっていたということです。
逮捕された4人のスマートフォンには、亡くなった高野さんにプロレスの技をかけるなど暴行を加えたりする動画が残っていて、暴力や熱湯をかけるなど日常的にいじめを受けていたとみられています。
また、高野さんには給料が支払われず、弁当などの現物支給だけの時期もあったそうです。
警視庁は日常的ないじめがエスカレートして、殺人事件に至ったとみて調べています。