アサド政権崩壊後、イスラエルが不穏な動きを見せています。その舞台となっているのが「ゴラン高原」です。どれだけ重要な場所なのでしょうか。外報部部長が解説します。
■シリア政権崩壊で“不穏な動き”
独裁的として知られたアサド政権が崩壊し、街はにぎわいを取り戻しました。
市民
「状況は良く、政権崩壊前よりもはるかに良くなりました」
数十万人の死者を出した内戦からシリアは、再建への道を歩みだせるのでしょうか。
アサド政権から反体制派への権力移行は進んでいます。暫定の首相になった反体制派のバシール氏はアサド政権の閣僚も交え、会議を行ったと明かしました。
暫定政府「シリア救国政府」バシール首相
「会議の目的は国家の運営のために、追放された政権の政府の権限をシリア暫定政府に移行することである」
反体制派は複数の組織で構成されていて、安定的な政権移行が行われるかは不透明です。
■ゴラン高原とは?
そんな中、不穏な動きをみせるのがイスラエルです。アサド政権の崩壊以降、シリア国内に100回以上の攻撃を繰り返しているのです。さらに…。
イスラエル ネタニヤフ首相
「我々はイスラエル軍に、シリア側が放棄した陣地を引き取るよう命じた」
イスラエルは、境界を巡りシリアと係争中のゴラン高原で、緩衝地帯に部隊を進めるなどの動きをみせているのです。
ゴラン高原はなぜ重要なのでしょうか?
テレビ朝日外報部 元カイロ支局長
大平一郎部長
「イスラエル側とシリア側、この間にあるのが現在イスラエルが実効支配しているゴラン高原。ピンク色の地域が軍事的な緩衝地帯。国連が兵力を引き離すためにパトロールを行っている」
ゴラン高原はシリアの南西部に位置し、1967年の第3次中東戦争をきっかけにイスラエルが占領しています。
大平部長
「ゴラン高原は非常に重要な水源がある。この水源を守るためにイスラエルは徹底的に守っている。前線基地がある。暗視カメラや機関銃をシリア側に向けて、厳戒態勢が敷かれていた」
ゴラン高原はその名の通り、高台にあって軍事的な要衝だといいます。ではなぜ、国連の監視下にある緩衝地帯にまで入って行ったのでしょうか?
大平部長
「シリアの混乱がイスラエル側に波及しないようにするのが、まず一つ目の目的です。シリアの反体制派の中核になっているのは、国際テロ組織『アルカイダ』をルーツに持つ組織なんです」
大平部長
「イスラエルにとって非常に脅威になります。現在、地上軍を侵入させただけでなく、空からシリア軍が残していった戦闘機や戦車などの兵器を破壊している。反体制派に武器が渡らないように、敵の牙(きば)を今のうちに抜いておこうという意図があると思う」