年明け早々、海外のある動画が物議を醸した。9歳の少女の腕に、アメリカ国旗のタトゥーを入れている動画。どのような経緯で入れることになったのか。タトゥーショップ店員のSosaさんは「彼女は首にドナルド・トランプの肖像を入れたいと言ってきた。私はせめて小さいアメリカ国旗にするよう言った。血や針を見せ、怖がらせて止めさせようとしたけどやめなかった」と答えた。
ショップ側は何度も説得したものの、本人や家族の意思が固く、施術したという。お店があるアメリカ・アリゾナ州は、子どものタトゥーを禁止してはいない。しかし、「倫理的に正しくない」「一生消えないのに、子どもにはまだ早い」「タトゥーショップは断るべき」と、批判の声が殺到。日本ではいまだ、負のイメージが強いタトゥー。海外ではファッションの一部として楽しむ人が多い一方、その対象が子どもとなると、シールやペンで書くタイプでも反対意見が多いのが実情だ。
日本でも子どものファッションをめぐって、様々な考えや価値観が存在する。自営業を営む、足立さんご家族。現在、7歳のアリちゃんの髪は明るい茶髪、4歳のソーイくんの髪は青色と金。そして、2人とも耳にピアスをしている。
2児の父、子どもに髪染め・ピアスを許可している足立さんは「子どもが興味があることを優先させたいので、抵抗なく、髪の毛を染めたり、ピアスを開けたりさせた」と述べた。本人が望んだとはいえ、なんでもやらせていいのか。子どものファッションをどこまで認めるべきか。賛成、反対、それぞれの当事者と『ABEMA Prime』で考えた。
■子どもに髪染め・ピアスを許可する足立さん
足立さんの長女アリちゃん(7歳・小学生)は、4歳で初めて髪を染め、昨年ピアスを2つ開けた。長男ソーイくん(4歳・幼稚園生)は、3歳で初めて髪を染め、昨年ピアスを1つ開けた。許可したきっかけについて、「子どもの興味や経験を最優先させたい。また、僕自身が親に虐待されて、押さえつけられて育った。そういう思いをさせたくないのが第一だ」と語る。
髪染めとピアスをした子どもたちの反応は、「肌感覚で言うと、親が良き理解者であるという肯定感。それが芽生えたのか分からないが、自分のやりたいことを隠さず、素直に言ってくれるようになった気がする」と変化があったという。
学校生活については「批判されたことは今まで一度もない」といい、周りの子どもから「“かわいいといつも言われる”と聞いたことがある。でもピアスは遊ぶ時にちょっと危ない。下の子の幼稚園の先生は、樹脂製に変えるか、絆創膏を貼ってもいいか、と安全性を考えてくれる。今後もし批判されたとしても、くじけたりする経験はしてほしい。それを自分の力で乗り越えられるようになってほしい」と語った。
子どもたちが中学校に行くようになって、校則で禁止される場合はどうするか。足立さんは「ルールの範囲内で本当はやってほしい。それでは嫌だと主張して、興味が上回るようだったら、子どもの意見を尊重してあげたい。ルールを破ってでも金髪に染めてピアスをつけたまま行きたいと言ったら、多分行かせちゃう。そこで失敗する経験もしてほしい」と答えた。
■現役教師が訴える、なぜダメ?
現役小学校教師、2児の父であるたっくんさんは、子どもの髪染め、ピアスに対して、「負のイメージが根強く、周囲の目は当人ではコントロールできない。攻撃され心に深い傷を負う可能性もある」と否定的な考えだ。
たっくんさんは「ピアスを開けることでしか学べない何かがあるかと言われると、それはどうなのか。まず、集団行動の中でモラルを学び、『大人になったらやりたいことをやる』でいいのではないか」と主張。
足立さんの「子どもの思いを優先したい」は、どう考えればいいのか。「教師だって、その子の個性や考えを尊重しながら、一緒に成長していきたい。もし、私のクラスに足立さんがいたら、仲良くなって、お子さんと一緒にどうやって学校でやりたいことを叶えていくかを共有しながら進むと思う。ただ、仮にせき止められたとしても、もっと広い社会に出たら、それはコントロールできないと感じてしまう」と答えた。
■「幼いうちは、親が影響力を持っている」
両者の話を聞き、城西大学助教の塚越健司氏は「僕は足立さんに近い立場だ」といい、「一回やらせて、学校の反応などを見て子どもは傷ついたりする。ある種、社会の偏見を一回受けて、もう一回戦う。多様性という意味でもあるし、その子が強くなる現場だと思う。普通と違うものを認める時、エネルギーがすごくいるけど、取り返しがつかない限り、試行錯誤できる場所を作るのはすばらしいと思う」との見方を示す。
一方で、タレント・ソフトウェアエンジニアの池澤あやかは「幼いうちは、親がすごく影響力を持っていたりする。親の方針もいろいろで『髪を染めている子とあまり付き合ってほしくない』と言い出したり、そういう弊害も出る可能性がある。それはちゃんと教えてあげたほうがいいんじゃないか」とコメント。
保育園の時、親に美容院に連れて行かれて金髪になった経験のある、ギャルタレントのあおちゃんぺは「本人に言う人はいない。私も大きくなって気づいた。その時は何も言われていなかった。私は『モー娘。』が好きだったから、ゴマキみたいで喜んでいた。周りの友達も“すごいね”という感じだったが、大人になってからヤバいと思った」と振り返る。
たっくんさんは、教育者の立場から「本人に言わないのはおっしゃる通りだ。かわいいねと言ってくれているから全肯定かと言われたら、社会の目もある。塚越氏がおっしゃった試行錯誤が、髪を染めて学ばなきゃいけないことなのか。野球をやっていたけど、実はテニスのほうが向いていたという試行錯誤はあると思う。髪を染める、ピアスを開けることは、見た目を気にする年頃の子たちにふさわしいのか考えてしまう」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
この記事の画像一覧





