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埼玉県八潮市の陥没事故は発生から36時間が経過し、被害はさらに拡大しています。運転手の救助作業は、救助隊員の二次災害を防ぐ為に慎重を期す必要があり、運転手の安否が分からないまま、作業は難航しています。また、埼玉県は、陥没の原因となった破損した下水道管の水量を減らすため、広い範囲の住民に洗濯など水の制限を呼び掛けています。
【画像】地下に直径4.75m“大規模”下水道管…さらに拡大した原因は?八潮市・道路陥没
■救助活動中…未明に新たな陥没
29日夕方、半日中断していたクレーンによる救助活動が再開されました。しかし、この時も1時間半ほどで作業は中断。28日よりも救助活動はさらに難航しています。原因は29日未明に起きた一件に関係しているかもしれません。
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通報から15時間が経過した午前1時過ぎ、トラックをクレーンで引き上げる作業が初めて本格化しました。運転席部分は土に埋まっていたため外れてしまったらしく、上がってきたのは荷台部分だけ。宙づり状態になって数秒後、突然、近くに立っていた外食チェーン店の看板が根元から崩れ落ちました。
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夜が明けて確認すると、トラックが落ちた穴のすぐ側にもう1つ大きな穴ができていました。電柱は穴に落ちた状態で直立。信号機が地面に接していることから、穴の深さは信号機の高さ分、約5メートルはありそうです。さらに、穴は拡大していきました。外食チェーン店の看板は1つ目の穴の中に姿が確認でき、2つの穴はつながっているものとみられます。
■新たな陥没「力の均衡崩れた」
なぜ新たな陥没が発生したのか。専門家は、トラックの引き上げ作業が引き金になった可能性を指摘しています。
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芝浦工業大学 稲積真哉教授
「引き上げることで穴の中の力が変わった。微妙なところで力のバランスが保たれていたところが、力がアンバランスになってしまった」
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当時、穴の中はトラックが落ちている事によって保たれていた力の均衡が、引き上げによって崩れてしまいました。さらにこの時、クレーン側にはトラックの荷台分の重量が加わります。これによってクレーンの下の土が穴の方に押し出されることになり、新たな空洞が誕生。これが、二つ目の陥没を引き起こした可能性があると稲積教授は指摘しています。
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芝浦工業大学 稲積真哉教授
「水が高いところから低いところに流れるのと同じように、土も重たいほうから軽いほうに動いてしまう。2つ目の陥没した穴はクレーン側の地盤が陥没した」
■「拡大の可能性否定できない」
さらに、被害拡大の要因は下水道管の大きさにも関係しているかもしれません。中川下水道事務所によると、現場付近の下水道管の太さは直径4.75メートルあり、120万人分の排水を一手に引き受けている存在だといいます。怖いのは、これが今後も続く可能性です。
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埼玉県 大野元裕知事
「昨夜0時ごろから中川水循環センターへの下水の流入量が急激に増加したことから、土砂によって支えられていた部分がせき止められていた下水によって押し流された可能性がある。そのため、今後、陥没が拡大する可能性を否定できない」
下水道に流れる水が増えると、さらなる陥没につながる危険があるといいます。大野知事は使用制限について、より強く協力を求めました。
さらに、2つ目の陥没地点の近くにガス管が走っていることから、半径200メートル以内が警戒区域に指定され、そこに住む約200世帯に避難指示も出されました。
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避難した住民(74)
「だんだん夢うつつで(呼び掛けが)聞こえてきて『え?なに?』ということで。この下はパジャマなんだけど急いできて」
■下水道の使用制限で住民は…
住民らが不安になっているのは“何に”“どこまで”気を付けるべきか分からないことです。
避難した住民(74)
「昨日はお風呂入っていない。おけにためて顔を洗った。できることはそのくらいしかない」
事態の収拾にどれくらいかかるかも不透明です。周辺の飲食店も困惑しています。
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との丸家 殿村竜太郎社長
「水を制限してくれって、どこまで制限すればいいのか。どこの地域が何をやってはだめなのか明確にしてほしい」
その一方で、長期化する場合を想定して、行政にはこんな提案もしたといいます。
との丸家 殿村竜太郎社長
「(避難所と)店舗も近いので、炊き出しとかそういったもので温かい食事を提供することはできるんですか?という連絡はした」
埼玉県は、地下3メートルまでのところに空洞がないか、陥没箇所の西側1.5キロの範囲を調査。調査会社はデータをまとめて解析し、30日には報告したいとしています。
■下水の緊急放流を予定
すでに事故発生から丸一日半が経過しました。トラックの運転席部分は穴の中で土砂に埋もれまま、時間は残酷に過ぎていきます。転落したトラックの運転手は74歳の男性だということが分かっていますが、救助隊員の呼び掛けに応答はなく、容体は不明のままです。
救助の一番の妨げになっているのは、今も現場に流れ混んでいる大量の下水です。それを少しでも減らすため、県は汚水を消毒したうえで、別の河川などへ緊急放流することを検討しています。
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下水道事業管理者 北田健夫氏
「丸形の下水管が上が陥没してなくなっている。半円形の状態になって、そこを流れている。ほぼいっぱいの状態で流れていて流速も速い。救出作業に向かない。緊急放流で少しでも水の勢いを抑え、救出・復旧に良い影響を与えたい」
■腐食で下水道管破損の可能性
今回の道路陥没がなぜ起きたのか、改めてみていきます。
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埼玉県の説明によると、下水道管が何らかの理由で腐食し破損。県は、老朽化や下水に含まれる生ごみなどから硫化水素が発生し、腐食の原因となった可能性を挙げています。破損した部分に土砂が流れ込み、下水によって流れ込んだ土砂が運ばれ、破損した部分にさらに土砂が流れ込んだことで地下に空洞ができ、道路が陥没。最初に空いた穴の直径は約10メートル、深さも10メートルほどとみられます。
■直径4.75m“大規模”下水道管
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これだけの状況になった原因に、下水道管の大きさが考えられます。現場付近の下水道管は直径が4メートル75センチで、現場は下水処理場に近く、市内や近隣の市外からも下水が集まるため、下水道管も巨大になっているということです。
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芝浦工業大学 稲積真哉教授
「大きな下水道管が破損したことで、その体積分の土砂が流れ込み、大きな陥没になった。また、下水道管が深さ10メートルほどの場所に埋められているため、流れ込む土砂も大量になってしまい、大きな穴が開いた」
■進む下水道管の老朽化
日本の他の場所でも道路陥没が起きる可能性はあるのでしょうか。
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国土交通省によると、下水道管が原因で発生した道路の陥没は、2022年度に約2600件発生しています。全国の下水道管の総延長は約49万キロ(2022年度末)。そのうち、耐用年数50年を経過した下水道管は、全体の約7%。2042年度には全体の約40%が老朽化するということです。
■なぜ?耐用年数より早く破損
今回破損した下水道管は、使用開始から42年ということで、耐用年数50年を超えていません。にもかかわらず、破損した原因は何だったのでしょうか。
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芝浦工業大学 稲積真哉教授
「下水道管が埋設された場所はカーブしていた。カーブの内側は生ごみなどの有機物がたまりやすく、硫化水素が発生して、腐食が進行した可能性がある」
また、八潮市はかつて海だった場所で、地盤がやわらかい場所です。
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芝浦工業大学 稲積真哉教授
「軟弱な地盤は地震などの揺れの影響を強く受ける。過酷な環境下で耐用年数より早く破損したか。同じような条件は日本全国にある。道路の陥没はいつどこで起きても不思議ではない」
埼玉県は、応急工事の検討を進め、事故の原因究明をしたいとしています。また、国交省は29日、全国の下水道管理者に対して、今回の陥没事故と同様な箇所の緊急点検を要請しました。