腹が減っては戦ができぬ。コック長がいなければ、アムロたちはどうなっていたことか……。アニメ「機動戦士ガンダム」の中でほんのわずかな登場回数だったにもかかわらず、強い存在感を放っていたキャラクターがいる。それがコック長のタムラ(CV:永井一郎)だ。第16話では“戦力に影響する”とブライト・ノア(CV:鈴置洋孝)に塩不足を必死に訴えるシーンがあった。
【映像】タムラ「塩がないと戦力に影響するぞ!」(5分50秒ごろ~)
ホワイトベースは、地球連邦軍本部との連絡が途絶えた状態で、中央アジアの砂漠を西へと進んでいた。ジオン公国軍の勢力圏内で、約束の日時になってもレビル将軍からの連絡がこない状況で、ホワイトベース艦内の乗組員たちは不安とともに眠気とも戦っていた。
そんな中、タムラは朝食を届けるついでに、「私の不注意です。塩がなくなりますが手に入りませんか?」とブライトにそっと相談を持ちかけた。しかしタイミング悪く、レビル将軍の使者が到着し、会話は中断されてしまった。
その後、ブライトが使者とのやり取りを終えて救護室から出ると、タムラが待っていた。ブライトが「何か?」と用件を尋ねると、タムラは再び塩不足の深刻さを訴えた。しかしブライトは、進路の先にジオンの最強部隊がいるらしいことを理由に「とてもじゃないが手に入らないでしょう」と返答。タムラを諦めさせようとする。それでもタムラは引き下がらず、「塩がないと戦力に影響するぞ」とブライトを説き伏せると、塩湖を経由する進路に変更を実現させた。
目指した湖は500年ごとに東西を振り子のように移動するという特徴を持つ湖で、不運にも目指した先に湖はなく、塩が取れないことがわかるとタムラは絶望してしまう。さらに自分のせいでホワイトベースを危険に晒してしまったことを嘆いた。その後ランバ・ラル隊の襲撃もあったが退けると、移動した湖を追いかけてついに塩湖を発見。「これで塩が取れるぞ!」とタムラは笑顔を取り戻したのだった。
第9話の初登場時、タムラはカイ・シデン(CV:古川登志夫)に「お前の顔色が良すぎんだよ!」と文句を言われたり、アムロ・レイやリュウ・ホセイとの食事内容の違いに不満をぶつけられる場面もあった。また、第33話では食料の買い出しに出かけ、「これで少しは変わったものを食べさせられる」と満足げな姿も描かれている。
戦争を戦い抜くうえで、武器や弾薬の補給が重要なのは言うまでもないが、それと同じくらい「食事」も欠かせない要素だ。タムラの登場回数は少ないが、その役割はブライトと同様に、乗組員の命を預かる重要なもの。縁の下の力持ちであるタムラの存在は、「機動戦士ガンダム」の物語にリアリティを与えるものだった。
なお、タムラの劇場版での階級は中尉となっており、ブライト艦長よりも階級が上となっていた。
アニメ「機動戦士ガンダム」は1979年4月から1980年1月まで放送されたサンライズ制作のロボットアニメで、富野由悠季監督が手掛けた作品。“リアルロボットアニメ”という新ジャンルを開拓し、以後のアニメに多大な影響を与えた。放送当時の視聴率は振るわなかったものの、再放送や劇場版の公開で人気が急上昇すると、「ガンプラ」ブームも生まれるなど空前のヒットに。現在に至るまで数多くのシリーズやスピンオフなどの派生作品が制作され、高い人気を誇る。
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