巨大断層にズレ?メカニズムは…ミャンマーでM7.7 バンコクでは建設中のビル倒壊
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ミャンマーで、現地時間28日午後0時50分ごろ、マグニチュード7.7の地震が発生し、甚大な被害が出ています。

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ミャンマー・マンダレー
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震源に近いマンダレー。現地メディアによりますと、マンダレーでは、レストランが入った建物が倒壊して、4人が閉じ込められている可能性があるそうです。また、イスラム教のモスクでは、礼拝中に地震が発生。建物が倒壊し、中に閉じ込められた人がいて、少なくとも20人が亡くなったとの情報もあります。

ミャンマー・マンダレー
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マンダレー市内にある病院。柱が折れて、建物の一部は崩壊していました。現地メディアは、医師や高齢者など、少なくとも4人が閉じ込められていると報じています。

震源から300キロ以上離れたミャンマー南部の都市でも、懸命な救助活動が続いていました。

ミャンマー国軍
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首都・ネピドーでも寺院に被害が出ました。ミャンマー国軍は、ネピドーを含む6つの地域に緊急事態宣言を出しました。

USGS=アメリカの地質調査所
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USGS=アメリカの地質調査所によりますと、震源は、ミャンマー中部のマンダレー付近。地震の規模を示すマグニチュードは、7.7と推定されています。その数分後にも、同じ地域を震源とするマグニチュード6.4の地震がありました。

その影響は、震源地から1000キロ離れたタイ・バンコクでも出ています。

タイ・バンコク
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バンコクでは、建設中のビルが倒壊しました。タイ当局によりますと、この建設現場では320人の作業員が働いていました。3人が死亡、8人が負傷、117人の行方がわからなくなっています。

バンコクのショッピングモールの外に避難した人のなかには、日本人もいました。

日本人観光客(22)                                                   「気づいたら、床がこうなっていたから地震やと思って、急いで部屋を出た。むっちゃ不安です。いまからどうしたらよいかと思って」

日本人観光客(50)                                                     「(Q.揺れはどのように感じた?)足元から何かせり上がってくる感じ」                            「(Q.旅行先でこういう状況になって?)どうしていいかわからない。途中、日本大使館があったので、情報が得られるかなと思ったら、何も得られず。とりあえずホテルに戻ろうと歩いていた」

タイにある日本大使館によりますと、これまでに日本人の被害は確認されていないということです。

中国・雲南省
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ミャンマーに隣接する中国・雲南省で撮影された地震の瞬間の映像。高層ビルから砂埃が落ちてきて、逃げまどう人たちを捉えていました。中国メディアによりますと、落ちてきたものに当たって、2人が軽傷を負ったという情報があります。

震源となったミャンマーでは、クーデターで軍が実権を握ってから、民主派勢力などとの戦闘が続いています。

ミャンマー国軍のトップ
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国軍記念日の27日は、軍事パレードが行われ、ミャンマー国軍のトップが、12月に総選挙を実施することを強調しています。民意を反映した選挙ができるのかは、不透明な状況でした。

ミャンマー国軍
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そんななかミャンマー国軍は、今回の地震で、外務省を含むいくつもの建物が崩れて、職員ら複数人が死亡したと明らかにしています。

ミャンマー
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そもそもミャンマーは、比較的、地震活動が活発な地域とされ、大きな地震は珍しくありません。2010年代には、マグニチュード7クラスの地震が、たびたび、起きています。なかにはミャンマー国内で、400以上の建物に被害が出て、74人が亡くなった地震もあります。世界的に有名な仏教遺跡にも被害が出ました。

川崎市に住むミャンマー出身のマへーマーさんは、地震の一報を受けてから何度もミャンマーの家族や友人らに連絡を取っていますが、うまくつながりません。

日本ミャンマー・カルチャーセンター マヘーマ―代表
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日本ミャンマー・カルチャーセンター マヘーマ―代表                               「ネットが、よくない。電話回線が全部壊れちゃった。だめ。連絡がつかない」                                                   「(Q.どなたと連絡つかない?)マンダレー、地震が一番ひどい場所に住んでいる親戚、おばと取れない」

その不安は、連絡がついた知人から送られてくる写真や動画を見るたびに大きくなっていきます。

取材中、マへーマーさんの父親から連絡が来ました。お祈りをしている最中に地震にあったそうです。

ヤンゴンに住むマへーマーさんの父親 
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ヤンゴンに住むマへーマーさんの父親                                          「目が回った。3階建ての家の2階部分にいて揺れを感じた。お祈りして立ちあがったら、フラフラしてきたから座り込んだ。3分くらい揺れを感じた。人生初めての体験です」

おばの安否は、まだわかっていません。

震源地に近いマンダレーに住む知人とも連絡がつきました。いままで経験したことがない揺れだったそうです。

マンダレーに住むテッパイントゥーさん 
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マンダレーに住むテッパイントゥーさん                                     「物が落ちないように周りのものをつかみじっとしていました。そのときお経を唱えたり、叫んだりして恐怖を感じていました」

知り合いも犠牲になったとの話があるといいます。

マンダレーに住むテッパイントゥーさん 
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マンダレーに住むテッパイントゥーさん                               「ライオン2頭の像があって、1頭が地震の影響で倒壊した。近くでごはんを食べていた先生が、下敷きになり死亡したと聞いた」

まだ、ふるさとでの被害の全容も見えない状況にマヘーマーさんは。

日本ミャンマー・カルチャーセンター マヘーマ―代表
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日本ミャンマー・カルチャーセンター マヘーマ―代表                          「ここにいる方たちのことはとても心配。これから復興するために、みんなで助けて合って生きていくしかないので、世界の人々にも日本の皆さんにも、ミャンマーのことを見捨てないでほしい、忘れないでほしい」 

◆地震や地殻変動のメカニズムに詳しい京都大学防災研究所の西村卓也教授に聞きます。    

(Q.今回の地震発生のメカニズムなども含め、どのように分析しますか?)

西村卓也教授
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震源地
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サガイン断層
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西村卓也教授                                                      「ミャンマー周辺は、インド・オーストラリアプレートと、ユーラシアプレートがぶつかる辺りです。西の方では、ヒマラヤ山脈が衝突によってできていますし、ミャンマーからさらに南のインドネシア・スマトラ島では、過去に大きな地震が何度も起こってきました。特に2004年のスマトラ島沖地震も、この2つのプレートの間で起きた地震です。そのミャンマーの中央部のプレートの境界部にサガイン断層という非常に長い活断層があります。地震の規模やメカニズムから、この断層が、今回の地震の震源になったものと思います」

(Q.M7.7という規模の地震は、起こり得る場所だということでしょうか?)

西村卓也教授                                              「そうですね。サガイン断層に沿って、過去にもミャンマーではM7~M8クラスの地震は、何度も起こってきました。この断層は、非常に長い断層で、今回は、その中央部、大体200キロの範囲がずれ動いたといわれています。断層は、“横ずれ”右横にずれるタイプで、断層の長さ200キロというのは、例えば、2024年の能登半島地震の150キロよりも、さらに長い断層で、今回の地震の規模も、能登半島地震以上の規模だったといえることができます」

(Q.震源から遠いバンコクで大きな被害が出ています。直線で1000キロ以上となると、東京から福岡よりも遠い距離にもかかわらず、バンコクで観測した大きな揺れ。これは、どういうことなのでしょうか?)

長周期地震動
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西村卓也教授                                                    「原因として2つくらい考えられます。1つは“長周期地震動”が伝わったということです。今回、地震の規模が大きくて、かつ、震源が浅いので、比較的、ゆっくりとした揺れ。それを長周期地震動といいます。長周期の揺れとは、距離が長くても、比較的、遠くまで届きやすいという性質があります。特に、長周期地震動は、大きな構造物、例えば、高層建築や大きな橋と共振して、被害を及ぼすということが知られています。バンコクは、比較的、高層ビルが多いので、被害が目立っているのはないかと考えられます。もう1つは、バンコク周辺は“揺れが伝わりやすい地域”といえるのではないかと思います。プレートの境界からちょっとタイは離れていますので、日本のような地域ですと、比較的、地震の揺れが減衰しやすいのですが、こういう地域では、揺れが遠くまでより伝わりやすい。また、バンコク周辺は、大きな川の河口付近にあるということで、地盤そのものが緩いということで、このような大きな揺れになったのではないかと思います」

(Q.プレート境界や活断層が多いというのは、日本も似た環境にあるといえると思いますが、どうでしょうか?)

西村卓也教授                                                   「そうですね。M7後半、8に近い地震というのは、日本でも十分、起こり得る地震ですし、この長周期地震動に関しても、東日本大震災で、東京や大阪の高層ビルが長く揺れたということも記憶にある方もいるかと思います。そういうことが日本でも起こり得るということで、震源から1000キロ離れたところでも大きな被害が出る可能性がある。将来、南海トラフ地震などでも、東京で超高層ビルに大きな被害が出る可能性があるということを、しっかり教訓として得ておきたいと思っています」

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