“夢の電池”リストラ騒動急転 「最善の方法」経営陣新方針 社員に説明会【詳細版】
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 “夢の電池”を開発していた企業が突然、全社員にリストラを通告した問題です。先月31日、その退職する期限を迎えましたが、社内では新たな動きも起きていました。

【画像】前CEOが語った"夢の樹脂電池" 日産のレジェンド技術者から転身 会社を立ち上げも去年6月に解任

■「残った社員で経営再建を目指す」社長

現役社員「人生を壊された」
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APB社 現役社員
「言っていることが変わりすぎて、思考が追いつかないといいますか。これまで関わってきた従業員全員の人生を壊された思いでいっぱい」

現役社員「青天のへきれき」
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APB社 現役社員
「(給与が)4カ月未払いとなっている。私も青天のへきれきのような状態」

世界初・次世代電池の開発会社でリストラ騒動
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 先月、番組が報じた世界初となる次世代電池の開発している会社で起きているリストラ騒動。経営陣は、3月末までに退職勧奨に応じなかった社員は全員解雇すると通告していましたが、先月31日に一転して新たな方針を打ち出しました。

社長「民事再生の道を探る」
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APB社 社長
「皆様には大変申し訳ないんですけれども、正直、力及ばずで、このような顛末(てんまつ)になっております。これについてすべて私の責任ですので、皆様の未払いとなっている給与を含めてですけれども、会社として取り得る最善の方法ということで、今回、民事再生の道を探ることを明確化して推進してまいります」

 「全員解雇」ではなく、「残った社員で経営再建を目指す」と語った社長。急な方針転換の裏には、何があったのでしょうか。

■前CEOが量産化を目指した「全樹脂電池」

APB社 堀江英明前CEO(67)
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APB社 堀江英明前CEO(67)
「まずは社員の方々、本当にこの電池を作るために集まっていただきながら、その生活が根底から脅かされているという大変な状況になっておりまして、非常に懸念をしております」

 先月31日に番組の取材に応じたのは、2018年にAPB社を立ち上げた前CEOの堀江氏です。

日産のレジェンドの1人
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 元々は日産自動車の技術者として、世界初の量産型EV「リーフ」の車載用電池を開発するなど、日産のレジェンド10人に数えられる1人です。

 岸田政権時の経済外交では、中東訪問などにも同行していました。

量産化を目指した「全樹脂電池」
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 そんな堀江氏がAPB社で量産化を目指したのが「全樹脂電池」。従来の2倍の電気をためられるうえに、発火や爆発のリスクが低いという、まさに“夢の電池”です。

■複数の国から接触 軍事的なアプローチ?

「熱暴走を絶対に起こさない電池になる」
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堀江前CEO
「世界で燃えないリチウムイオン電池はこの電池しかないわけですね。つまり、骨格を今までのように金属のように作った電池から樹脂の形に変えることによって、1つはまず燃えない。熱暴走を絶対に起こさない電池になる。非常に安全な電池になる。初めて実現をしたわけで、これは私しか考えつくことがなかったし、だからといって、そのままできるわけじゃなく25年かかったわけです」

 全樹脂電池は世界でも話題となり、複数の国から接触があったといいます。

軍事的なアプローチ?
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堀江前CEO
「明らかにそういった民生用ではなくて、軍事的な用途からのアプローチというのは何回かあったと考えています。他の国からです」
「(Q.軍事的なアプローチ?)軍事的なアプローチだと考えています」
「(Q.どういう接触?)まずは、やはり技術について深く知りたいということですね」
「(Q.他にどんな話?)実際に具体的に何に適用するというお話はここでは申し上げられないんですけれども、これは明らかに兵器そのものに(適用する)ということになりますので。そういった点で情報が外に漏れないように、あるいはそういった(不審な相手との)接触をしないようにというのは、非常にしっかり考えて進めてきたと思います」

堀江氏は去年6月にCEOを解任
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 技術は日本でも高く評価され、経産省が所管する「NEDO」は75億円を、福井県と越前市も合わせて5億円の補助金をAPB社に支出。しかし、2022年にAPB社の筆頭株主が変更されると、経営方針の違いなどから去年6月、堀江氏はCEOを解任されてしまいました。

 その後、APB社は経営状況が悪化し、去年12月から4カ月連続で社員の給与が未払い状態に…。税金も滞納していて、福井県と越前市から今月14日までに、5億円の補助金の返還を求められています。

■未払い給与や5億円補助金 返済方法は?

説明会に出席した現役社員を取材
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 こうした状況に、先月31日の説明会に出席した現役社員はこう話します。

APB社 現役社員
「我々の未払い給与と(5億円の補助金の)返還のどちらが優先度が高いのかという質問に、(社長から)労働債権、未払い給与の方が優先度が高いという回答がありました。ただ、再生をするならば5億円を返す必要があるのではないか。給与も支払って5億円の返還もして、どういう再生の道筋を立てるのか。そういう具体的なプランについては一切、話がありませんでした」

退職勧奨からの方針転換に困惑
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 退職勧奨から突然、「残った社員で民事再生を目指す」と方針転換したことにも困惑しているといいます。

APB社 現役社員
「退職勧奨からの予期せぬ本日の民事再生法に走るという、従業員に対して理解不能な行動をとっている会社で、私は現職として残るつもりはございません」

取材した3人は全員退職を決断
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 番組が取材した3人は全員、退職を決断しました。

APB社 現役社員
「電池に限らずですけれども、世の中に役立つテクノロジーなど、(今後)そういう仕事に就きたいなと思ってはいますが。こういう世界があると知ってしまったのは、私の人生においては、すごく悲しい出来事だなと感じています」

APB社への質問状
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 未払いの給与や5億円の補助金は、どう返済するつもりなのでしょうか。

 番組の取材に対して、APB社の担当者は「回答を差し控えたいと思います」とコメントしています。

(「グッド!モーニング」2025年4月1日放送分より)

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