
クラシック音楽界で“最高の栄誉”と言われる『ベルリンフィルハーモニー管弦楽団』へのソリスト出演。 2025年3月、それを成し遂げた日本人がいます。
13歳のバイオリニストが成し遂げた“音楽界最高の栄誉”HIMARIの挑戦に独占密着


世界最高峰の舞台で大喝采を浴び、地元紙でも「彼女の持つ才能は疑いようがなかった」と評されるなど、バイオリン1本でベルリンを熱狂の渦に巻き込んだのは、HIMARIさん(13)。出場したコンクールは全て1位。現在、アメリカの超名門音楽院『カーティス音楽院』に通う“最年少”の音大生です。

さらに先月、大手レーベル『Decca Classics』との契約も発表。レコーディングを担当したのは、かつて小澤征爾さんとタッグを組み、グラミー賞も受賞した音楽プロデューサーです。
『Decca Classics』音楽プロデューサー ドミニク・ファイフさん
「HIMARIの演奏には言葉がのっているようです。誰かが語りかけるような、歌うような。それが彼女の演奏の魅力で、コンサート聴衆の心をつかむのです。それはたった数人しか持ち得ない才能です」
去年12月、彼女の姿は日本にありました。今やコンサートを開けば、たちまちチケットが売り切れる世界的アーティスト。本番は緊張しないというHIMARIさんですが、ある質問を投げかけると表情に変化が。

バイオリニスト HIMARIさん
(Q.ベルリンフィルってやっぱり緊張する)
「もう今からしているよ。そんなこと聞いちゃダメだよ」
(Q.なんで)
「考えただけで嫌だから」

1882年に設立されたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は世界最高峰のオーケストラ。ヨハネス・ブラームス、アントニン・ドボルザーク、グスタフ・マーラーといった名だたる作曲家が自身の曲を発表する場にしていた超名門です。その定期演奏会にソリストとして招かれるのは、世界最高峰の実力と実績を備えた音楽家のみ。わずか13歳での出演は、約100年ぶりという伝説的快挙と言われています。

『Decca Classics』音楽プロデューサー ドミニク・ファイフさん
「どんな年齢でもベルリンフィルでのデビューは素晴らしいことですが、13歳でデビューというのは並外れています。それは彼女にとっても、日本にとっても歴史的な瞬間ですし、日本人の大きな誇りになるでしょう」
ベルリンフィル代表のエヴァさんは、HIMARIさんをこう語ります。

ベルリンフィルハーモニー管弦楽団代表 エヴァ=マリア・トマジさん
「HIMARIの演奏動画を同僚たちと一緒に聴いたことがありました。その同僚たちも口を合わせて『彼女はベルリンフィルと共演すべき人だ』と。もしソリストとしてベルリンフィルと演奏するなら、もちろん良い演奏をしないといけません。だからこそ彼女を呼んだのです。年齢は関係ありません。もしHIMARIが今23歳だったとしても、変わらず彼女を招待したでしょう。私たちは彼女の年齢ではなく、才能に引かれたのです」

本番4日前、束の間のベルリン観光を楽しむHIMARIさん。
バイオリニスト HIMARIさん
(Q.ドイツに来てみて)
「楽しみと考えるしかない。もう来ちゃったから」
(Q.もうやるしかない)
「多分今からだと何も変わらないだろうし」

移動中、コンサートホールを初めて目にする機会がありました。
バイオリニスト HIMARIさん
「これ?すげえ」
コンサートホールを前に、緊張感が高まります。
この日、特別にドイツでの練習の様子を撮影することができました。

バイオリニスト HIMARIさん
「今まで弾いてきた曲の中で技術的には一番難しい」

今回ベルリンフィルと演奏する『ヴィエニャフスキ バイオリン協奏曲第1番』は超難曲として有名です。
バイオリニスト HIMARIさん
「最初の1音目から、10度といって指を広げないといけない。最後は技術的にめちゃくちゃ速くて、とりあえず弾くのが大変」
難しい曲でベルリンフィルと共演するプレッシャーは計り知れません。

バイオリニスト HIMARIさん
「本当に小さい時からベルリンフィルがすごい存在ということは知っていたし、自分がソリストになれたら『いつかベルリンフィルと弾きたい』というのがずっと夢だった」
小さな頃からの夢にかける想いは熱く、普段は見せない不安も口にしました。

バイオリニスト HIMARIさん
「こんな年齢でベルリンフィルと共演する人があんまりいないから、注目されるのはうれしいけど、演奏は年齢関係なく上手に、ベルリンフィルのソリストとして演奏しないといけないから。良い演奏できるようにというプレッシャーは若干あったんですけど、楽しむしかないと思っています」

初めてベルリンフィルと演奏する日、その表情は決意に満ちていました。
バイオリニスト HIMARIさん
「今日はできるだけ自分の思い通りのテンポで引っ張っていけるよう頑張りたい」
(Q.ベルリンフィルを引っ張ろうと思っているということ)
「ソリストとして舞台に立つわけだから」
非公開で行われたリハーサルが終わると…。
バイオリニスト HIMARIさん
「リハーサルとインタビューの収録が終わりました。リハーサルは前奏からめっちゃ迫力がすごくて圧倒されてたんですけど。課題は見つかったので練習します」
リハーサルは一流の演奏家をも驚かせました。

ベルリンフィルハーモニー管弦楽団代表 エヴァ=マリア・トマジさん
「彼女はよくやったわ。アドバイスをしようと思ったけれど、みんな圧倒されていました。技術を学ぶことで楽器をうまく演奏できる人はたくさんいます。一方で、音楽家は自分の個性を伴って演奏する必要があります。なぜなら自分の演奏で観客を魅了しなければいけないから。ただ楽譜を読むだけではなく、音楽の物語を伝えなければいけないのです。もしソリストとしてオーケストラをリードするなら、なおさら音楽の物語性を伝えなければいけません。HIMARIはそうした音楽の物語性をバイオリンで伝える力があるのです」

そしてコンサート当日。13歳のバイオリニストに、耳の肥えた観客が集まります。

観客
(Q.13歳がベルリンフィルと共演することをどう思うか)
「さっぱり分からない」
「今夜、何が起こるか予測もつかなわいわ」

観客
「あれほど幼い女の子がベルリンフィルと演奏するのは特別なことだね」
「ベルリンフィルのソリストは最高峰でなければならない」



期待が高まるなか、最高峰の舞台で大喝采を浴びたHIMARIさん。13歳にのしかかった重荷が降りて、笑みがこぼれます。

バイオリニスト HIMARIさん
「(配信で)友達が見てくれているはずなんですよ。めっちゃきてる。日本から友達もわざわざこのコンサートのために来てくれて。すごい」
(Q.終わってみて)
「めっちゃ疲れたんですけど、達成感がめっちゃあります。そこに自分がソリストとして立っていることが現実じゃないみたいで。この2カ月間ずっとヴィニヤフスキを朝から晩まで練習していたから開放感がすごいですね。やっと終わるって感じ」
歴史的瞬間を目の当たりにした観客は…。

観客
「びっくりした。こんな若い芸術家がいるなんて。見た目は確かに子どもだけれど、演奏は壮大で素敵でした」
「まるでホールが割れんばかりで非常に熱狂していたよ」
「すごく完璧だった。テクニックと音楽が全部すごく上手で、始めが一番良かった」
「表現豊かでかつ綺麗、でも同時に情緒的でした」
「この年ですでにそういうことができるのがね」
「目を閉じて聞くと、とても感情豊かで美しかったです」
世界的バイオリニストとして一歩を踏み出したHIMARIさん。
バイオリニスト HIMARIさん
「終わってうれしいというより、終わっちゃったという感じ」

夢を1つ叶えた今、彼女はすでに先を見据えていました。
バイオリニスト HIMARIさん
「夢は今回だけじゃなくて、ベルリンフィルに呼ばれるのが、また2回目3回目と呼んでもらえるような演奏を明日も明後日もしたい。あとは共演したいオーケストラは、ベルリンフィルの他にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とか、シカゴ交響楽団とかで。着々と自分の夢が叶っていくのが思っていたより、自分が想像していたより早くて、あまり追いつけてないけど感情が。でも今、色んなオーケストラと弾きたい曲がたくさんあるから、色んな人たちと新しい曲にどんどん挑戦していけたらいいなというのが目標」