
親、子ども、そして孫。3世代が奮闘する親子3代食堂。口げんかが絶えない!?女性ばかりの「かしまし親子3代食堂」。そこには、親子3代が生き残るためのヒントがありました。
【画像】「この子が撮るとおいしそうに見える」Z世代の孫がインスタで宣伝
■「心地いい」ボリュームも満点食堂

茨城県かすみがうら市に、親子3代で営む食堂があります。創業して56年、地元で愛され続ける「せき食堂」です。
実はここ、女将さん・その娘・孫が切り盛りする女性ばかりの親子3代食堂なんです。

メニューは150種類以上。オムライスは2人前のご飯に、2.5個分の卵を使って750円。ご飯大盛りのカレーライスは650円。豚カルビなど、5品のおかずを楽しめる「がっつりセット」は880円です。
ボリューミーでコスパ最強と評判を呼んでます。
常連客
「めちゃくちゃ安い」
「ちょっとない。すげぇな」
「味が10点中10点満点」
さらに、女将さんの人柄もこの食堂が愛される理由です。
常連客
「ママたいしたもんだな」
「気さくでね、それがいい。心地いいですよ」
女将さん、店主の関智恵美さん(65)。その娘・紋子さん(43)です。
突然、女将さんが何かを探し始めました。よく見れば、調味料のふたがありません。誰がなくしたかは定かではありませんが「忘れたころに出てくる」ようです。
紋子さん
「いつもフタがないの。いつも探しているの」

智恵美さん
「このあいだはソースのフタがなくて。ほらっ、ラップ」
「(Q.忘れて一番困ったものは?)お店の財布だね」
「(Q.大丈夫?売り上げ?)それは見つかった」
「(Q.いくら入っていた?)200~300万円?」
どうやら、女将さんはかなりオッチョコチョイな性格のようです。
■創業当時から愛される「名物煮込み」
接客担当は孫の琴子さん(22)。いわゆる「Z世代」。今どきの子ならではの感性で、お店を盛り立てていました。

この日、大量のお弁当の注文が入りました。すると、琴子さんがすかさずスマホで撮影します。実はSNSに写真を上げ、お店の宣伝をしているんです。
紋子さん
「琴子上手だよね。インスタね」
智恵美さん
「この子が撮るとおいしそうに見える」

琴子さん
「イッパイ詰まっているほうが、おいしそうに見える」
この親子3代食堂には、創業当時から代々受け継がれてきた名物グルメがあります。
常連客
「100点満点。この味じゃなきゃダメ」

お店の名物グルメ「もつ煮込み」です。みそ風味ではないところがこのお店の“ミソ”。モツの味付けにはうす口醤油(しょうゆ)とニンニクを。そこに韓国の調味料、ピリ辛でうまみの強いヤンニョンジャンを加え、5時間以上煮込みます。コンニャクは、手でちぎるのがポイントです。
紋子さん
「その方が味が染み込みやすい」
智恵美さん
「お母さんに言われたから、そういうもんなのかな」
そして、ジャガイモとコンニャクを入れ、味がしみ込むまで再び煮込むのです。創業から56年にわたり愛され続けてきた「もつ煮込み」です。
常連客
「うまい、その一言。おいしくて懐かしい。(昔と)同じ味」
■女将を支えた…亡き夫が遺したレシピ
女性ばかりの親子3代食堂が創業したのは1969年。女将さんの両親が始めましたが、25年前に引退。お店を継ぐことを決意した女将さんでしたが、実は料理が苦手で迷ったといいます。それでも…。

智恵美さん
「借金があった。結構、大きな借金。だったら自分で作ったほうが、下手くそでも」

そんな女将さんに協力してくれたのが娘とお孫さん。特に娘の紋子さんは、学校の給食室などで働いていただけに、心強い味方でした。
智恵美さん
「紋子なんて何もしなくても、食べただけで何が入っているか分かる」
「分かっちゃうじゃん。このタレには何が入っているとか。あと(料理が)手早い。本人を目の前にして言わないけど。のぼせちゃうから」
さらに、女将さんを支えた大切なモノがありました。

智恵美さん
「(Q.コレは何ですか?)レシピを亡くなった夫が残してくれた。何度も書き直しているのでボロボロ。コレがなかったら何も作れない」

お店を手伝っていた夫・芳夫さんは病気で他界。42歳の若さでした。夫がレシピを残してくれたからこそ、お店の味を受け継ぐことができたのです。
智恵美さん
「夫が残し、父親と母親が一生懸命残してくれたものをただ継続させてもらっている」
親から子へと受け継がれる親子3代食堂の名物グルメです。
琴子さん
「他の店のもつ絶対食べない。(おばあちゃん)のもつじゃないと」
智恵美さん
「いいこと言っちゃって。コノヤロ」
■常連客「温かみがある」 遠方客に飲み物も

続いては、ピンチがチャンスに変わった親子3代食堂。うわさのお店は群馬県高崎市にあります。創業して59年になる「冨士久食堂」です。
客
「愛知です。おいしかったです」
なんと、愛知県から来たというグループだといいます。すると女将・斉藤政子さん(77)さんが…。

政子さん
「コレどうぞ。飲みながら行ってください」
客
「ありがとうございます」
常連客
「ごちそうさま」

政子さん
「毎日来てくれる」
女将さんは、気さくで親しみやすいと人気者。
常連客
「温かみがある。他の店にはない」
■孫を優しく見守る「お店のアイドルだから」

和洋中なんでもござれの大衆食堂。女将さんを中心に3世代、5人の親族が働いています。

女将さんの息子・英昭さん(54)は厨房(ちゅうぼう)のかなめ、いわば料理長です。人気メニュー、ニンニク多めの自家製ギョーザ。多い日は100人前を焼き上げます。
女将さんの孫・佳奈さん(31)は、1歳の穂乃莉ちゃんを背負いながらお仕事です。厨房にも立つパワフルママ。

佳奈さん
「(Q.大変ですね。お子さん)いい筋トレです」
カナさんの夫・滉他さん(31)。主に麺類を担当しています。
女将さんのもう一人の孫・桃乃さん(29)は、おばあちゃんのアシスタント。

桃乃さん
「失敗したらどうしよう」
政子さん
「失敗は成功のもと」

桃乃さん
「できました」
「おばあはめちゃくちゃ優しい。いる時といない時で活気が違う。お店のアイドルだから」
■“秘伝のタレ”名物どんぶり

この“親子3代食堂”にも名物グルメがあります。それが、創業から59年も愛され続ける「カツ丼」。他とはひと味違うと評判です。
カツは約170グラムもある大きな豚ロースを米油でカラッと揚げています。カツを煮る「割り下」には“あるヒミツ”が。実は門外不出の味なのです。

英昭さん
「丼物のタレ。秘伝のタレ」
「(Q.何年ぐらい?)もうずっと。創業当時から継ぎ足し」
59年間継ぎ足されてきたという“秘伝のタレ”です。醤油や砂糖などを独自にブレンド。1時間以上煮詰めてから、カツオだしを加えています。
秘伝のタレを使った割り下が、他にはない、深い味わい生むカツ丼。甘じょっぱい味がくせになる人気メニューです。
客
「カツ丼はもう最高。肉は厚いし大きい」
「味付けがおいしい」
■入院中の大黒柱 一致団結でのれんを守る

この3世代食堂ができたのは、女将さんが19歳の時。料理人だった夫・昭夫さん(81)と開業しました。長年、二人三脚で歩んできた夫は、今は厨房にいません。
政子さん
「パーキンソン病」

6年前、手足が動かしにくくなる病気を発症した昭夫さん。その後も、椅子に座って厨房に立つ家族を見守り続けました。
息子は秘伝のタレの作り方を伝授されたと言います。
英昭さん
「他食べても同じ味はない。ジイちゃんの味付け。同じように作らないと」
それが1年前…。
佳奈さん
「さびしいですね。この子が産まれる1カ月前に倒れたので。この子も会えていない」

昭夫さんは脳出血で倒れ、いまだ入院しているのです。
政子さん
「入院した時は夜になると泣いていた。(夫に)『早く帰ってきて』と言うと泣くから」

その苦境を知ってか、1年前よりお客さんが1.5倍に増えたこの食堂。
政子さん
「今まで経験したことない。開店待ちなんて。(夫を)もう一回ぐらい家に連れてきて見せてやりたい」
一家の大黒柱が戻ってくるまでのれんを守る。3世代の家族は今まで以上に力を合わせています。