
近年、企業や施設などでイヌやネコではない“ある動物”を飼うケースが増えているそうだ。おととしからその動物を飼い始めたという企業を取材。その魅力について聞いた。
【画像】ヤギ飼い始めてから従業員に少しずつ変化 部署越えた交流生まれ仕事円滑に
■ヤギを飼う企業 従業員のストレス緩和へ

東京から車を走らせおよそ2時間。訪ねたのは、栃木県日光市のある会社。一体ここで、どんな動物を飼育しているのか?
会社の敷地内で飼っていたのは、ヤギのペコちゃんとバンビちゃん。ペコちゃんは食欲旺盛で活発、バンビちゃんはおとなしい性格だという。

1979年に創業した大日光・エンジニアリングは、本社の従業員数はおよそ300人。自動車や医療、宇宙の分野などさまざまな電子機器の開発・製造などを行っている。
なぜ、先端技術を扱う会社がヤギを飼っているのか?
大日光・エンジニアリング 大島健二取締役
「社長が、これからは会社でヤギを飼いましょうと。癒やしも含めてどうでしょうという相談があり、最初はびっくりしたんですが、社長が本気だったので」

無言で長時間、精密作業をすることが多く、従業員のストレス緩和が必要と考えた社長が動物の癒やし効果を調べるなかで、ヤギの効果を耳にし2年前から飼い始めたという。
ヤギの飼育担当
大日光・エンジニアリング
情報システム室 綱川駿さん
「(Q.飼育員の方ですか?)こちらの工場で働いている社員です」

在庫の管理などを行う情報システム室の綱川さんら6人の社員が交代で世話をしているという。
当初はヤギが懐かなくて苦労した綱川さんだが、餌(えさ)やりや散歩を通して触れ合うことで、今ではヤギのほうから近寄ってくるまでに。
綱川さん
「最近は来るだけでメ~メ~鳴いてくれて。やっぱり可愛いですね。癒やされます」

ヤギを飼い始めてから、従業員にも少しずつ変化があらわれているという。
綱川さん
「やっぱり癒やし効果なのか、仕事でイライラすることも少なくなってきました」
大島取締役
「従業員の顔が明るくなったのと、あいさつです。その辺りができるようになりました。以前より、従業員自体が明るくなった気がします」

さらに、ヤギの周りに集まることで部署の垣根を越えた交流が生まれ、仕事が円滑に進むようになったという。
こうしたヤギの癒やし効果が注目されていると、愛知で農場を営む門田まさみ代表は言う。
愛知ヤギ牧場 門田代表
「個人ではない企業や高齢者施設、福祉施設からの問い合わせはかなり増えています。倍以上になった感じです」

そして今、小学校などとの協力も進んでいるという。
門田代表
「近年、小学校で動物飼育がなかなか難しくなってきている現状がありますので。私たちの所に来て、命の大切さ・尊さを学んで帰っていただく取り組みをしています」
■癒やし効果以外にも期待 飼育頭数年々増加

企業や施設がヤギをペットとして飼うことには理由があるようだ。
動物と人の関係を研究している東京農工大学の甲田菜穂子准教授は「ヤギが草を食べている時は、外敵がなく安心している時。人もその様子を見ていると安心感を覚えるのでは」と指摘。地域に気を遣う福祉施設では、ヤギを飼ったことで地域との交流が生まれ、関係が良くなったケースもあったそうだ。

ペットとしてもそうだが、本来の家畜としてのヤギの飼育頭数は年々増えているようだ。農林水産省が去年公表した資料によると、2013年におよそ2万頭だったのが、2020年以降は3万頭を超えていて1.5倍に増加している。
ミルクやチーズ、肉など家畜のイメージがあるヤギだが、実は近年では獣害対策にも期待されている。

兵庫県加東市ではヤギを放牧したところ、飼育場所に畑などを荒らすイノシシが近づかなくなったそうで、一定の効果があるとして獣害に悩む農家にその効果を伝えているという。
ただ、実際に飼うには注意点もあるそうで、愛知ヤギ農場の門田代表よると、次の通り。

・地域の家畜保健衛生所へ届け出が必要
・病気になった際に対応可能な獣医師の確保
・鳴き声で迷惑をかけずに運動できる環境
そのうえで、与えられるのではなく、ヤギに何を与えてあげられるかを考えて飼ってほしいとのことだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年4月17日放送分より)
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