“聖域”コメ交渉カードになるか 売れ行き好調アメリカ産米…議員へ農家から厳しい声
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コメの価格高騰が止まりません。

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日本産とアメリカ産
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東京・千代田区にある店では、いま、日本産とアメリカ産をブレンドしたコメの売れ行きが急速に伸びています。理由は価格。1キロ当たり約600円と、国産米に比べ3割ほど安く販売されています。

米マイスター麹町 福士修三社長
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米マイスター麹町 福士修三社長
「国産米が高すぎるのと数量確保のため、ブレンド米を販売しています。得意先からの要望が多かったので、販売することにしました。カレー屋さんから洋食系、リゾットやパエリア、ほかには定食屋さん、弁当屋さん、幅広く使われています。冷めても適度な粘りがあって、パサパサになるとか、そういう状態にはなりませんね。ブレンドすることで甘味・旨味・食感・のど越しが良くなる」

ミニマムアクセス米
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なぜ、ブレンド米は3割も安いのか。
大きな理由が“ミニマムアクセス米”という仕組みにあります。

ウルグアイ・ラウンド
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その始まりは、いまから約30年前、南米・ウルグアイで行われた世界的な貿易交渉、ウルグアイ・ラウンドに遡ります。この交渉で、アメリカなどは日本に対し、コメを輸入するよう強く求めました。しかし、日本人の主食であるコメは“聖域”。農家からは反対の声が噴出します。自民党議員が、国会議事堂の前で座り込みの抗議を行う事態にまで発展しました。

コメがいかに特別な存在かは、去年12月に極秘指定が解除された外交文書からも見て取れます。

渡辺美智雄外務大臣(1993年の外交文書)
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渡辺美智雄外務大臣(1993年の外交文書)
「政治的にもコメに手をつけると選挙で勝てず、全政党そろって、これに反対している」

ミニマムアクセス米
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そうしてたどり着いた結論が、毎年、最低限の量を関税ゼロで輸入するというミニマムアクセス米。アメリカを、これ以上、怒らせないための苦渋の決断でした。

完売状態
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あれから30年。皮肉にもミニマムアクセス米は、“令和のコメ騒動”の救世主となっています。現在、年間77万トンが輸入されていますが、人気が高まり、完売状態です。

東京・千代田区にある店では、いま、独自のルートでアメリカから輸入する検討を始めています。その場合、関税はかかります。

米マイスター麹町 福士修三社長
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米マイスター麹町 福士修三社長
「関税を払っても外国産の方が、いまの状況だと安い。いまコメが不足している状況で、なおかつ価格が高いと、一時的にも、やむを得ないのかな」

こうした状況は、現在、行われているトランプ関税をめぐる交渉にも影響を与える可能性があります。

アメリカ トランプ大統領(2日)
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アメリカ トランプ大統領(2日)
「友好国である日本は、コメに700%課税している。我々にコメを売ってほしくないからだ」

“コメ市場開放”にゆさぶり
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実際には、関税率は700%もありませんが、このような考えのもと、日本に対して、コメ市場を開放するよう、揺さぶりをかけています。

閣僚級協議
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16日に行われた赤沢大臣とベッセント財務長官らとの閣僚級協議でも、日本への輸出を拡大したい農産物として、コメが名指しされました。

そこで、いま政府・与党内にはトランプ関税の交渉材料とする形で、コメの輸入量を増やせばいいという案が浮上しています。

官邸関係者
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官邸関係者
「本音では、100万トンぐらい緊急輸入したらいいと思っている。コメが足りなくて高騰して、備蓄米まで放出しているんだから。それでトランプが満足するなら“ウィンウィン”じゃない」

自民党ベテラン議員
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自民党ベテラン議員
「農家はもちろん反発するだろうが、意外と世の中には歓迎されるかも」

もっとも、事はそう簡単ではありません。

20日、佐賀県伊万里市で行われた農協の集会で、夏の選挙を控える山下雄平参議院議員があいさつ。農水族の1人です。

自民党 山下雄平参院議員(20日)
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自民党 山下雄平参院議員(20日)
「我々の“食”を犠牲にして、アメリカとの関係を維持していくというのは、本末転倒だと思うんです」

地元の農家からは、厳しい声がかけられました。

自民党 山下雄平参院議員
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自民党 山下雄平参院議員
「僕らも必ず、我が国の“食と農”を守れるような、政権であるべきだと言い続けますので」

農家
「ダメだったら、落ちないといかんですね」

自民党 山下雄平参院議員
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自民党 山下雄平参院議員
「そうならないように、一生懸命やっていますので」

いまも昔もコメは聖域。農水族でもある石破総理は、21日の国会で、こう力を込めました。

石破総理
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石破総理
「関税でありますとか、ミニマムアクセスでありますとか、いろんな手法を用いて、日本の農業を守るということをやってまいりました。これから先も、守っていかねばなりませんし、当然、消費者の安全というものも、我々は守っていかねばならんと思っております」

19日・20日、世論調査
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報道ステーションは、19日・20日、世論調査を行いました。
トランプ関税をめぐる赤沢大臣の先日の交渉について、『評価する』と答えた人は48%で、『評価しない』を上回りました。ただ、今後の日本政府の交渉に『期待する』は45%、『期待しない』は46%で、拮抗しています。

◆政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。

(Q.参院選が控えるなかで、輸入米の拡大に踏み切ることはあるのでしょうか)

千々岩森生記者
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千々岩森生記者
「取材すると、石破総理の周辺からも、カードとして、選択肢には入るという声、緊急措置ならいいという声が出ています。例えば1年とか、トランプ大統領の任期中だけであれば、ギリギリ容認できるのではないかとの趣旨です。ただ、いわゆる農水族議員からは反発が強いです。『コメを作るなと制限してきたのに、輸入なんてあり得ない』という憤りです。週末に佐賀で、農村部を回る議員を取材しましたが、農家から『コメを守れなければ、落選だ』と迫られる厳しい現場にも出くわしました。関税交渉期限の90日は、7月です。まさに参院選の時期と重なるだけに、議席に直結しかねないという事情があります。第一次トランプ政権で、当時の安倍総理が結んだ日米貿易協定でも、コメには触れていません。政権基盤の強かった安倍政権でも踏み込まなかった。今回、石破総理がやるのか、なかなかハードルが高いようにも感じます』

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