12月に入っても“居座り”市街地のクマ急増…豊作と凶作「サイクル」が関係
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 2日も空き家に居座るなど、12月に入ってもクマ被害が止まりません。なぜ市街地の出没が増えているのか。専門家はある「サイクル」に異変が起きていると指摘しています。

【画像】防カメ捉えた“クマの生態”川沿い走り市街地に侵入

12月に入っても“居座り”

 ゆっくりとした足取りで、住宅の敷地内に入ってきたクマ。先月30日午前8時ごろ、山形市にある住宅の防犯カメラがとらえました。

住宅の敷地内に入ってきたクマ
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住人
「窓のほうを見たら、黒い物体が通り過ぎていった。まさか、クマだとは思わなかった。(映像を見て)こんな大きかったんだと怖かった」 

 この2時間前にも、近くの中学校にクマが出没。グラウンドと校舎の間を歩くクマが目撃されており、警戒が続いています。

2時間前にも近くの中学校にクマが出没
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 12月に入ってからも、市街地の建物に居座るクマが後を絶ちません。

 屋根の上には警察官や銃を持った猟友会の姿が。

 2日午前7時40分ごろ、秋田県横手市の空き家の小屋に、体長およそ1メートルのクマが侵入。近くには、住宅が建ち並び小学校や保育園もあります。

空き家の小屋に体長およそ1メートルのクマが侵入
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 午後0時半までに秋田県の担当者が吹き矢を4発ほどうち、その後、クマは捕獲されました。

 秋田市では見通しの良い、大通りの交差点にクマが出没。

防犯カメラ映像を入手
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 国道と県道がぶつかる交差点付近で、番組の取材班がクマをとらえた防犯カメラ映像を入手しました。

 先月21日、画面には広い歩道が映っています。すると画面の右下から…クマが姿を現し、信号待ちの車の間を横切っていきます。

信号待ちの車の間を横切るクマ
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 クマは向かい側の建物の前まで進むと、すぐに引き返して再び、国道を横断します。信号待ちの車が動き出すタイミングでした。

引き返して再び国道を横断
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 クマは川の方向に移動します。先ほどの反対側にあるカメラです。画面下側に注目。クマは階段を降りて駐車場の脇を通り抜けます。

階段を降りて駐車場の脇を通り抜ける
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 向かった先にあるのは市街地を通る川です。よく見るとクマが川沿いを走っています。

よく見るとクマが川沿いを走っている
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 この映像からわかるように、クマは川の茂みなどを移動して市街地に侵入してきます。

近隣住民
「心配は心配」

 住民たちは、クマに襲われる不安を拭えずにいます。

なぜ?市街地のクマが急増

 増え続ける野生のクマ。その実態がわかる貴重な映像です。子グマが3頭いる親子のヒグマ。

子グマが3頭いる親子のヒグマ
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 今年10月、住宅から近い山林に設置した自動カメラがとらえました。

 撮影者の男性がこの映像を確認すると、ある共通点が分かりました。

黒澤徹也さん
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ヒグマの親子を撮影
黒澤徹也さん

「3頭連れの親子が映って、親には肩に白い線が入っている。2年前 、2023年にも3頭を連れていて」

 2年前の2023年10月の映像にも、同じ個体とみられる母グマが映っていました。

 この時も子グマを3頭連れていました。母グマの肩の辺りをみると、白い線が入っています。

2023年10月
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 今年の10月に現れた母グマにも、白い線が。撮影者の黒澤さんは、同一の個体とみています。

 さらに、この2年前の2021年10月に…。

2021年10月
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 同じく白い線が入った母グマの姿が。2年ごとに映った親子4頭。母グマは同じとみられますが、子グマ3頭は、それぞれ違う個体と考えられます。

2年ごとに映った親子4頭
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黒澤さん
「1年半くらい(子グマを)育てて、2年ごとに産んでいると思う。通常は2頭産むみたいだが、この個体は毎回3頭産んでいる」

 ヒグマの出産の間隔は2年から3年です。母グマは冬眠の間に巣穴で出産して、少なくとも1年半ほど子育てをするといいます。

 子グマが親離れした後に交尾をした場合、およそ半年の妊娠期間を経て、次の冬眠で子グマを産むことになります。

ヒグマの出産間隔
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黒澤さん
「5年前に産んだ子グマの中でメスがいれば、(子を)産んでいる。どんどん増えている印象。このペースで増えていったら大変なことになるだろう。人里や市街地に(クマが)出てきているのは、山の中で増えあぶれた個体や弱い個体が出てきているのでは」

豊作と凶作「サイクル」関係か

 市街地に出没するクマが急増する背景には、山の実の豊作サイクルが関係している可能性が指摘されています。

 クマのエサとなるブナの実が山にどれだけなっているのか、秋田県林業研究研修センターでは、毎年調査をしています。

ブナの結実状況
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 東北5県では、今年と、おととしが「大凶作」で、去年は「豊作」か「並作」でした。では、来年以降の予測は?

和田覚部長
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秋田県林業研究研修センター
和田覚部長

「来年、豊作になったら再来年は100%凶作。場合によっては今年のようにクマの被害に警戒が必要」 

 以前は、5年から7年に1回、ブナの実が豊作になるサイクルだったといいますが、近年は変化がみられ、豊作と凶作のサイクルが2年周期になっているのが分かります。

秋田 ブナの結実状況とクマ捕獲数
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 サイクルが短くなっている期間には、クマの捕獲件数が増加傾向にあり、2年前には一気にその数が増えました。

 豊作になる間隔が短くなり、豊作の年が増えると、母グマの栄養状態も良くなり、その分、産む子グマの数が増える傾向があるといいます。

産む子グマ数が増える
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和田部長
「凶作がクマの個体数を安定化させる役割を、かつては担っていた。そのサイクルが狂ってきているところが懸念。かつては(豊作に)約5年の間隔があったので、そこである程度、淘汰が進み個体数が安定化に向っていたと思う。今崩れてしまっている」

 なぜ、豊作と凶作のサイクルが崩れているのでしょうか?

「『ミズナラ』は温暖化の影響を受けているのでは」
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和田部長
「ブナの仲間で『ミズナラ』は温暖化の影響を受けているのではと報告。ブナも前年の夏が暑いと豊作になりやすい調査結果が出ている」 

 クマの個体数が増えるなか、人里に現れないための環境づくりが重要だといいます。

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