8日の衆議院本会議補正予算案についての代表質問で、共産党・堀川朗子議員が高市総理を追及した。
堀川議員は「補正予算で重大なことは過去最大の8472億円もの軍事費だ。補正後の総額は11兆円、GDP比2%に達するとしているが米軍再編や自衛隊の装備調達の歳出化経費の前倒しが全体の6割以上を占めている。台風などで軟弱地盤の改良工事が半年も中断をした辺野古新基地建設や既に契約済みの装備調達の支払いだけを前倒しすることにどういう緊要性があるのか? 予算編成後の特に緊要な経費の支出に限るとした財政法29条に真っ向から反するものではないか? 結局、トランプ大統領の訪日前に慌てて表明した2%前倒しに帳尻を合わせただけではないか?」と質問。
これに高市総理が「我が国を取り巻く安全保障環境が一層急速に厳しさを増していることを踏まえ、現行の国家安全保障戦略のもとでの取り組みを可能な限り加速させる必要がある。このため、令和7年度補正予算案では防衛力強化のための事業として例えば自衛隊における人的基盤の強化やドローン対処機材の整備などの自衛隊の活動を支える基盤の強化、装備品の納入の安定化や早期の輸入の確保、米軍再編の着実な実施など、今年度に実施すべき緊要性のある事業を積み上げ約8500億円を計上している。これにより安全保障関連経費が1.1兆円程度となり令和7年度当初予算と合わせた合計額が11兆円程度となることから結果として国家安全保障戦略に定める対GDP比2%水準に達することとなった。これは我が国自身の主体的判断のもとで行うこととしたものであり、トランプ大統領の訪日前に慌てて表明した2%前倒しに帳尻を合わせたものではない」と回答すると大きなヤジが飛んだ。
続いて堀川議員が「台湾海峡での米中の武力衝突が『どう考えても存立危機事態になりうる』という総理の発言は外交問題に発展し、観光業や水産業各種の交流事業にも影響が及んでいる。総理はなぜこのような事態に発展したと考えているか? そもそも日本は武力で台湾を奪い、中国大陸を侵略した歴史がある。ポツダム宣言を受諾しサンフランシスコ平和条約で台湾に関するすべての権利・権限・請求権を放棄した。日本は植民地支配と侵略戦争の加害国として台湾問題に軍事的に関与してはならない特別の歴史的責任を負っているのではないか? 1972年の日中共同声明は台湾が中国の領土の不可分の一部とする中国政府の立場を日本政府が十分理解し尊重しポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持すると明記し2008年の共同声明では双方は互いに協力のパートナーであり互いに脅威とならないことを確認している。総理の発言は国交正常化以降の日中間の合意の積み重ねを根底から覆すものではないか? 事態を打開できるのは総理だけだ。発言の撤回を強く求める」と訴えると議場内に拍手が起きた。
高市総理は「我が国としては中国との間で懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やしていく方針に変わりはない。日中間のさまざまな対話を行うことに日本側はオープンであり、中国側の一連の措置による影響を含め引き続き状況を注視し適切に対応していく。台湾に関する我が国政府の基本的立場は1972年の日中共同声明のとおりであり、この立場に変更はない。いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては実際に発生した事態の個別具体的な状況に則して政府がすべての情報を総合して判断することになる。こうした説明は平和安全法制成立当時の安倍総理以来政府として繰り返し述べてきたとおりであり、私も全く同じ立場だ」と回答。
さらに堀川議員は「政府は安保3文書に基づき、全国各地で長射程ミサイルの配備と弾薬庫の増設を進め、空港・港湾の軍事利用を拡大し、南西地域に部隊と弾薬物資を集中できる態勢を構築しようとしている。在沖米海兵隊は南西地域の島々に分散移動しながらミサイルで艦艇を攻撃する海兵沿岸連隊へと衣替えをしようとしている。まさに台湾有事に日米一体で軍事介入するための体制づくりにほかならない。憲法を蹂躙し日米両国民に甚大な犠牲をもたらす戦争への道は絶対に突き進んではならない。集団的自衛権の行使を可能にした憲法違反の安保法制と安保3文書の廃止を強く求める」と訴えた。
高市総理は「防衛力はわが国の安全保障を確保するための最終的な担保だ。防衛力によりわが国に脅威が及ぶことを抑止し仮に我が国に脅威が及ぶ場合にはこれを阻止し排除することが必要だ。このような認識のもと政府としていわゆる3要件を満たす場合に限り武力の行使を許容するという前提のもと平和安全法制の整備を通じてあらゆる事態に切れ目のない対応を可能にするとともに、現行の3文書に基づき防衛力の抜本的な強化を着実に進めてきた。これらの取り組みはわが国の独立と平和、国民の皆様の平和な暮らしを守り抜くために不可欠でありその必要性も含め国民の皆様への丁寧な説明を続けていく」と述べたが、終始議場内はざわつき、時折大声のヤジが飛んだ。
(ABEMA NEWS)

