レーダー照射“事前通告”音声めぐり日中応酬 専門家「逆襲に出ている」
この記事の写真をみる(13枚)

 レーダー照射問題を巡り、中国メディアが公開した事前通告とする音声に対し、小泉進次郎防衛大臣が臨時会見で反論しました。さらに、これに対して中国側も反論です。

【画像】事態はどこまでエスカレート?

“事前通告”音声巡り…小泉防衛大臣が反論

 防衛省が開いた臨時会見。小泉防衛大臣、中国側に真っ向から反論です。

中国側に真っ向から反論
拡大する

小泉防衛大臣
「レーダー照射事案に関する中国国営メディアの報道について」

 中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射問題。中国国営テレビ系のSNSが公開したのは、“中国軍側と自衛隊側のやりとり”とする音声データです。

“中国軍側と自衛隊側のやりとり”とする音声データ
拡大する

中国軍側
「こちらは中国の101艦です。私たちの編成は計画通り艦載機の飛行訓練を行います」

緊急発進した自衛隊機に対し、レーダーを照射
拡大する

 問題の発端は6日土曜日、沖縄本島沖の公海上で中国軍の空母「遼寧」から発艦した戦闘機が、領空侵犯の恐れがあるとして緊急発進した自衛隊機に対し、レーダーを照射しました。

 この危険な行為は断続的におよそ30分間にわたって続いたといい、日本政府は「極めて遺憾だ」として強く抗議。中国側は「訓練を妨害された」などと応酬しています。

 そんな中…。

中国側は、「訓練を事前に通告した」と主張
拡大する

中国軍側
「こちらは中国の101艦です。私たちの編成は計画通り艦載機の飛行訓練を行います」

自衛隊側
「中国の101艦へ。こちらは日本の116艦です。メッセージを受け取りました」

 中国側はこの音声を公開したうえで、「訓練を事前に通告した」と主張。問題を受けて翌7日の未明に開かれた防衛省の臨時会見についても“自作自演”だとしました。

 10日、小泉防衛大臣は、中国軍から自衛隊に「訓練を開始する旨の連絡があった」ことを認めたうえで…。

中国軍から自衛隊に「訓練を開始する旨の連絡があった」ことを認めたうえで…
拡大する

「空母『遼寧』の艦載機が、どのような規模・空域において訓練を行うのかという具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム(通知)、航空情報もなく、船舶等に示す航行警報も事前に通報されておりません。その結果、危険の回避のために十分な情報がありませんでした。領空の保全と国民の生命財産を守る責務を有する防衛省・自衛隊が、空母から発艦した艦載機に対し対領空侵犯措置を適切に行うことは、訓練に関する事前通報の有無に関わらず、当然であります」

これについても小泉防衛大臣は否定
拡大する

 また、中国国営メディアは「中国側の戦闘機も日本のレーダーを感知した」とも主張していますが、これについても小泉防衛大臣は否定。

「最も重要な点として、問題の本質は我がほうが対領空侵犯措置を適切に行う中において、中国側が約30分にわたる断続的なレーダー照射を行ったこと」

 中国事情に詳しい専門家に話を聞くと、小泉防衛大臣と同じ点を指摘。

小泉防衛大臣と同じ点を指摘
拡大する

キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員
「これ、根本的な問題というのは、日本側の戦闘機に対して断続的にかなり長い時間レーダー照射をしたところが問題。ある意味“論点をずらす”ために、こういう主張をしているのだと」

中国側“音声公開”の狙いは?

“戦争一歩手前”の危険な行為
拡大する

峯村上席研究員
「実は中国側は、日本側がここまで(“レーダー照射”を)大々的に発表すると思っていなかったらしい。ある意味、不意をつかれたと。30分間連続で(レーダー)照射するというのは、本当に“戦争一歩手前”の危険な行為だというところ。国際社会にも影響が出始めているというところで、ある意味焦ったかたちで、こういうような報復というか、逆襲に出ているとみていいと思う」

米国務省の報道担当官もコメント
拡大する

 アメリカ国務省の報道担当官は9日、レーダー照射を巡って「中国の行動は、地域の平和と安定に資するものではない」とコメント。

米国務省のコメントを歓迎
拡大する

木原稔官房長官
「(米国務省の)コメントでありますけど、まさに強固な日米同盟を示すものであり、歓迎をしております」

 10日午後に会見した中国外務省は、レーダー照射問題について。

中国側の圧力が弱まる気配はない
拡大する

中国外務省の会見
「中国は何度も厳正な立場を表明しており、真相は明白である。また日本は、中国から事前に通報を受けたにもかかわらず、なぜ勝手に中国の演習エリアに戦闘機を派遣し妨害を行ったかの説明を拒否している」

 中国側の圧力が弱まる気配はありません。9日は、中国の爆撃機2機が東シナ海でロシアの爆撃機2機と合流し、四国沖の太平洋にかけ長距離にわたって共同飛行を実施したことが分かっています。

 はたして、事態はどこまでエスカレートしていくのでしょうか。

事態はどこまでエスカレート?
拡大する

峯村上席研究員
「中国のやり方というのは、1つずつ階段を上がるようにプレッシャーを強めていく。日本への渡航自粛要請をやっていたところが今、軍事のステージに上がった。そしてさらに、軍事の圧力でも効かないとなってくると、もっと実力行使に出る。例えば中国にいる日本企業に対して規制を強めたり、最悪の事態でいうと中国にいる日本人を拘束するというようなかたちで、揺さぶりをかけてくる可能性があると見ています」

この記事の画像一覧
外部リンク
この記事の写真をみる(13枚)