自民・稲田朋美議員
【映像】「今のはダメ」自民議員が法相答弁にダメ出し(実際の様子)
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 11日の衆議院法務委員会で、平口洋法務大臣の答弁に、自民党の稲田朋美議員が「今のはダメ」と否定する異例の展開があった。

【映像】「今のはダメ」自民議員が法相答弁にダメ出し(実際の様子)

 稲田議員は「昨年は袴田事件、今年は福井事件で再審無罪判決。両事件において共通するのは、有罪の証拠が捜査機関の捏造もしくは利益誘導による虚偽の証言。しかも再審制度の不備によって無実の人の人生を丸ごと損なうほどの長期間を要しているわけです」と指摘。ここから福井事件について、冤罪を生んだ検察の問題点について追及が始まった。

 「約40年前私の地元福井で女子中学生が自宅で殺害された事件で、犯人とされた前川彰司さんは今年再審無罪を勝ち取りました。捜査機関による証人に対する不当な誘導及び利益供与による虚偽の証言、そして重要な(無実の)証拠を第一審から隠し続けた検察官によって、無実の前川さんの人生は棄損されました。昨年の第2次再審開始決定において、裁判所は検察官に対し、不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったことを確認。『公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為と言わざるを得ず、適正手続の保障の観点からして到底容認できない』と厳しく批判をいたしました。裁判所から『手続保障に反する』、これ憲法違反だと指摘されているんですよ。しかも『不誠実で罪深い不正』とまで言われている」と指摘。

 続けて「今年の再審無罪判決においても、『確定審検察官がこの誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求以前に確定審において原審の無罪判決が確定した可能性も十分考えられるのであって、上記のような確定審検察官の訴訟活動に対しては、その公益の代表としての職責に照らし率直に言って失望を禁じ得ない。検察警察の不正不当な活動ないしその具体的な疑いは、単に検察警察に対する信用を失わせるのみならず刑事司法全体に対する信頼を揺るがしかねない深刻なものである』とまで指摘しているんです。ここまで裁判官が検察を批判したというのは私は例を見ないと思います」と厳しく指摘した。

 さらに、「特筆すべきことは、この重要な証拠を隠したのは1人の検察官ではなく、確定審、第1次再審、第2次再審を通じて担当検察官全てが証拠開示を拒否し、証拠隠しをした。検察の手元にあったにもかかわらずですよ。第2次再審請求審において裁判所は検察官に対し、証拠を任意で開示するように勧告しましたが、検察官は『高検の担当者全体の意向である』と任意開示を拒否したんです。まさに組織ぐるみで証拠を隠したと言われても仕方がありません。裁判所からの異例というべき激しい厳しい指摘についてどう思うのか刑事局長にお伺いします」と質問した。

 佐藤淳法務省刑事局長は、「検察当局におきましては御指摘の事件で前川さんが相当期間にわたり服役し、無罪となったことについて厳粛に受け止めているものと承知しております。また確定審における御指摘のような検察官の訴訟活動に関しては、裁判所から当時の検察官の対応は不公正なものであったと評価されたのも当然であるとして、検察官の対応を批判する裁判所の指摘を重く受け止め、真摯に反省して教訓とすべきものと考えているというコメントを発しているものと承知しております」などと答えた。

 これに対し稲田議員は「今刑事局長は確定審検察官がとおっしゃったんですけど、確定審検察官だけじゃないんですよ。第1次再審請求でも第2次再審請求でも手元にある証拠を出さず、第2次再審請求審では裁判官から『出せ』と言われても『高検の全体の担当者の意向だ』と言って出さずに、そして『命令を出すぞ』と言われて初めて出したわけですよね。そこに重大な無罪を推定される証拠があったというのが今回の事件なんです。私が言いたいのは、この福井事件がまさしく今、再審法改正の立法事実そのものなんですよ。証拠開示の範囲、仮にこれ今、法制審で言われているような“関係する事実に関わるものだけ”と言えば出てこなかったものなんですよね。ですからこの立法事実そのものであるところの、この福井事件の検証をなぜしないんですか」と激しい口調で詰め寄った。

 佐藤刑事局長は「個別事件におきまして無罪判決が確定した後に、再審無罪になった事件、通常審で無罪になった事件、様々いろいろある、そこに反省のある事件は多々あるわけでございますけれども。その上で無罪判決が確定した後に公表を前提とした検証を行うか否か、被告人とされた方などにいかなる対応をとるかなどにつきましては、まずもって検察当局におきまして個々の事案に応じて検討した上で、判断して対応すべきものであると考えているところでございます」と答えた。

 稲田議員は納得せず、「これは普通の事件じゃないんです。今回の再審法改正の立法事実そのものであって、この刑事法制度の立案責任である法務省において、しっかりこれは検証すべき事案だというふうに思います。また先ほど前川さんに対しての、やはり直接的な謝罪がないとダメだと思います。昨日も予算委員会で総理から、大臣はこの再審法の改正を行うことについての指示をしているというふうにおっしゃったんですけれども、この再審法の改正について今、元裁判官63名が『今の法制審の方向性では改悪以外何ものでもない、全く現状の改善につながらない』、また法務省とか検察サイドが主導する法制審に改正すること自体も誤りだとおっしゃっています。大臣、この再審法に対する考え、議連案に沿った改正を行うべきだと思いますがいかがですか」

 平口法務大臣は「再審制度は十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続きであり、同制度が適切に機能することは大変重要であると考えております。引き続き法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう力を尽くすとともに、法制審の議論の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております」と議連案ではなく、法制審の議論を踏まえて対応すると答弁。

 これに稲田議員は「今のではダメなんですよ。今のはダメ」と反発。この“ダメ出し”に議場からは「そうだ!」の声も上がり、拍手も起きた。稲田議員は続けて「なので私はやはり、国権の最高機関であるところのこの委員会で、そして委員長はですねやはりその点について非常に国政調査権を軽視することがないよというふうにおっしゃっておられます。ぜひとも当委員会において福井事件の検証及び議連案の審議入りを求めます」と主張すると、議場には拍手がわいた。

 再審法改正をめぐっては、超党派の議員連盟の案(議連案)は1.再審請求人が証拠や証拠リストの開示を求めた場合に、裁判所は原則として検察に開示命令を出すよう義務づける、2.再審開始決定に対する検察の不服申立てを禁止する、などが盛り込まれている。

 一方、法制審議会の議論では証拠開示の範囲が限定される案が有力視されている。(『ABEMA NEWS』より)

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