
いまだクマへの警戒が必要な秋田県。クマの出没が相次ぐことで、昔からある“日本の原風景”にある異変が起きています。
クマ出没増で…「柿の木」伐採
地面が真っ白になるほど雪が積もった秋田県横手市。すると、画面下側から…。
10日早朝にツキノワグマが現れました。クマが歩いた雪には、足跡がくっきりと残っています。
クマはそのまま車道の方へと進むと、画面左へと歩き、そのまま崖を登り山の方へと戻って行きました。
横手市は、食べ物があれば冬眠しない個体がいるとして、クマの餌(えさ)となる食べ物の管理を呼びかけています。
その餌となるのは「柿」です。
柿の木を伐採 石川紀行さん(78)
「やはり、なんといってもクマ対策ですね。シンボルが1個1個なくなって、全部で16本も切られた」
秋田県潟上市で度々目撃されているのは「柿を食べるクマ」です。
この柿の木には次の日も現れ、警察が爆竹などで追い払っても何度も柿の木に現れたといいます。
クマを引き寄せる誘引物の約7割が「柿」といわれています。そのためクマを寄せ付けないよう、11日、地元の有志によって柿の木の伐採作業が行われました。
11日に伐採した柿の木にも、これまでクマが出没。去年には12月下旬にもかかわらず、冬眠しないクマが柿の木に登る姿が。
柿の木の所有者 伊藤一重さん(72)
「クマというのは山奥にいる動物だと思ってた。身近で見ることは、ほとんどなかった」
クマは今年もこの柿の木に現れたといい、伐採することを決めました。
ただ、この柿の木、地元の人たちは断腸の思いで伐採していました。
伊藤さん
「やっぱり寂しい。家族と同じと言えば大げさな言い方になるけれども、生まれた時からあるものがなくなるというのがやっぱり寂しい…」
特別な思い入れがある背景には、代々先祖から受け継がれてきた“教え”がありました。
「恨めしい」思い出の木を伐採
雪が積もる新潟県十日町市でも、今も柿を食べるクマの姿が…。
雪が降っても柿を食べにくるクマが増える中、東北では田舎の原風景が失われつつある場所も。
秋田県潟上市では、クマを寄せ付けないために柿の木を伐採。
伊藤さん
「(Q.今、伐採されました?)寂しいような感じがする。私が生まれた時からある柿の木。昔のことなど思い出したり。やっぱり小さいころ遊んだ柿の木ですので」
潟上市の山田地区では、昔から柿の木を庭先に植えることが多いといいます。
今は72歳の伊藤さんも小さいころから秋になると、この柿を干し柿にして食べるのが楽しみの一つだったそうです。
「よく柿とったなと。みんな夜ごはん食べてから柿の皮をむいて、縄に通して天井につるす。そういうのを手伝ったりして、ちょっと思い出がある」
この集落では、柿を植える理由に代々先祖から伝わる教えもあるといいます。
「冬場の保存食として、柿の木は植えたみたい。食べ物が今みたいに豊富でもなかったから。自分たちで注意すればいいと思うが、事故でも起こると放っておけないようなことになる」
潟上市では柿の木を伐採するにあたり補助金が出ることはなく、地元の人たちが有志で伐採作業を行っています。
柿の木を伐採 石川紀行さん(78)
「固くても熟してもおいしいってことで。腐る寸前までおいしい。良いおやつになった。子どもの時代は特に」
有志の伐採作業に参加する石川さんも、クマが周辺に出始めた3年前に自宅の柿の木を切っていました。
「この辺に柿の木がありました。大木だった。うちの家の“大黒柱”。その柿の木はもう本当に伐採するしかないと思って、断腸の思いではあったが、大げさに言えば。切らざるを得なくて切りました」
今年78歳になった石川さん。柿とともに成長してきたといいます。
「この柿の木は、私が小さい時とかよく記念撮影する場所として、その柿の木が選ばれて今まで来た。入学式・卒業式、写真撮る時は柿の木の下で撮った」
これまで記念撮影の場所として親しまれてきた柿の木は、もうありません。
「本音としては切りたくない。昔のシンボルはやっぱり残しておきたい。朽ちるまでは柿の木の姿を残しておきたかったが、クマのせいかと思って恨めしいけどしょうがない」
