
日本の再生可能エネルギーの根幹であった大規模太陽光発電事業、いわゆるメガソーラー。大きな転機を迎えました。
【画像】再生可能エネルギー“転換点”…メガソーラー 規制強化策 “森林伐採”開発地の現在

房総半島にある鴨川。
人気の観光地ですが、海から離れ、山間部に行ってみると、広範囲にわたって木が伐採されていました。ここに国内最大級、サッカー場205面分のメガソーラーが建設されます。
23日朝、官邸にエネルギー関連に加え、農林水産大臣や環境大臣も集められました。

木原稔官房長官
「メガソーラー対策パッケージをとりまとめました。1.不適切事案の規制の強化など、2.地域との連携強化、3.地域共生型支援の重点化。不適切な事例を可視化し、抑止することが可能となるもの」
関係閣僚会議で示されたのは、メガソーラーに関連する環境アセスメントの見直しや、森林の開発許可の規制強化などです。また、2027年度からは、新たなメガソーラーへの補助金の廃止も含めて検討されます。
この事業の拡大のきっかけとなったのは、3.11でした。
原発事故を受け、時代は、再生可能エネルギーに。太陽光などで作られた電気を一定の価格で電力業者が買い取る制度の始まりでした。
オール電化の普及率が上がり、津波被害にあった土地を有効活用するなど、全国的に一気に広がっていきます。

しかし、平野部では、条件の合う土地が減ります。農地やゴルフ場からの転用が行われるようになり、いまでは、山岳地帯や湿地帯がその対象となってきました。

北海道の釧路市。
日照時間が長く、土地は平坦で広大、かつ格安ということで、560の太陽光発電施設が作られてきました。
しかし、釧路湿原周辺も開発の対象となっていて、天然記念物や絶滅危惧種といった生態系への悪影響、環境破壊が問題視されていました。
事業者は、対策案を提示していますが、それでも地元住民や自治体とのあつれきは、避けられません。

町内会の関係者
「(地域や希少生物と)共生はされていないのに、なぜこうやって、木を切ったり こういう作業をするのか。非道な会社と言ったら悪いけど、そこまでするのかという感じ」

釧路市 鶴間秀典市長(5月)
「自然と調和がなされない望まないことをここに宣言します」
いまや全国に9000以上となったメガソーラー。見直しは、避けられそうにありません。

参政党 神谷宗幣代表(先月)
「脱炭素政策の見直し、メガソーラーや風力発電の開発を抑制する考えはあるのか。総理の所見をお聞かせください」
高市総理(先月)
「安全、景観、自然環境などに関係する規制の総点検を行い、不適切なメガソーラーを法的に規制する施策を実行します」
一方で、“再生可能エネルギー活用の逆行”といった懸念も生まれています。

赤沢亮正経産大臣
「確かに、規制強化の側面はあるんですが、 一方で、新しい技術が出てきて、大きな流れのなかで規制とか、支援策を微調整というか重点を見直す。そう捉えていただければ、ありがたい」

◆日本の発電量の約1割を占める太陽光発電。なかでも参入が相次いだのが“メガソーラー”です。出力1メガワット以上の大規模太陽光発電施設。建設には、2~3ヘクタールの用地が必要とされ、これまで9022件が稼働しています。
◆なぜ、これほど太陽光発電の普及が進んだのか。

導入を後押ししたのが、東日本大震災をきっかけに、2012年に始まった電力の『固定価格買い取り制(FIT)』。経済産業省が認定し、発電した電気をあらかじめ決めた価格で電力会社が買い取ることで、再生可能エネルギーの導入を加速する狙いがありました。
2022年からは、新たな補助制度に移行しています。

制度開始前の2011年度と比べると、太陽光発電の導入量は、7704万キロワットと、15倍に増加。この補助の費用は“再エネ賦課金”として、私たちが毎月の電気料金に上乗せし負担していて、一般的な世帯で、月額1592円、年額19104円になります。
◆メガソーラーを規制すると、具体的にはどんな内容になっているのか。

具体的には、“環境アセスメント”の義務付け対象を広げるなど、不適切な事案への規制強化を掲げるとともに、地上に設置された事業用の太陽光については、2027年度以降、補助の廃止を含めて検討するとしています。一方で、政府は、太陽光発電の比率を、これまで通り2040年度までに23~29%程度に増やす計画です。今後は、工場や公共施設、商業施設などの“屋根”などへの設置を中心に支援したり、次世代型太陽電池の開発・導入の強化として、『ペロブスカイト太陽電池』の研究開発・実証への支援を強化していくということです。『ペロブスカイト太陽電池』は、薄く、軽く、曲げられるなどの特徴を持つ電池で、高市総理も普及へ意欲を見せています。
◆今回の動き、どう評価すべき。
太陽光発電など、再生可能エネルギーの問題に詳しい東京科学大学の錦澤滋雄准教授に聞きました。
錦澤さんは「日本には平地が少なく、メガソーラーの建設適地はもともと多くない。ほとんど使えるところは使い切っているともいえる。メガソーラーは、騒音や森林伐採、景観破壊など地域でトラブルが相次いでいる。太陽光発電はかなりの量が導入されているので、いまは、一旦規制を強めて、環境への影響が少ない、地元にメリットがあるなど“よい再エネ”を“選別”すべきときなのでは」といいます。
また、2040年までに太陽光発電の比率3割弱を目指す政府の見通しについて、錦澤さんは「そんなに簡単ではないという印象。いまの達成状況は1割ほどで、それを2倍、3倍にするという意欲的な数字。メガソーラーで達成するのは現実的ではない。ペロブスカイト太陽電池や“屋根置き”の太陽光発電が、どれだけ現実的に普及していくかにかかっている」と話します。
