
第2次トランプ政権で世界は大きく変わった。2026年の世界と日本の経済はどうなるのか。アメリカのベッセント財務長官の盟友とも言われる「伝説のコンサルタント」に話を聞いた。
日銀の金利引き上げに懸念も
日本の利上げを海外はどう見ているのか。
日本銀行は19日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%から0.75%に引き上げると決めた。0.5%を超えるのは30年ぶりだ。今回の利上げにはインフレの抑制や、過度な円安を是正することなどの狙いがある。
一般的に、金利を上げると企業や個人がお金を借りにくくなり、経済活動や景気の過熱が抑えられて物価が押し下げられる。また、金利の高い通貨が買われやすくなるため、円安を是正する効果も期待される。
消費者物価指数の前年と比べた上昇率でいうと、日銀は2%で安定させることを目標にしているが、2022年以降はこの2%という目標を超えてしまっている。
アメリカで数々の有名投資家に助言し、成功させてきた投資コンサルタント・齋藤ジンさんは、「今、利上げを行っても『すでに後手に回っている』とマーケットは見ている」と言う。今後「極端な利上げにつながるのではないか」と懸念する声もあるという。
アメリカであった例を見てみると、アメリカの政策金利を決めるFRB(連邦準備制度理事会)は、コロナショック後の利上げが後手に回った結果、2022年に通常の3倍の利上げ幅となる、0.75%もの政策金利引き上げを4回も行うことになった。
極端な金利の引き上げを繰り返したことによって経済が悪化したうえに、肝心の物価はなかなか押し下げられずインフレが長期化するなど、期待した効果は得られなかった。
では、どうすればいいのか。齋藤さんは「中立金利2%に向けて着実に利上げをして、極端な引き上げを防ぐ」ことだと指摘する。
「中立金利」というのは経済を過熱も冷却もさせない、「ちょうど良い政策金利の水準」のことであり、そこに向けて少しずつでも継続して上げていくことが重要だとしている。
しかし、日銀が利上げのペースなどに具体的に言及しなかったことから、市場は「日銀は次の利上げに慎重だ」と受け止めていて、一時、円安も加速するなど、こちらも期待した効果は得られなかった。
米投資家が注視するのは?
トランプ政権が世界の秩序を変えようと動いているなか、齋藤さんは「この状況は日本にとって大きなチャンスになる」とみている。
齋藤さんによると、アメリカはこれまで政府の経済介入を最小限にして、市場のメカニズムによる自由な競争を重視する「新自由主義」だったが、政府が経済活動に介入する「国家資本主義」に変化してきているという。
トランプ政権が推し進める「国家資本主義」的政策では、海外の安価な製品を関税で止めて、国内の重点化する分野に補助金などを投入するといったものである。齋藤さんによると、アメリカは重要なパートナーとして日本を認識しているため、「アメリカ国内のプロジェクトに早く参画した企業は半永久的に有利な地位を確保できる」という。
こうしたアメリカの動きに呼応するかのように、高市政権はいくつか成長戦略を掲げている。その中の一つ、日本が強みを持つ「造船」分野を見てみる。アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)は、「アメリカの造船能力は中国の230分の1だ」とアメリカ海軍の資料をもとに指摘している。
この流れについて齋藤さんは、「日本の製造業の遺伝子が残っているうちにチャンスが到来した」と日本の強みを生かす好機だと指摘している。
こうした中で、アメリカの投資家が注視しているというのが、「日本の雇用の流動化」だという。齋藤さんは「造船など日米協力の核となる分野に人材を集められるかが成長のカギ」だとして、「雇用の流動化を促進する規制緩和が行われるかが注目されている」ということだ。
日中関係「共存できるかがカギ」
日中関係が悪化するなか、日本は中国とどう向き合っていけばいいのか。
齋藤さんは、台湾有事を避けるためには、日米と日中の関係が重要だという。
まず日米関係でいうと、アメリカ・トランプ政権には東アジアへの関与を求め続けるということが必要だとする。そして日中関係では、様々な課題があるが、中国を追い込まない形で関係を維持することが重要だという。
そして対中戦略を構築するうえで理解しておくべきポイントとして、齋藤さんは「中国はアメリカが推し進めた新自由主義のシステムを利用して富国強兵を進めてきた国であり、その逆流の影響も最も受ける国」だと指摘する。これは、新自由主義によって各国が安い労働力として中国に目をつけ、中国は「世界の工場」として目覚ましい経済成長を遂げ、富国強兵=軍備増強につなげてきたということである。
これがアメリカが国内に回帰することで、中国経済は低迷に陥り、安全保障分野にも影響が及ぶと危機感を抱いているという。
そして米中対立が続くなかで、「中国は日本も敵にすることは得策ではないと考えているはず」で、日本は中国と「安全保障以外の分野でどう共存できるかがカギ」だという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月24日放送分より)
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