
救急患者の受け入れ先がすぐに決まらず“たらい回し”にされる「搬送困難」と呼ばれるケースがコロナ禍以降、各地で起きています。そうした中、眠らない街、東京・新宿歌舞伎町には患者の受け入れを断らない病院があります。なぜ引き受けるのか、医師らの思いを取材しました。
【画像】医師「お傷パックリ開いちゃってる」 忘年会で椅子から落ちた男性は…
救急医療“最後のとりで”
晴れる確率が1年で最も高い東京のクリスマス・イブ。しかし今年は、あいにくの雨となりました。
看護師
「タイルですべって転倒して体動困難」
濡れた道で転んだという男性。検査の結果、右足のすねを骨折していました。
春山記念病院 病院長 瀧川慎也医師
「手術しなきゃいけないんですよ。今とても動かせる状態ではないので、できれば今から入院してください」
骨折した男性(50代)
「(Q.クリスマスに?)本当ですよね。良い思い出っていうか、あんまり良い思い出じゃないですよね」
歌舞伎町のそばにある春山記念病院。「患者を断らない」を理念に、24時間365日、急病の患者らを受け入れています。
去年、都内の救急出動件数は過去最多の93万件超えと3年連続で増加。春山記念病院は救急外来のベッドこそわずか2つですが、昨年度はおよそ8000件、一日平均20件以上の患者を受け入れ、地域に欠かせない存在となっています。
瀧川医師
「(病院周辺は)新宿駅もあり、近くに繁華街もあります。人口が多いというところで、たくさんの外傷患者がいらっしゃる。とにかく困っている人、けがをされた人を一人でも救いたくて、この地域で小さなことでも困っている人を助けたい」
番組は、年の瀬に救急医療の“最後の砦(とりで)”を支える医師や看護師らに密着しました。
忘年会シーズン…酔った人の救急要請も
15日午後5時すぎ、運ばれてきたのは駅の階段から転倒して頭を負傷した80代の男性です。
春山記念病院 副院長 藤川翼医師
「目の横は、ちょっと縫わないといけなそうですね」
男性は顔を4針縫うことに。処置中にも救急要請の電話が入ります。
看護師
「94歳女性、けいれん。重積とる?」
藤川医師
「うん、いいよ」
3分ほどで縫い終わり、他に異常はみられませんでした。
階段で転倒した男性(80代)
「病気とけがは、いつ来るか分からない。助かりました」
忘年会シーズンまっただ中のこの時期。店で酔った人の救急要請も目立ちます。
午後8時前、飲食店で椅子から転倒した60代の男性が救急搬送されてきました。救急要請の時の記録には「午後2時半からしょうちゅう」の文字がありました。
男性は友人と忘年会中、背もたれのない椅子から後ろに倒れ、柱で後頭部を打ったといいます。
看護師
「ちょっと消毒しますよ」
男性
「え?あ~痛いな。痛い痛い痛い」
藤川医師
「お傷パックリ開いちゃってる」
男性
「え!?」
藤川医師
「医療用のホチキスでとめたほうがいい」
男性
「痛い痛い痛い痛い!」
男性は無事、傷をふさぐことができました。しかし、当の本人はけがの記憶がないようです。
男性
「なんにも分かんない。酔っぱらって…で、なんかあったの」
友人
「頭ぶつけて、けがしたの」
男性
「(今後は)もちろん気を付けます」
ホストクラブで働く20代男性も…
春山記念病院には、歌舞伎町ならではの患者も運ばれてきます。
隊員
「ホストクラブで飲酒。量不明なるも、かなり大量にお酒を飲んでます」
ホストクラブで働いている20代の男性です。泥酔し、店を出た後、飲食店で倒れました。
藤川医師
「頭の中は特に問題なかったので大丈夫かと。飲みすぎた影響かな」
男性
「毎日飲んでます」
「みんなに迷惑かけてしまったので、これから気を付けようと思います」
外国人患者も…夜間は翻訳機を使い対応
“眠らない街”の“眠らない病院”。さすがに疲れが押し寄せます。
運ばれてくるのは、日本人だけではありません。
看護師
「英語ですかね。英語ですよね」
「翻訳アプリが、あっちかな。ありました」
カナダから10日間観光に訪れていた家族。8歳の息子が40℃の高熱を出し運ばれてきました。
病院には外国人患者も多く訪れるため、日中は英語や中国語などに対応できる医療コンシェルジュが外国人の患者をサポート。しかし夜間はいないため、翻訳機を使って対応しています。
検査の結果、インフルエンザA型の陽性が判明しました。
母
「日本の病院に来たのは初めてです。かなり早いと思いました。とても効率的で医師に診てもらうまで長く待つ必要がありませんでした」
医師「不安を消してあげたい」
午前0時前、深夜になってさらに忙しさが増します。
藤川医師
「だいぶ忙しかった。ここまでノンストップ。今落ち着いたんじゃないですか。でも、それって本当に言っちゃいけない」
看護師
「きょう暇だねとか言うと、めちゃくちゃきます」
藤川医師
「ほら鳴った。落ち着いてるって言うから」
運ばれてきたのは、転倒し数分間意識を失っていたという93歳の男性。熱も40℃あります。
検査の結果、肺炎の疑いで入院することになりました。
男性の娘
「なかなか受け入れ先が見つからないことを聞きまして。でもこちらが受け入れてくださったので、本当に安心というか、ほっとするのと同時に、やっぱりこういう病院ありがたいですね。先生方、看護師さんとか本当感謝ですね」
藤川医師
「不安に思っている患者さんがいるんで、その人たちの不安を消してあげたい。患者さんがここに来たら安心だと思えるような医療を提供したい」
(「グッド!モーニング」2025年12月25日放送分より)
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